パンの賞味期限が長くなった最大の要因は製造技術の進化である

パンの賞味期限が長くなった最大の要因は製造技術の進化である

毎日のようにいたるところで炎上騒ぎが起きているSNS。ひどい中傷や非難合戦になって目を覆いたくなるようなものもたくさんあるが、素晴らしいと絶賛されるようなやりとりがたまに出てくるから面白い。つい先日も製造業に携わる者として興味深いやりとりを見かけた。

▼年配者らしきあるユーザーが、パンの賞味期限が長いのは化学物質をたくさん使っているからだという本を読み、「子供の頃に食べたパンは1・2日で腐った。今は1週間たっても腐らない。化学物質まみれだというのは本当か?」というつぶやきをSNSにアップした。これは有名な都市伝説だが、このユーザーもすっかり信じてしまったようだ。このつぶやきに対して同調・反対意見が多く交わされるなか、ある食品メーカーの技術者の回答が見事だった。その内容は、今の工場は設備と人の衛生管理がキチンとなされ、多くがクリーンルーム内で作られている。包装技術も上がってカビの付着など腐る原因を徹底的に排除したのが最大の要因。昔は衛生管理が緩い工程のなか、人手で作られ、個別包装もされていなかったので腐りやすかったと解説。さらに、よりおいしいパンを長く楽しめるようにと製造現場が頑張ってきた結果であり、私も皆さんに喜んでほしいと思って現場でパンを作っていますよと回答。すると最初のユーザーも含めて皆が納得し、しまいには「これからは毎日パンを食べます」という人も出る始末。ほほ笑ましいやりとりで終了した。

▼製造業において製品開発は花形で、製造部門はスポットが当たりにくく、その技術の素晴らしさや貢献度はあまり世間に理解されていないのが実態だ。しかしこのSNSのやりとりにおけるパンのおいしさの長寿命化は、まさに製造部門の知恵と努力の結晶。彼らにしかできないアプローチを使った付加価値向上だ。新製品の企画や開発のように新しい発想やひらめきでパッと生まれる付加価値もあれば、このように日々の改善を重ねてじっくり花開く付加価値もある。私たちはつい目立ちやすい花形に目が向きがちだが、縁の下で支える存在とその技術の素晴らしさをきちんと評価しなければならない。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。2016年5月〜「ものづくりニュース by aperza」編集長兼任。 趣味は釣りとダーツ