ドイツの工場ってどんな感じ?〜フエニックス・コンタクト工場潜入記 前編...

ドイツの工場ってどんな感じ?〜フエニックス・コンタクト工場潜入記 前編〜

4月23日から27日までドイツ・ハノーバーで行われた世界最大の産業見本市ハノーバーメッセ。ドイツをはじめ、ヨーロッパ中、世界中から人と企業が集まり、大いに賑わいました。私も今回、ハノーバーメッセを見学してきましたが、それに合わせてドイツの産業用機器大手のフエニックス・コンタクトの本社工場を見学させてもらってきました。

 製造業のデジタル化の波はドイツのインダストリー4.0から始まったといっても過言ではありません。そのドイツの大手メーカーの工場とはどんなものでしょうか?インダストリー4.0の状況は?ドイツ企業の強みとは?その様子をご紹介します
(工場内は撮影禁止だったので、雰囲気だけでも伝われば・・・)

フエニックス・コンタクトってどんな会社?

フエニックス・コンタクトは、ドイツの中西部にある人口1万6000人ほどの小さな街・ブロンベルグに本社を構える産業用機器メーカーです。1923年の創業で、あと5年で創業100周年を迎えるという老舗でもあります。
日本法人は1987年に設立され、2017年に設立30周年を迎えました。本社オフィスは新横浜にあります。

特にコネクタや端子台など接続機器に強く、この分野の世界トップメーカーです。他にもリレーや電源など盤用機器、PLCやI/O機器、ネットワーク機器といった制御機器も展開し、製品ラインナップは6万点以上あります。製品の色はグリーンとグレー、ところどころオレンジで配色されているものが多いようですね。

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※画像はフエニックス・コンタクトHPから

2017年の売上高は22億ユーロ(約2900億円)。業績も好調で、右肩上がりを続けています。日本の製造業企業でいうと、日本触媒(2939億円)、THK(約2866億円)、ナブテスコ(2824億円)、アマダホールディングス(2788億円)あたりといったところでしょうか。かなり大きいですね。

従業員数は世界で約1万6500人。こちらも年々増え続けていて、就職先としても人気があるそうですよ。

また、未上場のファミリー企業で、経営的には独立しています。ドイツをはじめヨーロッパ企業にはこうした企業が多いと言いますが、フエニックス・コンタクトもその一つです。ついつい見逃されがちですが、実はこれは重要な要素で、後に述べるような同社のこだわりと経営のスピード感、ユニークなところは、経営的に独立し、自らで舵取りできているからこそ実現できているのかなーとも思います。

経営トップのCEOはこの人、フランク・シュトルンベルグ(Frank Stührenberg)氏。ちょっと強面ですが、話すととても気さくで気持ちの良い方です。

フエニックス・コンタクトのものづくりへのこだわり 「自前で作る」

製造という面でフエニックス・コンタクトがユニークなのが、すべて自前で作るという垂直統合型のものづくりを徹底していることです。「原材料しか購入しない」というこだわりで、社内で鉄線からねじ1本ずつ、樹脂ペレットからハウジングなど樹脂部品を1個ずつ作っています。ねじの製造量は、なんと1日あたり800万個!ちょっとしたねじメーカーって言ってもおかしくないレベル。。。

それを支えているのが生産技術部門で、社内にベテランから若手まで多くの技術者が在籍しています。工場で使われている工程・機械の97%は生産技術部門が自前で設計・製造したものだそうで、見学時にはインダストリー4.0の最新の製造ラインを作っていました。

垂直統合型の自前主義のものづくりは、自社に多くの設備と人員を抱え、コストがかかるという難点がありますが、一方で品質管理に適し、社内で技術を磨くこともできます。さらに、サプライチェーンがシンプルになり、自社でコントロールできるという良さもあります。シュトルンベルグCEOも「自分たちの好きな時、状況に合わせて柔軟に対応でき、それが顧客の利益につながる」とし、経営的に独立しているからできることということを言っていました。

確かに外注化はコストダウンには有効ですが、社内に技術とノウハウを蓄積する点からすると、製造技術はどんどん細分化され、技術力は落ちていくばかりになってしまいます。
どんなに時代がデジタル化、ソフトウェアが大事だといってもハードウェアがなければ何も始まりません。キチンとした製造現場と作る力、人材を持つ企業を持つ企業がこれからは強いだろうなーと漠然と感じました。

いざフエニックス・コンタクトエレクトロニクスの工場へ

さて、初めに訪問したのは、バート・ピルモント(Bad Pyrmont)にあるフエニックス・コンタクトエレクトロニクス。電子機器を作っている工場で、4つの開発・生産棟があります。1996年に作られました。

正面入口のある第1棟は、社員食堂やショウルーム、開発やテスト施設が入っています。
まずはショウルーム。同社の製品がどんなアプリケーションで、どう使われているか、どのようなソリューションを展開しているかというショーケースが展示してあります。以前は製品単品売りが中心でしたが、最近は一つのソリューションとして提供することが多いとのこと。

例えば 工場・生産ラインの照明制御 のデモ。
最近は人とロボットが一緒に働く現場も増えてきており、人とロボットでは必要な照明が違います。人の場合、頭上から広く照らしつつ、手元も明るくしなければなりませんが、ロボットの場合、画像処理に必要な照明だけあればOK。人がいない時間帯は頭上の照明を落として省エネにつなげるといったソリューションのデモとなっています。このソリューションは、アウディ工場で採用されているそうです。

次は 風力発電向けの制御 デモ
ドイツを筆頭にヨーロッパでは自然エネルギーの導入と活用が進んでおり、特に風力発電は地上、洋上へとどんどん広がっています。実際にドイツ国内を移動していると、ところどころに風力発電の風車が回っているのを見かけます。ここでは、そんな風力発電向けの同社の制御ソリューションを展示しています。
風力発電の制御と言っても、同社が提供しているのは、主に安定稼働と保守・メンテナンスを支援するあたりのソリューション。最も効率良く風を受けるためのブレード(羽根)にあたる風圧の検知や、ブレードが凍って動きが鈍るのを防ぐための状態監視、落雷した時の雷サージの大きさを測って管理者に伝えるものなどを展示しています。

また面白いものでは、 トンネル内の照明の制御 があります。
昼間の明るい時間、トンネルに入ると急に暗闇がやってきて目が慣れなかったり、トンネルを出た時には急に明るくなってまぶしいなんてことは、誰でも経験があると思います。トンネルの内外は明暗の差が激しく、一瞬目が見えなくなって危険です。それに対し、光を制御して明暗の差を少なくして快適なドライブを提供しようというもの。トンネルの出入口付近で照度を計測し、それに応じて各地点のLEDの明るさを制御。光量の制御ができるLEDならではのソリューションですね。

ほかにも水処理場向けのポンプ制御、運河の水門にあるLED信号の故障監視などなど、多くのソリューションが展示されていました。

実際にどのように組み込んで使うかというアプリケーション展示がいくつもあり、とても見応えのあるものでした。また待合スペースを含め、いたるところにスケルトンで中身が見える制御盤が展示されていて、ついつい見入ってしまいました。

いよいよ工場見学へ 全自動化ライン

ショウルームを見た後は、いざ工場見学へ。とその前に、精密機器を扱っているのでESD(静電気)対策が必要。帯電防止の作業服を羽織り、靴底に静電気除去シールをつけていざ出発!!

初めに見学したのは第3生産棟。中に入ると壁は白く、大きな窓から光が入ってきて明るい雰囲気。日本とは違った感じで新鮮。天井はコンクリート打ちっ放しで、消火用スプリンクラーに水を供給するための赤い配管と、電気配線が入ったダクトが走る。整然として見事な配管と配線。ついつい見とれてしまいました。

はじめは信号変換器(Signal Conditioner)の製造ライン。プリント基板への部品供給とはんだ付け、ハウジング(筐体)へのレーザーマーキング、筐体への基板組み付け、検査まで一連の流れを自動化。流れてくるすべての製品はデータコードを持っていて、いつどの工程で何が行われたかが分かるようになっているそうです(トレーサビリティですね)ー。1年で25万個、1日約1000個を製造しているそうです。

続いて、わずか6.2mmの超薄型リレーの製造ライン。こちらも全自動化された製造ラインです。こちらも信号変換器同様、一連の流れに乗って組み付けられていきます。1年で1500万個作られるそうです。

これら2つのラインの組立工程は同社オリジナルの自動機で自動化されていて、従業員が行うのは材料の投入とメンテナンス、不具合が起きた時の対応を行うそうです。今回見学したどの工程も、人が手で組み立てたり、何かを作っていたりという姿はあまり見かけず、工程や機械の管理者、または自動検査の後の最終検査をするところに人を配置していた程度でした。

また、サージ保護機器などを検査するための大電流を発生させるラボもありました。

ランチは大学キャンパスのような開放感あるカフェで

今回、一緒に工場見学に回った多くの人が、日本とまったく違うよねーと口々に言っていたのが、キレイで広い社員食堂。真新しい大学キャンパスにある食堂のよう。メニューまでは分かりませんでしたが、サラダやパスタなど皆さん美味しそうに食べていました。

といった形で、午前中のフエニックス・コンタクトエレクトロニクスの工場見学は終了。感想としては、建物も工場も白を基調としていて、すごく洗練された雰囲気がありました。工場内も整理整頓がなされていて、窓が大きく外から光が入ってきて、日本の工場ようりも明るい雰囲気を感じました。

工場内は自動化されているだけあり、人はあまり多くなく、各ラインや工程に1人ずつ管理者がいる程度。でも日本と違うと感じたのは、その管理者は男性だけでなく、女性も多くいたこと。日本では組立や検査などの作業員として多くの女性が働いていますが、ここでは女性がそれとは異なる役割を担っていたのが印象的でした。

午後は場所を少し移動して、ブロンベルグのフエニックス・コンタクト本社工場を見学しました。

後編に続く

続き ドイツの工場ってどんな感じ?〜フエニックス・コンタクト工場潜入記 後編〜はこちらから

参考:フエニックス・コンタクト

 

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1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。2016年5月〜「ものづくりニュース by aperza」編集長兼任。 趣味は釣りとダーツ