オウンゴールとイネーブルスイッチは体を表す

オウンゴールとイネーブルスイッチは体を表す

サッカーで自陣のゴールにボールを入れてしまうことをオウンゴールと言う。致命的なミスであり、その影響の大きさから日本では30年ほど前まで「自殺点」と呼んでいた。

それがオウンゴールに変わったのは1990年のアメリカW杯が終わったころ。大会でオウンゴールをしてしまったコロンビア代表選手が、大会後に射殺されたという悲しい事件があり、その後から自殺点と言うのを止め、オウンゴールと変わったと言われている。

確かに自殺点という表現は、スポーツにはちょっとふさわしくない。

 

▼ロボットのティーチングペンダント等に使われているイネーブルスイッチはかつて「デッドマンスイッチ」という恐ろしい名前で呼ばれていた。人は何かトラブルにあった時、グッと力を入れるか、気を失って力が抜けて手から離れるか、反射的にこのどちらかの行動をとる。

イネーブルスイッチはそれを利用し、握りを離すか、強く握りこんだ時にスイッチが切れ、その間で力が入っている状態の時だけオンになる仕組みだ。デッドマンは死人・死体の意味であり、万が一の最悪のケースの際でもスイッチが切れるということでデッドマンスイッチと呼んだのだろうが、表現としてはあまりいい気分はしない。

やはりその後、縁起が良くない、不吉である、不適切だという指摘を受け、イネーブルスイッチに変わったそうだ。

 

▼自殺点もデッドマンスイッチも結果や意味を考えれば確かにその通りであって、間違いではない。でも、ミスをした当人や巻き込まれた人を傷つける、不快にする表現であり、公に使うには適していない。

一方で、自ら入れてしまったオウンゴール、有効な状態にある時だけオンになるというイネーブルスイッチという名前は、客観的な事実だけに即していて絶妙なバランスで成り立っている良い表現だ。

名は体を表す。ネーミングはとても重要だ。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。2016年5月〜「ものづくりニュース by aperza」編集長兼任。 趣味は釣りとダーツ