エッジの効いた工場経営

エッジの効いた工場経営

貴社の工場経営は”エッジ”が効いていますか?

1.AeroEdge

AeroEdgeは2016年1月に創業した会社です。

親会社である菊池歯車(栃木県足利市)の航空宇宙部を分割して設立されました。

同社はフランス大手航空機エンジンメーカー、サフランエアクラフトエンジンズと2013年に契約、次世代航空機エンジンLEAPのタービンブレードを製造しています。

 

TiAl合金を5軸加工する技術的に難易度の高い案件ですが、開発試作コンペで要求品質、納期をクリアし、パートナーに選ばれたのです。

次世代航空機エンジンLEAPは米ボーイングや欧州エアバスで今後、採用され、大きな需要が見込まれており、現在の契約では、LEAP生産数35%分のタービンブレードを10年間、造り続けます。

この事業をゼロから立ち上げ、主導したのはAeroEdgeの代表取締役社長、森西淳氏です。

 

森西氏は高校中退後、北関東に単身移住、小さな町工場で工作機械の操作を学びました。

その後、27歳で菊池歯車へ転職をしました。菊池歯車の技術力が高いとの評判を耳にしていたからです。

 

入社後、工場長に「好きに使っていい」と1台の旋盤を与えられ、段取りやプログラミングのノウハウを身につけていきました。

設備の候補を検討する仕事を任されたとき、5軸マシニングセンターを導入したいと考え、会社へ願い出たことがあります。

しかし、会社から許可は出ませんでした。

当時の菊池歯車で扱っている製品は3軸MCで対応できていたからです。

段取りや治具を工夫すればできることに、わざわざ、新たな投資が必要なのか?という経営判断だったのでしょう。

 

雑誌や展示会などで業界の動向を収集していた森西氏は、5軸MCの活用が広がりそうだと感じ、今は不要でも、将来、競争力の源泉として必要になると考えていました。

ですから、早く取り組まないと、競合他社に置いて行かれてしまうという焦りや不安を感じていたようです。

 

そこで、森西氏は行動を起こしました。

営業部への転属を願い出たのです。

先進技術が必要となる新規顧客を自ら開拓しようと考えました。

ドラッガーの言葉である「企業の目的は顧客の創造である」をまさに実践しようとしたわけです。

その後、多くの困難を乗り越えて、仲間と一緒にAeroEdgeの土台を築きました。

(出典:日経ものづくり2019年3月号)

 

AeroEdge設立の原動力は志ある現場メンバーであったことに注目したいです。

トップダウンではなく、想いを持った現場からのボトムアップ。

森西氏は多くのメンバーと連携しながら会社へ働きかけたであろうことは十分に推測できます。

 

1)現場に身を置いているので、コア技術の水準を肌感覚で理解できた。

2)技術面から会社の5年後、10年後を見据えていた。

 

この2つが揃って、新たな技術に挑戦しようというエネルギーが生まれました。

技術水準は工学的、科学的に判断できます。

ですから、現場に身を置いているメンバーであっても、志があるなら、会社が目指す将来像を技術面から設定することはできるのです。

現場も工場経営に関わっている。

この感覚は儲かる工場経営で大きな役割を果たします。一体化に繋がるからです。

2.現場が自ら考え、判断して、行動したくなる環境の整備

経営者や経営幹部が持つべき思考回路の時間軸は5年、10年です。

時代を読み、先手を打つことが仕事だからです。

 

ただ、今後、生き残りを掛けた戦いを勝ち抜くには、経営者や経営幹部のみならず、現場も経営者と同じ時間軸を共有することが求められるかもしれません。

現場リーダーや作業者は、モノづくりの最前線に身を置いているので、当然のことですが、できることとできないことを肌感覚で知っています。

これは、技術開発の方向性を設定するときに欠かせないことです。

こうしたメンバーが経営者視点を持てば、現場改革や技術改革の知恵が浮かぶにちがいありません。

 

「工場経営の本質は他人を通じて経営者の想いを実現することにある」

 

当ブログでしばしばお伝えしている弊社の想いです。

現場の主役は現場リーダーであり作業者です。

組織をフラット型する目的は、迅速な意思決定に加えて、的確な意思決定を促すことにもあります。

 

儲かる工場経営では、イイ会社をつくりたいとの心意気を感じさせてくれる現場メンバーの意見を上手く工場経営へ取り入れる仕組みも欠かせません。

現場の自律性があってこそ、経営者のリーダーシップも生かされるとお感じではないでしょうか?

「他人を通じて」という論点を常に意識したいです。

現場が自ら考え、判断し、行動する。現場が自ら考え、判断して、行動したくなる環境の整備が課題です。

現場へ任せるべきことは、しっかり任せます。(丸投げではないことに注意です。)

3.エッジコンピューティング

「IOT」の文字を目にする頻度が増えてきました。

伊藤もこの「IOT」に注目しています。

少数精鋭で筋肉質のチームを目指す中小製造現場でこそ必要な考え方だからです。

このIOTにおいて、注目されているデータ処理モデルがエッジコンピューティングです。

 

タブレットやスマホなどのインターネットにつながるIOT機器でデータ処理したり、利用者の近くにあるエリアネットワークにサーバを分散配置してデータ処理をするコンピューティングモデルです。

「データの生成元、または、その近くでのデータ処理を容易にするソリューション」とも定義されています。

つまり、IOTセンサーで設備の稼働データや人、モノの移動情報、不良品発生情報など各種現場情報を収集したら、現場周辺に設定したサーバーでデータ処理をします。

近年、身近になったクラウドコンピューティングと比べて考えると理解がしやすいです。

 

クラウドコンピューティングは、サーバを集約し、そこで集中して処理する集中処理型モデルです。

・現場データ → エリアネットワーク → インターネット → クラウドサーバーでの処理

これに対して、エッジコンピューティングは、エリアネットワークの端末機器で情報を処理したり、ネットワークにサーバを分散配置して処理を行う分散処理型モデルというわけです。

・現場データ → エリアネットワーク → エッジでの処理

 

エリアネットワークから、インターネット経由クラウドサーバーまでの経路が短縮されます。

初期投資が安価に済むなど、ユーザー側に多くのメリットがあるクラウドコンピューティングですが、IOTにおいては、エッジコンピューティングが中心です。

それは、主に3つの理由によります。

 

1)膨大なデータを安価に扱える

2)リアルタイムの処理が可能となる

3)セキュリティーやトラブルに強い

 

IOTの普及で多くのデバイスがネットワークを通じて接続され、多様で膨大な量のデータがデジタル化、収集・蓄積、処理されるようになりました。

収集されたデータをネットワークの向こう側にあるクラウドサービスへ転送・蓄積し、処理する場合、データの規模が大きいと転送コストがかかります。

さらに、ネットワークでの遅延や障害が生じる恐れもあります。この場合、リアルタイム性や高信頼性を満たせません。

 

そこで、リアルタイムのデータ処理が必要とされる場合は、クラウドサービスに加えて、必要なデータをエッジコンピューティングで処理します。

また、エッジコンピューティングは、クラウドコンピューティングと比べて、負荷分散や通信混雑解消などのメリットもあります。

データ収集に使う端末機器や現場に近いサーバーでデータ処理をしているからです。

わざわざ、遠方のサーバーへデータを送らなくても、その場で判断ができるというわけです。

各種センサーをはじめ、通信機器やワンボードコンピュータの技術進化のおかげで、こうした対応が可能となりました。

 

エッジコンピューティングの考え方は、中小製造現場で生かせます。

遠方のサーバー(経営者)へ情報を送り、そこで処理(判断)をせず、エッジ(現場)でやってしまいます。

 

変化の激しい時代です。

現場が自ら考え、自ら判断して、的確に動ける体制が必要となります。

エッジにおける自律性の有無がカギです。

現場のスキルアップも欠かせません。

 

先に挙げたAeroEdgeの社名にも、「エッジ」が含まれています。

森西氏によると、「エッジ」には「最先端の尖った技術や取り組み」という想いを込めているそうです。

 

自ら考え、判断し、行動する環境や尖った技術開発…エッジの実践には挑戦が不可欠です。

是非、変わることに挑戦して下さい。

弊社は挑戦する経営者の後押しをして参ります。

 

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製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)