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【4階建スマート工場】の真髄は、シミュレーションとネットワーク

【4階建スマート工場】の真髄は、シミュレーションとネットワーク

昨年に製造業界のイノベーションとして注目された話題は、第4次産業革命『インダストリー4.0 (I4.0)』であった。

専門紙や業界雑誌の記事に加え、欧州メーカの宣伝報道も積極的であり、インターネット上でも盛んに取り上げられた。

経済産業省の産業構造審議会が小委員会を開き I4.0を取り上げたり、一般紙や経済誌も取材報道したことにより、業界の内外で注目されつつある話題となっている。

 

本年も引き続きI4.0はIoTやM2Mのテーマと併せ、製造業での重要イノベーションとして進化していくことに疑いの余地はない。

 

しかし改めて I4.0 に関する報道や解説を読み返してみると、その内容が難しい技術的解説が中心であったり、提唱しているドイツの観点での解説が多く、実際に製造業を経営する日本の経営者にとって“そのメリットと将来戦略につながる本質”を理解するのは容易ではない。

今回は、誤解を恐れず“ドイツ人の観点”ではなく “日本人の観点”で産業革命から始まる今日までの工業化の歴史を紐解き、ドイツの提唱するインダストリー4.0が示す 【サイバーフィジカルシステム (CPS)】を探求し、中小製造業『再起動』の道筋を提言したい。

 

I4.0は、第4次産業革命と呼ばれている。200年以上に渡る世界中の“工業化”の歴史を背景に、第4次の“革命”という大それた言葉で表現しているが、人類が歩んだ工業化の歴史を『何が革命であったか?』の観点で振り返ってみたい。

人類最初の工業化は18世紀の終わり頃、イギリスで始まった。歴史で学んだ”産業革命”である。水と水蒸気を動力に使った”機械”が開発され、人類初めての『機械化された工場』が誕生した。

工業化の幕開けであり、これが第1次産業革命であるこの革命によりイギリスを中心とする欧州は、100年に及ぶ繁栄と世界の覇権を手にする。

 

20世紀を目前にアメリカが急速に力をつける。

動力源に“電気”を活用した工業化イノベーションに成功し、『機械と電気』が融合した。

この工業化革命により『大量生産工場』が誕生する。20世紀前半50年以上に渡る“アメリカ工業化時代”の到来である。これを第2次産業革命と呼んでいる。

 

第3次産業革命は、戦後の日本で実現したオートメーション工場の誕生である。

欧米の機械技術と電気技術のすべてを学んだ日本の技術者は、1970年代から台頭したNC(CNC)装置にPLC(プログラマブルロジック・コントローラ)やコンピュータなどの最新電子技術を融合し、先端的なデジタル工場、オートメーション工場を創造した。

電子立国=日本の工業化革命により,『CNC装置とPLCとPC』が融合した。日本は世界の工場となり、日本製の工業製品は世界を席巻した。

 

変種変量生産のオートメーションは今でも日本のお家芸である。

この工業化革命が日本で花開いたことに誇りを持って、ドイツの提唱する第4次産業革命の本質論を理解していきたい。

 

第1次産業革命で”機械化”の1階建て。第2次産業革命で“機械と電気”の2階建。第3次産業革命で“機械と電気とPLC/PC”の3階建て。となった。

歯車やギヤなどで動く機械は、2階建で “0”と“1”の命令で動くビットコントロールに進化し、さらに3階建でプログラマブルな言語・文字や図形の命令で動く機械に進化した。

工業化の進化は“機械の自由度向上”の歴史でもある。200年の歴史を経て機械の自由度は何千倍にも増した。

 

第4次産業革命は、4階建てである。

現在の3階建て工場の上に、インターネット技術をベースに仮想工場(サイバー)が増築される。“機械と電気とPLC/PCと仮想工場”の4階建て工場。これを【スマート工場】と呼ぶ。

スマート工場の真髄は、シミュレーションとネットワークである。

 

実生産の前に、仮想工場でCG動画や人工頭脳を駆使したシミュレーションが実施される。

この結果に従い現実工場が生産を実施することにより、最高の生産性と究極の自由度を持った工場が誕生する。

この4階建スマート工場では、ダイナミックセル生産も可能となる。変種変量生産における究極のオートメーション工場が誕生し、世界の覇権を握る製造業を自国に取り組むことが可能となる。ドイツ政府の狙いがここにある。

 

日本にも多くのチャンスがある。

ドイツ提唱の第4次産業革命(I4.0)は、日本で成功する可能性が高い。

日本の製造業は大企業から中小企業を問わず3階建てまでのデジタル化やオートメーション化が極めて進化しており、今日も世界の最先端にいる。

 

また製造ノウハウなど現場のアナログ力は世界に秀でており、これらの優位性が今後の競争力の源泉になることは疑いの余地はない。

この優位性を強力な武器とし、4階建への増築を実行することによって、日本は世界に先駆けスマート工場の実現を手中に出来る。

製造業再起動の戦略がここにある。スマート工場実現には、I4.0の示す【サイバーフィジカルシステム(CPS)】が必須条件となる。

 

留意すべき点は、日本の製造業復活は中小製造業が鍵を握っているという事実である。

I4.0の推進を革命の名のもとで破壊的に進めるのではなく、3階までの現有資産を大切にして4階への増築を段階的に実行しながら“4階建てスマート工場”を実現しなければならない。

 

補足になるが、スマート工場の実現はグローバル化も同時に実現する。

その理由は仮想工場はインターネットを活用した“完全オープンシステム”で構成され、世界と共通言語で情報伝達を可能にする。

具体的には、世界の発注元や協力会社あるいは遠隔地の自社工場との間で、動画/CAD/テキストなどあらゆるマルチメディア情報が双方向で接続可能となる。4階建ての屋上から、クラウドや世界が拓けるのである。

 

世界に発注元を求め、成長するアジア各国の企業と提携を結び、世界に羽ばたく新世代の企業展開を可能にするためにも、スマート工場の実現が不可欠である。

次回より【サイバーフィジカルシステム(CPS)】に焦点を当てて、屋上付き4階建てスマート工場の設計図を、提言していく。


株式会社アルファTKG社長。1953年長野市生まれ。2014年3月までアマダ専務取締役。電気通信大学時代からアジアを中心に海外を訪問して見聞を広め、77年にアマダ入社後も海外販売本部長や欧米の海外子会社の社長を務めながら、グローバルな観点から日本および世界の製造業を見てきた。 http://a-tkg.com/