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【生産年齢人口減少に直面する中小製造業】・『IoTが少子高齢化と労働者...

【生産年齢人口減少に直面する中小製造業】・『IoTが少子高齢化と労働者不足を救う』

米トランプへの反発が世界中で湧き上がり、移民問題に対する議論も深刻化している。

英国EU離脱の争点となった移民問題は、欧州各国に伝搬し、ドイツやフランスや欧州各国も揺れ、移民問題は世論を二分する『歴史的な大問題』に発展している。

米国を筆頭とする『国民第一主義』が世界のトレンドとなり、『製造国内回帰(リショアリング)』を国家戦略に掲げる国が増えている。

 

この傾向により、労働者不足が世界中で深刻化するだろう。

勿論、我が国にとって労働者不足は、直面する重要な危惧であり、その原因は少子高齢化による「生産年齢人口」の減少である。

「生産年齢人口」とは、労働する年齢層(15~64歳を世界で使っている)人口のことであり、日本の生産年齢人口は1995年をピークに、大幅な減少を続けている。

 

総人口に対する割合も過去のピーク70%から、現在は60%を割り込んでいる。

労働者不足は、ローカルに根を張る中小製造業の経営を直撃し、会社の存亡も危惧される。

東京一極集中が続けば、地方都市の荒廃も避けられず、地方に錨(いかり)を下ろす中小製造業にとっては致命的な労働者不足が待ち受けている。

 

中小製造業は、戦後の高度成長時代にゼロからスタートしたオーナー企業が一般的である。

創業以来一貫して労働者の確保には苦労してきたが、幸いにして番頭さんや職人さん、優秀な社員に恵まれ、企業発展を実現した創業者にとって、最後の難しい人事課題は「後継者」であった。

首尾よく2代目3代目にバトンが渡った企業でも、新社長を支える人材確保は容易ではない。

 

労働者不足の打ち手として、外国人労働者の活用(移民の促進)が叫ばれているが、この案は非常に容易な発想であり、現実的ではない。

外国人労働者の供給元と思われる中国・アジアの安い労働力が豊富に存在しているような錯覚が日本を支配しているが、事実とは違う。

アジアの中小企業経営者は、ここ数年で労働者人件費が高騰し、鉄板など原材料が品薄高騰する予測をたてている。

 

この予測は、アジアでは常識とされており、日本の労働者不足を移民で補うことは難しいことが理解できる。

ここからは、日本のものづくりの歴史に遡って、労働者不足に対する特効薬を探してみたい。

日本は1968年にGDP世界第2位の経済大国に躍り出た。

 

戦後20年の短い間に、日本は各企業が揃って設備投資を繰り返し、飛躍的な生産性向上を成し遂げた結果である。

1968年以前、日本の先を歩いていたのは当時の西ドイツである。

日本と同じ敗戦国ドイツは、日本以上の工業技術力を持ち、日本より進んだ設備投資を行い急速な経済発展を行っていた。

 

そのドイツを追い越す日本の原動力は、日本人の団結の力がものづくりに反映されていたからである。

意外と思うかもしれないが、日本人とドイツ人は非常に異なる価値観を持っている。

個人の役割を明確にし、長期目標を組織的に着実に実行するドイツと、相手の立場も考えながら、目的遂行のためには身分を超えて協力し合い、目先の成果を追求する日本。

 

戦略型のドイツと戦術型の日本では、その遺伝子が全く違う。

日本がドイツを追い越したのは、目的達成(戦術思考)で団結する力の勝利である。

戦後一貫して、日本の労働者不足を解決する方法は、外国人労働者ではなかった。

 

日本のものづくりは、ずっと労働者不足だったが、移民に頼らず、日本人同士が団結し徹底的な設備投資とイノベーションを行い、最新設備を効果的に使う努力を続けてきた。

労働者不足を背景に、日本の工場はNC化・自動化が進み、世界最高峰のオートメーション工場が随所に誕生し、第3次産業革命を成し遂げたのである。

このような歴史認識に則って、これからの労働者不足への対応策は、『IoT活用でのイノベーション』である。

 

日本の遺伝子を蘇らせ、労働者不足をバネにするのは、かつてと同じであるが、かつてのNC化・自動化だけでなく、『ものづくりのサービス業務』に焦点を当てることが必要であり、この合理化を目標に、徹底的なIoTイノベーションを実現することである。

IoTや人工知能など第4次産業革命の最先端技術は、サービス産業に極めて有効な特効薬である。

ものづくりの現場においては、▽顧客との打合せ ▽営業と技術の社内打合わせ ▽見積もり ▽エンジニアと生産現場との打合わせ ▽外注・調達 ▽加工段取り ▽検査 ▽出荷……など、意外なほど人手に頼った『サービス業務』が存在する。

 

ものづくりのイノベーションを、最新機械による『加工の進化』だけに焦点を当てた時代は終わった。

これからのものづくりイノベーションは、加工を取り巻く『サービス業務』に焦点を当て、人海戦術から人工知能へ、アナログからデジタルへ、第4次産業革命の技術を労働者不足の特効薬としてものづくり現場に取り込むことが必要である。

特効薬には2つの種類がある。

 

【その1】『IoT戦略型イノベーション』…過去システム(レガシー)を否定し破壊的にイノベーションをすすめるので、大手企業が対象である。

ドイツのインダストリー4.0の思想である。

【その2】『IoT戦術型イノベーション』…過去システム(レガシー)を破壊せず、段階的に成果を出しながらイノベーションを進めるので、中小製造業でも容易に導入が可能である。

 

今回の題目を…IoTが少子高齢化と労働者不足を救う…と題したが、この実現には、【その2】が有効的であることは、言うまでもない。


株式会社アルファTKG社長。1953年長野市生まれ。2014年3月までアマダ専務取締役。電気通信大学時代からアジアを中心に海外を訪問して見聞を広め、77年にアマダ入社後も海外販売本部長や欧米の海外子会社の社長を務めながら、グローバルな観点から日本および世界の製造業を見てきた。 http://a-tkg.com/