【トップインタビュー】フエニックス・コンタクト、ハードウエア企業から産...

【トップインタビュー】フエニックス・コンタクト、ハードウエア企業から産業ソリューション企業への脱皮

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フエニックス・コンタクト フランク・シュトゥルンベルグCEO

コネクタ・端子台ビジネスをステップにさらなる変革

ドイツのフエニックス・コンタクト社は、コネクタや端子台など配線接続機器の世界的なトップメーカーとして知られています。同社の製品は、電気があるところには必ず介在し、社会のエレクトロニクス化の流れに合わせて成長を続けてきました。

2018年度の売上高も日本円で3000億円を突破するなど順調です。デジタル変革が進む近年はネットワーク、ソフトウエア分野の技術・製品を拡充し、ポートフォリオ全体では産業機器総合メーカーとも言える製品が揃っています。

一方でその総合力を活用し、グローバルでは社会インフラや産業向けに自動化や省力化のシステムソリューションを手がけるなど提案の幅を広げています。ハードウエアを中心としたコンポーネンツ企業から産業ソリューション企業へと、時代に即して変革を続ける同社の取り組みについて、シュトゥルンベルグCEOに話を聞きました。

世界的に好調だった2018年。
社会のエレクトロニクス化を追い風に成長

-2018年の業績を振り返ってください。

18年の売上高は23億8000万ユーロ。前年比8%増と好調でした。売り上げ上位の10地域がすべて成長し、このうち7つのマーケットで2ケタ成長を遂げました。例えば日本、イタリア、ロシアなどです。一番売り上げが良かったドイツもとても好調で、中国も2桁成長がありました。為替の影響を受けましたが、総じて強い成長だったと言えます。

02年以降、09年の世界的な金融危機を除き、当社は15年以上も毎年成長を続けて来ました。特に日本市場は東日本大震災とその後の円高の影響が出た時期を除き、他の地域よりも高い成長率で伸びています。世界でも重要な市場だと考えています。

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ドイツ・ブロンベルグの本社

 

-18年が好調だった要因は?

18年に限らず、当社の追い風となっているマーケットのトレンドが3つあります。それが「電気化」「ネットワーク化」「自動化」です。

IoTをする時はまず前提として(データを得るため)電気化をしなければならず、そこでは必ず端子台が必要となります。電気化の次はネットワーク化が必要になり、プリント基板接続のための基板端子台が使われます。その後の自動化について、この20年以上オートメーションのためのポートフォリオを揃えてきました。この追い風を完璧にとらえられたからこそ、この好業績につながっているのだと思います。

その一方で18年には2つの難しい局面がありました。ひとつはサプライチェーン、もう一つが自動車業界の変化です。

18年上期は好調で大きく伸びていましたが、一方で材料不足に陥りました。プラスチックペレットや銅、電子部品といった材料が足らず、一時的にサプライチェーンが途切れてしまいました。今はもう回復していますが大きな痛手でした。

 

内燃機関から電気自動車へのシフトにより、自動車産業が大きなターニングポイントに差し掛かっています。ガソリンやディーゼルなど内燃機関は3000から4000の部品で構成されていますが、電気自動車になると30のパーツほどで出来てしまうようになります。こうなると自動車や部品サプライヤーは先行きの不透明感を感じ、すでにある工場では新規の設備投資が抑えられます。

新規の工場もこれまでの形とは全く異なる形になることが想定されます。彼らをお客さまとし、製品を納入する当社にとっても舵取りが難しく、重要な問題と認識しています。

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ハノーバーメッセ2019のブースの様子

経済減速の逆風のなか19年も成長を見込む

-19年の業績見通しを教えてください。

現段階では、成長は弱くなると見ています。これまでは8~11%の成長率で伸びてきましたが、5~7%程度に落ち着くと予測しています。

しかし、19年の第1四半期が終わった時点で10%増を上回り好調を持続しています。マーケットの伸びよりも力強く成長できています。

 

-世界的に見ると、ヨーロッパでは英国のEU離脱があり、アジアとアメリカは米中貿易摩擦があります。その影響は出ていますか?

当社にとって英国市場はそれほど大きくないので直接的な影響はほとんどありませんが、EUが不安定になるのは懸念しています。eモビリティーや再生可能エネルギー、5GといったEUの重要なプロジェクトのスピードが落ちることによる影響は出るかもしれません。

アメリカと中国に関しては、当社の売上高の2位と3位を占める重要なマーケットです。関税が上がっただけですでに300万ユーロ以上のコスト増になっています。中国政府が発表したプロジェクトでも実現していないケースも出てきています。当社の成長に対して影響してくるので、できるだけ早く状況が変わることを願っています。

対策としては、中国からアメリカに発送していた製品を、ここ数年はドイツからアメリカへ直送するようにしています。アメリカでも現地の付加価値をつけ、為替変動の要因を回避するため、ここ3年間で生産とロジスティクスに投資してきました。できるだけ現地化することで、貿易におけるデメリットを回避しようとしています。

 

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新制御プラットフォームPLCnext

PLCnext、COMPLETE lineなど既存分野で付加価値拡大

19年の注力分野を教えてください

当社は常に新しいビジネステーマと既存のポートフォリオの最適化、お客さまのプロセス変革のバランスを考えて経営しています。

昨年、新しい制御プラットフォーム「PLCnext」を発表し、オープンなプラットフォームを整えました。今回はマーケットプレイスという形で、当社以外の第三者が機能を持つアプリを開発してアップロードし、ユーザーに配布できる仕組みを発表しました。ユーザーは機能をダウンロードして自社で使い、他社向けのソリューションを作ることもできます。いまはポンプの制御や風力発電のブレードの向きの調整のアプリがアップロードされています。

デジタル変革の時代、多くの新しい機能が必要とされています。それを当社1社だけで開発することは不可能です。これまで当社はハードウエア、コンポーネンツやシステムを中心とする会社でしたが、これからはソフトウエアも含めたビジネスモデルに対応していくことが重要になります。スマホのアプリのように多くの企業と一緒に開発していきたい。

 

今年は、制御盤の設計を支援する仕組みとして「COMPLETE line」を発表しました。ソフトウエア上でコンポーネンツを選んで並べ、設計のシミュレーションや寸法測定をし、購入もできます。見える化することによりユーザーの設計効率化のサポートをしています。

また今回はじめて、小ロットでお客さまの要望に応じたハウジング(筐体)の設計ができるサービスを提案しています。3Dプリンタを使った積層製造で試作や小ロット製造ができる。その後、望めば大量生産にもつなげられるサービスです。

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制御盤設計を支援するCOMPLETE line

eモビリティー、3Dプリンティング、制御盤製造プロセス変革など新ビジネスへの挑戦

-中期計画 制御盤「AGENDA2023」の進捗状況を教えてください

2016年からDC、IC、IMAと3つのコアビジネスを担う事業部とニュービジネスという体制となりました。ニュービジネスでは、インフラeモビリティーが電気自動車向けの充電インフラなどが好調で、売り上げが倍になるなど成功しています。

もうひとつ、PROTIQという積層製造の新しいビジネスをスタートし、新しい顧客を獲得して200万ユーロ以上の売り上げを上げています。ゼロからのスタートだったので、これはとても大きな成功だと思っています。

また2018年のトピックスとして、IP65の耐環境性能に優れたネットワークコンポーネンツを持つSKS Kontakttechnikと、独特なセンサ技術を持つPulsotronicという2社を買収しました。デジタルトランスフォーメーションにおいてセンサはインテリジェント化が進んで重要性を増しています。このインターフェースは重要で、新たなビジネスフィールドになると考えています。

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3Dプリントの新事業PROTIQ

 

-ICS(Industrial Cabinet Solution)という新しいビジネスユニットができました

ICSは18年10月に新しくできた重要なビジネスユニットです。ほとんどのビジネスユニットがコンポーネンツに焦点を当てたものですが、ICSは制御盤の設計製造におけるプロセスに対して価値を提供する部門になります。設計、コミュニケーションツール、モジュールの購入によって業務プロセスを変え、制御盤をより効率よく、品質よく作ることを目的とします。

その最初のテーマが設計です。新しいソフトウエア「PROJECT complete(プロジェクトコンプリート)」は端子台列設計とマーキング、さらには端子台列の直接注文まででき、制御盤製造プロセス全体をサポートします。

当社の盤用機器はすべて統合されており、このソフトウエア上で扱うことができます。ここで作った端子台列はオンラインショップで注文でき、モジュールとして製造し、お客さまの元に配送されます(日本では順次展開予定)。

インダストリー4.0の現状と課題

-ドイツにおけるインダストリー4.0の進捗と課題について教えてください

新しい機械、モジュールのコンセプト、生産ステップの統合など確実に実現に向かっています。品種の違う製品を作る際、機械が自分でそれを判断するソリューションが増えています(日本では順次展開予定)。

いま、製品とプロセスのデータ連携が課題となっています。各社デジタルツインと言っていますが、それは互換性がない場合が多いです。例えば、ひとつの端子台にはそれぞれ厚さや高さなどの静的なデータを持っています。しかしロボットで加工する時には、製品に対してどれだけの力で、どの角度で接続するかはまったく別のデータが必要になります。それをデジタルツインでは持っていないといけません。

それは当社からもらうことはできますが、別の企業からもらってくる場合にはフォーマットが違っている可能性があり、そこの標準化が大きな課題となっています。ドイツ、ヨーロッパではその議論をしています。アメリカや日本にも別の標準があるでしょうが、シームレスに統合するには、その標準化が前提条件になるでしょう。

 

-中小製造業での取組状況はいかがでしょう?

マニュアル作業から完全自動化した設備に移行する際に、ステップバイステップで一歩ずつ進めていくことが大切だと考えています。ICSというビジネスユニットを作った背景もそこにあります。

インダストリー4.0は最終的な状態(目的)ではなく、プロセスです。ステップバイステップが必要です。

 

参考:フエニックス・コンタクト


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。2016年5月〜「ものづくりニュース by aperza」編集長兼任。 趣味は釣りとダーツ