TVドラマ「釣りバカ日誌2」で特許問題が扱われる【知財ニュース拾い読み...

TVドラマ「釣りバカ日誌2」で特許問題が扱われる【知財ニュース拾い読み】

先日放送されたテレビドラマ「釣りバカ日誌2」第2話にて、特許問題が取り扱われたようです。知財クラスタは気になるところです。

テレビドガッチ – 2017/4/28 – 『釣りバカ日誌2』ハマちゃんが一攫千金!?10億円を巡って大騒動に

TVドラマ「釣りバカ日誌2」で特許問題が扱われる

歩道橋建設を任されたハマちゃんが、釣り仲間スーさんの「振り出し竿のように歩道橋も作れたら……」との発言をヒントに、設計課の尾上に「振り出し竿工法」を提案するところから始まり、尾上はこの工法で予算内かつ短期間に歩道橋を建設できることを踏まえて「特許をとれば10億円」との話が浮上します。

さらに、この話を聞いた佐々木課長が会社に内緒で個人で特許出願しようと企て、誰が発明者なのかを揉めていたところで会社にばれて問題なるというお話になってしまいます。

未視聴の方にはドラマの内容を再放送などで確認いただくとして、ここではドラマで問題となった「誰が発明者なのか」を知財的視点から、特許を受ける権利と共同発明について説明したいと思います。

 

特許を受ける権利

「特許を受ける権利」とは、発明が完成したときに発生する権利であり、特許出願を行う出願人が持っていなければならない権利です。

特許を受ける権利を持たずに特許出願を行った場合、通常は審査で拒絶されます。仮に気づかれずに審査を通ったとしても、無効理由の存在する瑕疵ある特許として価値はありません。

ちなみに、特許を受ける権利は譲渡可能な権利ですので、発明者が他人にその権利を売却し、購入した人が特許出願をするというのはOKです。

 

特許を受ける権利は、その発明が職務発明であるか否かで、取り扱いが異なってきます。

職務発明とは、詳しく言うと長くなりますが端的には、従業者が使用者(会社)の下で職務上した発明のことです。

発明が職務発明に該当し、使用者(会社)の規則で定められている場合には、発明の完成と同時に特許を受ける権利は使用者(会社)に発生します。

それ以外の場合には、発明をした人(個人)に特許を受ける権利が発生します。

共同発明

「共同発明」とは、二人以上の自然人(法人ではない本来の意味での「人」)の実質的な協力により完成された発明のことです。

また、発明の成立過程を着想の提供と着想の具体化の2段階に分け、各段階について実質上の協力者(=発明者)か否かが判断されます。

着想の提供の過程では提供した着想が新しい場合には発明者となりますが、既にあるアイデアを伝えただけのような場合には発明者たりえません。

着想の具体化の過程では新たな着想を具体化した場合には発明となりますが、着想から自明に具体化できるような場合には発明者たりえません。

「スーさんが着想者として共同発明者となるか」「振り出し竿工法が職務発明であるか」の2点を検討してみると……

スーさんは「振り出し竿のように歩道橋も作れたら……」と発言しているだけで、(技術的には)それ以上のことは何も考えていないように思われます。

発明として実施できる程度に具体的な着想でない場合には、その着想者は発明者でないと判断される傾向にありますので、ここではスーさんは発明者ではないと考えられるのではないでしょうか。

また、振り出し竿工法は、ヒントこそ会社の外で釣りをしている際中ものではありますが、勤務先である建設会社から歩道橋建設を任されたハマちゃんと設計課の尾上がその職務上した発明と考えられますので、職務発明であると判断できそうです。

出典:TVドラマ「釣りバカ日誌2」で特許問題が扱われる【知財ニュース拾い読み】(発明plus〔旧:開発NEXT〕)


弁理士。コスモス国際特許商標事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。知的財産権の取得業務だけでなく知的財産権を活用した製品作りの商品開発コンサルタントを行う。知財マッチングを展開し、ものづくり企業の地方創世の救世主として活躍している。著書に『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)、『理系のための特許法』(中央経済社)等がある。 特許・商標の活用を応援するWEBマガジン「発明plus Web」( https://hatsumei-plus.jp/ )を運営している。