MS-850ブレーキディスク修理

MS-850ブレーキディスク修理

前回の続きです。

メーカーがお盆休みでブレーキキャリパーの問い合わせができませんので、その間、ブレーキディスクの芯出しをします。

ブレーキパットが引きずるとの症状を修理していますが、重たいところと軽いところがあり、ダイヤルを当ててみると、0.12(ダイヤル読み)振れてました。

マジックで書いた数値は最大値ではありませんので念のため。

原因を調べてみると、ディスクを受けている軸が振ってました。

 

この旋盤は、モーターの軸に、さらに太い軸をはめて、ディスクとVプーリーを受けて取り付けています。

いろいろな所をチェックした結果、ディスクの取り付け面を細工することにしました。

さらっと対処法を書きましたが、この結論を出すためにかなり考えました。

 

機械に詳しい方なら取り付け面を細工すると他にどの様な影響があるかお解かりだと思います。

対処の方法を考えるのと各部品の追加工合わせてこの0.12の振りを出すだけで約一日かかりました。

機械の修理をする時は、他の影響も考えつつ進めていかなければなりませんから、さまざまな知識が必要です。新品の機械を組み立てるより使った機械を修理する方が難しいと思います。

 

なので最近の機械メーカーの修理は、ユニットごと交換とかが多いのでしょうね。ユニットのどの部分が原因でどのように対処すれば良いのかが解らないのだと思います。

個人の技術力の低下と総合的技術力のなさだと思います。

今回のディスクの振れは、ディスク自体が原因ではありませんが、ディスクを細工します。本来の原因ではない部品で対処します。

 

これは、比較的単純に見えますが、実はそうではありません。

この部分の構造は、モーターにはめた軸に、ディスクとVプーリーがはまり、最後に菊ナットで締めてます。

さてディスクの端面を細工しただけで良いのでしょうか?  見た目よりノウハウが必要です。

 

対処方法を決め、ディスクを外そうとしましたが、下の画像のようにもう少しのところで機械に当たってしまいます。

残念ですが、モーターも動かし位置を変えなければなりません。

ディスクとキャリパーの位置関係がありますので、出来ればモーターはそのままにしておきたかったのですが、仕方ありません。後々組み立てに時間がかかりそうです。

追加工も終わり、組み立てました。

修理前と同じようにディスクにダイヤルを当て、振りを見ると0.03でした。

いろいろなところのバランスを考えるとこれくらいで良いと思います。

ただ単にディスクの振りだけならもう少し出せますが、他の影響を考えるとこのあたりが適当と判断しました。

 

修理の記事が続きますが、次はシリンダーとピストンの修理です。

なんか、修理ばかりしてますが……

 

~基本を大切にした技術伝承~汎用旋盤職人養成


1963年大阪生まれ。西尾鉄工所代表。旋盤師、伝統技術継承者◎祖父の代から80年続く大阪八尾市の町工場の三代目。「職人道」を極めた先代のもとで、13才から弟子入りし、昔ながらの職人技を叩き込まれ、家業を一人前にこなした。工業高校卒業後、中堅工作機械メーカーに就職。工作機械(機械部品を産み出す母なる機械。マザーマシンとも呼ばれる)の構造を隈なく学び、23才で独立。最先端コンピュータで制御された「NC旋盤」に対し、職人の「技」と「勘」が頼りの「汎用旋盤」(職人の手で動かす旋盤)をこよなく愛し、現在に至るまで、その加工にこだわり続けてきた。数少ない伝統技術継承者の一人。◎若い世代の人材不足、技術伝承に危機感を持ち、2016年「汎用旋盤職人養成講座」をスタート。教材用に独自開発した「汎用フライス盤」は、設計、加工、組立・調整をすべてひとりでやり遂げ、自身の総合技術力の賜物となった。最近、営業下手な職人の殻を破り、SNSを駆使して「基礎の手技」の重要性を次世代へと訴える。また、異業種の職人を対象に、「いぶし銀の会」を立ち上げ、オリジナル製品の企画、開発など「未来の職人像」を探っている。コンピューター依存が加速する製造業の未来を受け入れつつも、「機械の前に人間ありき」と、代々受け継がれてきた職人の技と精神性の伝承に力を注いでいる。◎2014年「八尾市ものづくり達人懸賞」受賞、2015年日刊工業新聞「マイスターに聞く」掲載、「なにわの名工」受賞◎西尾鉄工所ホームページhttps://nishio-tekkousho.jimdo.com/ 西尾鉄工所技術伝承 https://nishio-tekkousyo.jimdo.com/