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ISO9000を何のために取得する!ISOの精神と資格取得

ISO9000を何のために取得する!ISOの精神と資格取得

これは私より以前にISO9000の審査委員資格を取得され、業界でも有名な指導者として活躍中のSさんとの対話です。

たまたま夜に時間があったので、筆者と一杯飲みながら久々の情報交流をしている中でお聞きした話です。

 

先般、Sさんはある会社にISO9001(以降、ISOと略称します)の取得講演会を依頼されました。

半日の講演会だったそうですが、大変講評だったようです。

「他社でやっている書類づくり集中型ISOとは違った、経営直結型ISOを進めたい!」ということでY社より電話があり、訪問した時の話です。

ISO9001取得企業によくある批判

Sさんが講演された内容に入る前に、私たちが巷でお聞きするISO9001の取得~運営に対する批判(影の声)をまとめることにします。

ここまで何回かISOの話をしてきたように、ISOの利用効果は取得される側の運用にあり、ISOの規定や制度ではありません。

そのため、読者の方々には以下に示すような事態にならないよう願って問題と対策を示すことにします。

 

① ISOを取得したが、取得前の大騒ぎは一体何だったのか? 単なる書類だけが残った。

②品質向上と品質管理システムは無関係である。ISOを取得しても品質は良くならない。ISOは品質改善とはなんら関係がない。

③「ISO 取得で審査員のいうことを聞いていたら、やたら要らない書類が増えた。かえって書類や注意点のおもりに手間がかかる。品質に関係ない部署まで範囲に入れたことは失敗だった。範囲を絞れば費用も機関も少なく済んだのに残念だ」という不満。

④ ISOを取得しても売上が上昇するわけではない。自己満足に終わっている。トップが何の為にISOを取得したのか? と担当者を責める状態で困っている。第一、余計な部署をつくったため、費用負担も大変だ。できることなら上手い辞め方を誰かに指導してほしい。

⑤ ISO取得の目的はEUが日本の技術を盗むためのようなものだ。いくら審査委員が秘密保持を約束する、と言っても結局は人間、当社の品質造り込みのノウハウは品質に大きく関与し、書類化することにより盗まれるという状況が出ているようだ。

 

この他にも、多くの批判があります。たとえば、「ISOは書類の整備を前提としている。このことは紙の原料である木材、その供給地ジャングルの木の伐採を助長するようなものであり、地球環境破壊を行う悪いシステムである」……といったように。

流石に地球環境対策への批判にはISO関係者も当惑し、最近は電子化文書でも良い、というようになってきたようです。

また、この対策のためにISO14,001 という環境監査システムの具体化を急いだ! という方もおられます。

 

この地球環境問題を除き、このような批判はISOが本質的に持つ問題なのであろうか?

この問題はISOが持つ基準でも、審査でもなく、企業がISOをどのように取り扱うか? といった取得側の問題です。

時には企業の事情をよく知らない方々や企業指導者などが引き起こした場合もあるようですが。

 

Sさんはこういった問題をY社の講演会で話し、ISOの基本に照らして説明されたわけでした。

このため、Y社では先の5つの問題を回避する対策を準備してISO導入の意思決定をされ、ISO導入~活用効果をあげたわけでした。

では、Sさんとのお話を紹介することにします。

Sさんと筆者の対話

「ISO=書類づくり」という批判が出る理由

「Sさん、M社の講演は評判が大変良かったそうですね!」

「イヤ-、ISOの解釈はいろいろありますよ。手法上のことを話さなかったから評判が良かったようで、当たり前のことを話しただけです。マネ-ジャ-の方々は“結論は管理がシャンとせねばだめだな!”と言っておられました」

 

「ISOの規定にある考え方を話されたのですか?」

「そう、それがポイントで、ISOの規則の詳細や文書の作り方のハウツーの前に『What』と『Why』の設定が必要なので、そこだけを話したわけです」

「持論ですね、ISO規定を話してISOを売り込んだわけではないのですね!」

「そう、『何のためにISOが必要か?』という企業目的だけ、討論形式で話したんです」

 

「では、TPマネジメントの話をISO的に話されたわけですか?」

「そう、手段論や脅しは駄目じゃないですか。あなたの業界のA社が取っているし、取らないと業界で遅れを取りますよとか、EUに輸出するにはISOは必須条件ですという話もありますが、輸出していない企業にこの言葉はまずいですよね」

「そうですとも。でも、その手の発言が悪評を生んでいるようです。

××賞が沈滞してきたので××賞で審査や指導などをやってきた先生の多くが、過去に失業対策にISOの審査委員を担当し、企業トラブルを起こしていることが多いようです。

この話を聞くと、企業の経営にあまり関係ない要求をするものですから経営者は“ISOとはそんなもの? 要は書類づくりか?”という批判になるわけです!」

 

「そうなんです。結構短期間に批判が起きたのもハウツー重視の審査委員や指導者の方々の指導を受けた企業に問題が多いようですよ!」

「ISOは標準化でしょう! 一般に、仕事は問題の見直し、改善、その結果として標準化があるわけで、『ISO=全て書類づくり』はおかしいですよね」

「そうなんです、ISO取得前を急ぐ企業が『ISO=書類づくり』を先行した結果がISO批判につながっているわけで、このことを知らない指導者に食い物にされ批判となっているようですね。

第一、改善しないで書類を作成すると膨大になる。それがお手本という形で世の中に出ているとこれがまた大変なことになる。何も考えずに書類づくりに奔走するからです」

 

「過去にも類似の話はたくさんありましたが、歴史は繰り返しますね」

「そう、この図の左側のように、不良が出ると標準化、賞を取るなら標準書づくり、といった具合で書類を作成するが、現場のファイルが手垢すらつかないで保管されていることがよくあります! いわゆる使わない標準づくりという類の問題です!」

▼本当に役立つ標準化とは?
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「そう、それですよ、本来標準化は改善最終ステップで作成されるわけで、守ることが次の改善の種になるのでなければいけないし、現場で本当に使う標準でないと意味がないと思うのです」

「やらされ感」をなくすには

「私は、仕事をする時に重要点が3つ書かれたものを目の前に示し、チェックしながら守る作業方式を推奨してきました。

それ以上の要点はワンペ-パ-で現場作業者の近くに置き、ときどき見直す。

これはベテランでも必要ですが、新人にはもっと細かなものが必要です。これはマニュアルです。

マニュアルはベテランには必要ないです。

私は標準書をこのような3つの方式に区分していますが、一般にはマニュアル=標準書としているため、新人には必要でもベテランには必要ない事項は記載しないため、トップより号令があるときだけ作成されています。

これが、その場しのぎの標準書づくりの弊害を生んでいるように思います」

 

「日本人は規則に縛られるのが嫌いだ、ということも標準書を使わない理由にしていると思います。

“標準書よりもっと良いやり方をやってやる!”という考えが生産を支えてきたともいえる。

それでいうと、あなたの方式は良いかもしれない。改善追求の方式ですね、わたしも同じ方式を用いています。

要は、標準通り仕事をし、会社の代表として最良の方法を守る。

問題が出たら、“標準がまだ未完なのか? 標準を守らないため発生した問題なのか?”を職場の小集団で再検討する。

そして、問題を対策し、より良い方法へ改善し、標準を改訂する!

このやり方だと標準化は現場のものだし、押しつけにならない。

もちろん、技術的問題が発生するといけないので、新標準は技術部門のチェックや承認が必要ですが、OKであれば改訂、登録となる。

現場の標準が『正』で、管理部門には『写』を置く方式です! あなたもそう指導していますよね」

 

「その方式が一番です」

「そう、やらされ感がないですからね」

「ISOではこのような点までは求められていない。日本式のISOの方式が必要となりますね! Sさん、Y社にはこのような趣旨で講演をされたのですか?」

「ああ、その話ね。これは現場サイドの取り組みで、この前にISOの精神の話をしたら、それが受けたわけです」

ISOの精神とは

「管理とはなにか、ですか?」

「ご明察の通り、ISOは管理者自体、品質をどのように考え、方針をつくり、全員に理解徹底させてゆくか、といった管理の話があって、初めて書類づくりや品質管理システムがあるでしょう」

「規定の通りですね」

 

「そう、ISOの精神です。この精神を守らずいきなりISO9001の手段論に走るのはおかしいと思います。

この精神をもとに方針を定め、品質管理システムを作る。

その品質管理システムを自ら監査できれば良いですが、忙しいから管理者を選んで監査させ、方針の徹底具合を見る。

こうして顧客志向の品質対策の精神を全社に展開・運営・定着させる道具としてISOを利用すべきなのです。

そして、品質改善の目標と対策手段を定めることがまず必要になり、品質を維持向上するシステムを確率するための管理システムのためにもISOを利用すべきだと考えます」

 

「なるほど、それなら品質管理の良いシステムができますね。でも、TPマネジメントでやっていることと同じですね」

「そう、ある人がそう言ってましたよ。しかし、マネジメント・システムの評価を行うのだから、この点に特徴がない ISOなら、単に他社の真似ごとではないだろうか?」

 

「そう思います。ISOを取得しても書類づくりに終わったということは、本に書いてある真似をしているだけで、品質システムの構築は担当者任せ、形はあるが、中身がないということです。

毎年のサーベイランスに追い回され、監査会社の発言に気を遣い、不満たらたらとなるわけだ。この話は結構多いみたいです。

私が指導しているメーカーではISO取得と小集団活動を結びつけ、経営改善の一貫として推進したことと、そこでできた標準化を外部から見ても問題がないか? といった点を評価するためにISOを利用したので、ISOで標準化するのに要した費用も2ヶ月で回収しました」

 

「それは良いですね。そうならなくては、ISOを導入する意味がない!」

「だれのためのISOなのか? 顧客のための品質づくりをトップ自ら行うため にISOのマネジメント・システムを利用しなくてはいけない。

企業のトップが、『何のために、何を目標に、 ISO を活用するか』をハッキリさせて取り組まねばダメだ! というわけですね?」

 

「そうです! 私もY社で同じ話をしました。管理者の方々は大変に興味を示され、昼飯の時も質問攻めでしたよ。

“品質の目標を他社ではどのように定め、展開しているか?”とか、“責任と権限、目標と貢献度をどのように設定しているか?”という話に終始しました。

結論は“ISOのマネジメント・サイドがしっかりしないで取り組むべきではない!”という話になりました。

“ISOの4.1項の話ですね?”という話が出たし、ISOの4.1項を読んでおられたようで、“出発点はここですね!”という話が返ってきた。

要は、担当者任せのISOなどはあり得ないし、そうしていると形は異なるが、先の話にあったように日本でかつて弊害をきたした、古くて新しい『ほこりをかぶった標準書づくりの再来病』が再発してしまいます」

「なるほど、Sさん流石ですね。うまい!

神髄を突いたISOの説明をなさったわけですね。評判が良かったわけがわかりました。私もそのようには感じていましたが、そこまで踏み込んだことをハッキリとお客様にお話していなかったことを反省します」

コメント

マネジメント主体のISOの展開は、企業活動を進める上で大切な課題であると思います。そこでSさんのお話をメモに書きとめ、紹介した次第です。

なお、S さんがお話されたのはISO9000に記載されている下の図の解説です。

 

左側の品質計画とは、一流の品質を実現に向けること、また、当然そうすることで売上高と利益確保を図る算定が必要です。

では、このような目標を定めて達成へ向けるには? と考えると、図の左端の品質改善の程度が問題になります。

このためには現状把握を行い、あるべき姿への達成ストーリーを構築する対策が要りますが、このような中期目標を段階的に構築した後、一度あがった段階を保証する、また品質管理者と組織と制度などをつくり対処する、という取り組みが必要になってきます。

 

図の中で、ISOは品質計画と品質改善にサンドイッチ式に挟み込む形で示しています。

そして、書類づくりは品質管理の一部に過ぎません。このようにISO を解釈して活用することが品質マネジメント・システムなのですが、いきなり ISO9001の書類作成基準に入っていくと、ISO9000という基本、そしてISO9004というガイドラインの一部の文書化として存在するISO9001がISOの全てと勘違いしてしまう傾向が生じます。

このような誤解を生ませるISO事務局やISO取得指導者の方々の存在も、企業では「経営離脱のISO」としてご注意願う次第です。

また、このために次の図もご覧願えると幸いです。

▼ISO9000sに見るマネジメントのあり方
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▼顧客直結でお客様の潜在ニーズをも生かす営業機能
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▼超一流化の条件
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昭和45年から平成2年まで、日立金属㈱にて、全社CIM構築、各工場レイアウト新設・改善プロジェクトリーダー、新製品開発パテントMAP手法開発に従事。うち3年は米国AAP St-Mary社に赴任する。平成2年、一般社団法人日本能率協会専任講師、TP賞審査委員を担当を歴任する。(有)QCD革新研究所を開設して活動(2016年有限会社はクローズ、業務はそのままQCD革新研究所へ移行)。 http://www.qcd.jp/