ISO規格に基づく振動診断技術者の認証制度 vol.2 ~ 認証制度の...

ISO規格に基づく振動診断技術者の認証制度 vol.2 ~ 認証制度のもたらすメリット ~

SO規格に基づく認証制度というと多くの方がISO 9000(品質管理システム)やISO14000(環境管理システム)などのような企業・団体を対象とした認証制度をイメージされるのではないでしょうか。

しかし今回は、機械状態監視診断技術者という個人の技術レベルを認証する制度について紹介します。

3.資格認証制度のもたらすメリット

上記の資格認証試験に合格すると、日本機械学会より和英併記された証書と認証カードを授与されます。

さて、この認証制度および技術者個々に与えられる認証はどのような意味を持つのでしょうか。

一つには、設備機械の状態監視を目的とした振動計測がアウトソーシングされる傾向にあること、もう一つには、産業のグローバル化とそれに伴う振動診断技術者の国際対応と国際競争があると思います。

 

これらに対応してゆくには、振動診断技術者の技術レベルを評価・証明することが求められますが、その手段としてこの認証を利用することができると考えられます。

また、この資格認証制度はISO国際規格に基づいて運営されているため、海外においても国内と同様に技術レベルを評価される資格認証であることも重要なポイントです。

また、技術者個人にとっては、現場経験により学習してきた技術、知識に頼るだけでなく(勿論、現場経験はより深い技術レベルの習得にとって非常に有効でかつ重要なことですが、担当した機械の種類や事象に偏った知識となる傾向も考えられます。)、体系立てて機械の振動監視診断技術を学ぶことができるため、より幅の広い視点を持った技術、知識を身に付けることができるというメリットがあります。

 

認証を取得する技術者にとっては、社会的に認証取得していることが評価される、または必要とされるということも重要な要素となりますが、その一例として電気技術指針原子力編における具体例を示します。

日本電気協会原子力規格委員会により2007年12月に制定(2008年6月発行)されたJEAG 4221-2007「原子力発電所の設備診断に関する技術指針 – 回転機械振動診断技術」の中で、「第5章 力量要件」として測定者と評価者それぞれの力量要件が記載されており、その中でISO機械状態監視診断技術者(振動)の資格認証者に関して下記の通り記述されています。

 

測定者の力量要件

ISO機械状態監視診断技術者(振動)カテゴリーⅠ以上又は機械保全技能士(設備診断作業)二級以上の資格を保有する者は、適切な力量要件を満たしているものとみなしてよい。

評価者の力量要件

ISO機械状態監視診断技術者(振動)カテゴリーⅡ以上又は機械保全技能士(設備診断作業)一級以上の資格を保有する者は、適切な力量要件を満たしているものとみなしてよい。

 

この電気技術指針の例は、振動診断技術者が業務に携わるための力量・資格要件を明文化したものの第一歩に相当するものかもしれませんが、このような業務にあたって振動診断技術者に資格保有者であることを求める傾向は原子力発電所以外にも広がっていくものと考えられます。

自動車を運転するためには自動車運転免許証が必要なように、将来はISO機械状態監視診断技術者(振動)の認証カードが、振動計測や振動解析・診断を行うための免許証としての役割を持つようになるかもしれません。

4.海外の認証機関との相互承認

前項でも触れた通り、この資格認証制度は国際規格であるISO 18436-2規格に基づいて運営されているため、国際的に通用する資格認証であると同時に、海外の資格認証機関、認定訓練機関においても同等レベルの訓練の実施と、同等レベルの能力を有する技術者に資格認証が与えられるものであるといえます。

したがって、国内に限らず海外においてもこの訓練制度に基づいて日本機械学会が発行する資格認証カードを提示することで、各カテゴリー相当の能力を有する振動診断技術者であることを示すものとなります。

これをより強固なものとしてグローバル化を推し進めるため、日本機械学会では米国のVI(Vibration Institute)、カナダのCMVA(Canadian Machinery Vibration Association)、韓国のKSNVE(Korean Society for Noise and Vibration Engineering)など海外の認証機関との相互認証契約を締結しています。

 

※本コラムの内容は社団法人日本機械学会のホームページおよびD&D2006基調講演(「機械の状態監視と診断に関するISO規格関係の話題」ISO/TC108/SC5国内検討委員会主査 株式会社東芝 榊田氏)の内容、および該当する規格、技術指針を参考にしています。

 

出典:『技術コラム 回転機械の状態監視や解析診断』新川電機株式会社


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