稼働監視とAI 最新動向(2018年末版)見える化から予兆保全まで、ラインアップが充実してきた稼働監視
今回はIoTの「見える化」の範囲や機能を拡張した「トータルの稼働監視」、先端テクノロジーの組込みの観点から「予兆保守」をはじめとしたAIの活用を取り上げます。
なぜ製造業の「見える化」は遅れがちなのか?
非製造業、あるいは製造業の非製造部門では、オペレーションの「見える化」は当たり前であり、1990年台は定期的に分析、2000年台にはリアルタイム分析と即時指示、2010年台にはそれに加えてリアルタイムに作業負荷の自動振り分けなどが実現されています。
一方、製造現場では、ラインのエンド・トゥ・エンドで、スループットやボトルネックを分析して早期解消することがあまり進んでいません。
大手メーカーの工場で「ライン」の「見える化」〜「分析」〜「最適化」を行うことで30%生産性向上したことが話題にのぼりましたが、2010年台の大企業の事務処理やコールセンター、テクニカルサポートなどのオペレーションセンターで最適化による改善余地が30%もあるようでは落第です。
製造現場ではなぜそうなってしまっているのか。
作業品質や作業速度などの個別プロセスの管理が(比較的)重視されていたとこと、個別プロセスからのデータ取得が自然とできなかったことがあると思います(オペレーションセンターは、紙から事務処理システム、コールセンターシステムに変わった時点で、全工程のデジタルデータがリアルタイム取得できました)。
そのような中で近年、「Industry 4.0」「IoT/IIoT」「ITと装置のテクノロジーの共通化」などの産業構造の変革や技術の進化により、製造現場を「見える化」して「監視下」におき、「高い視点から最適化」を行うことに対する「心理的抵抗」と「技術的障壁」が下がってきました。
ここまで、製造業全般が遅れているような話をしてきましたが、全ての企業がそうというわけではありません。ITシステムインテグレーション子会社を持つ大手製造業を中心に、多くの工場で「包括的な稼働監視と最適化の仕組み」を継続的に発展させてきています。
「IoTによるトータル稼働監視と最適化」について理解するには
当初のテーマ設定に戻ると、現時点で「IoTによるトータル稼働監視と最適化」について理解するのには、先進的な工場を運営している製造業企業+IT子会社(あるいはパートナーベンダー)が自社ノウハウを横展開しているソリューションが適切だと思われます。
これらのソリューションをすぐに導入するかはさておき、全体像を理解せずにさまざまなソリューションをバラバラに検討するのは危険です。
もう一つの観点として、他の業種も含め、ようやく技術的に実用段階にいたったAIの製造業での活用についても紹介したいと思います。
誤解を恐れずに言うと、画像のような大容量データを扱うものを除くと、現時点では、予兆保守などはAIに「大規模な投資を行うだけの効果が得られる場合とそうでない場合」があります。
そもそも装置の故障率は低く、自社工場内だけだと故障発生時のデータが無いことすらあります。
そのため、多変量解析などの数学的な計算と比べて費用対効果も含めるとAIが優れているとは言い切れない状態です。
実際、最近の展示会では、予兆保守ソリューションについて、あえて「AIではありません」とPRしたり、「NG学習データ不要」をうたうものがでてきています。
一方で、将来的には製造現場のあらゆる大量のデータ(ビッグデータ)がAIを含むさまざまな分析により、生産性・品質・在庫などの最適化に使われるようになると思われます。
すでに個別AIソリューションではなく、さまざまな用途に適用可能なAI、あるいはデータ管理・分析基盤を提供するプレイヤーが国内外のトップ製造業と協業して未来に向けた準備を行っています。
- 包括的な稼働監視ソリューション
- (自社に合って費用対効果が良ければ)早期導入可能なAI予兆保守ソリューション
- AIを中核としたこれからの製造業データ活用基盤
これらについて、参考になりそうなカタログを厳選して掲載しました。ここに掲載したものが全てではありませんが、これらをきっかけに理解を深め、効果的な導入の検討の一助になれば幸いです。