産総研、基準球面レンズの表面形状を高精度に校正

産総研、基準球面レンズの表面形状を高精度に校正

この記事の内容をまとめると…

  • 基準球面レンズ表面の球面度を効率的かつ簡便に校正できるシステムを開発
  • ランダムボール法の導入と不確かさの評価法の確立により精密な光学系調整が不要に
  • 光学部品メーカーの基準球面レンズの表面形状を小さな不確かさで校正できるサービスの提供

 国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)は、基準球面レンズ(※1)の球面度(※2)を高精度に校正可能な技術を開発した。
(※1)基準球面レンズ
 光の干渉現象を利用して光学部品の形状を精密に測定するための基準レンズ
(※2)球面度
 理想的な球面からの偏差形状を表す指標

概要

 産総研の研究チームは、不確かさ4.3 nmで基準球面レンズの球面度を高精度に校正可能な技術を開発した。この技術により、産業界で使用される基準球面レンズの校正が簡便かつ高精度に行えるようになり、光学素子(※3)の高精度化や製品の品質管理の高度化に寄与する。
(※3)光学素子
 光学機器や光学系を構成する個々の要素。レンズ・プリズム・反射鏡・フィルター・回折格子などを指す。

基準球面レンズ詳細

 スマートフォンや内視鏡などに搭載されるカメラには、小型で高精細な画像を得るための高精度な光学素子が必要である。これを実現するために、表面の凹凸をナノレベルに低減し、絶対形状を設計形状とナノレベルで一致させる必要がある。そのため、加工された表面形状を正確に測定し、設計形状からのずれを評価する技術が重要となる。

 基準球面レンズは、高い球面度をもつ参照面として、高精度な形状測定装置の中核を担う。本研究では、レーザー干渉計を用いた球面度校正装置において、ランダムボール法という実用的手法により、任意のFナンバーに対応する基準球面レンズを簡便に校正するシステムを確立した。さらに、光学系調整時のエラー(ミスアライメント)による測定誤差を解析し、不確かさの評価法を確立したことにより、不確かさ4.3 nmという高精度で校正が可能となった。

この技術は、基準球面レンズの校正体系を通じて産業界に展開され、光学素子の開発や製品の品質管理を高度化する技術基盤となる。

どのように活用する?

 今回開発した校正システムを用い、SIトレーサブルな球面度の標準供給を開始する。さらに、校正済みの産総研基準球面レンズとの比較による簡便な校正手法も実施する予定である。加えて、開発した技術や球面形状を産業界へ展開する。

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