OKI、光ファイバーセンサー向け『WX1034光スイッチ』を販売開始 測定範囲が16チャネル最大80kmまで拡張
沖電機工業株式会社は、光ファイバーセンサー『WX1033シリーズ』に接続される16系統の光ファイバーを集約し、1台のセンサーで最大80kmにわたる温度分布やひずみ分布の測定を可能にする『WX1034光スイッチ』の販売を2021年3月2日より開始した。社会インフラ構造物など広範囲の予防保全のために実施する、光ファイバーセンサーによる測定やモニタリングの効率を大幅に向上する。
開発の背景
橋りょうをはじめとする社会インフラ構造物や製造設備などの老朽化に伴い、施工品質の確保、予防保全や健全化監視のために広範囲のモニタリングを効率的に実施するニーズが高まっている。同社は、電源供給の必要がなく厳しい環境下でも測定できる光ファイバーセンサーを用いたインフラ構造物全体のモニタリングに取り組んでおり、長距離・広範囲にわたる温度・ひずみを分布的かつリアルタイムに測定する独自のSDH-BOTDR(※1)方式を採用して、実証実験を通じ、その有効性を検証してきた。
しかしながら、この光ファイバーセンサーによるインフラ構造物の予防保全等の適用範囲を広げ、社会に実装していくためには、より広範囲でさまざまな構造物の中に複数の光ファイバーを張り巡らすことが必要となる。同社はこの認識のもと、センサーの効率的な設置、運用を課題として取り組んできた。
※1 SDH-BOTDR
SDH-BOTDR(Self Delayed Heterodyne -BOTDR:自己遅延ヘテロダインBOTDR)は、OKI独自の新技術(特許取得済)により、「ブリルアン散乱光」の周波数の変化を電気信号の位相シフトに変換して捉えることで大幅に測定時間を短縮した新たな光ファイバーセンシング手法。
製品の概要
『WX1034光スイッチ』は、16の測定チャネルを備え、かつ測定チャネル間をリアルタイムに切り替えることができる光スイッチ。光ファイバーセンサー『WX1033シリーズ』と『WX1034』を組み合わせることで、最大16系統の光ファイバーによる測定が可能となる。これにより1台の光ファイバーの測定距離を1系統1kmから16系統80kmまで拡張することができ、測定距離あたりの導入コストを大幅に抑えることができる。また接続された複数の光ファイバーをつなぎ替えることなく、測定チャネルを自動で切り替えながら、1系統の光ファイバーあたり約20秒間隔で連続測定することができる。これにより、エッジサーバーやクラウドシステムなどと組み合わせて、遠隔から高効率に測定・モニタリングを行うIoTシステムの構築も可能。
グラウンドアンカーの有効性
なお同社は、『WX1034』の販売開始に先立ち、鹿島建設株式会社と共同で、光ファイバーを組み込んだ複数のグラウンドアンカーの張力を『WX1034』と1台のセンサーでリアルタイムに把握できるシステムを開発し、その有効性を確認している。
今後の展開
同社は光ファイバーセンサー『WX1033シリーズ』と『WX1034』を組み合わせることで、社会インフラ全体を遠隔から常時リアルタイムに監視できる施工および維持管理ソリューション、さらにはAI等の活用によって直接人が判断することなく監視できるシステムとして発展させ、社会インフラの予防保全などさまざまな社会課題の解決に積極的に貢献するとのこと。
販売価格と提供開始時期
標準価格
- 『WX1034光スイッチ』:1,650,000円(税込)
- 『光スイッチ拡張ライセンス』:1,100,000円(税込)
※光ファイバーセンサー『WX1033シリーズ』との組合せで使用
提供開始
2021年3月2日
販売目標
2022年までに20億円
『WX1034光スイッチ』主な仕様
- 光ファイバー入力コネクタ:1チャネル
- 光ファイバー出力コネクタ:16チャネル
- チャネル切替時間:0.2秒以内
- 挿入損失:1.0dB以下
- 外形寸法:W:430mm×D:420mm×H:51.5mm
- 設置形態:卓上設置、19インチラック設置