横河計測、スコープコーダ『DL950』を発売 メカトロニクス市場の開発効率向上を支援
横河計測株式会社は、高精度データアクイジションシステム、スコープコーダ『DL950』と、同製品で使用できる2つの入力モジュールを開発し、2021年2月9日に発売した。先代に比べて基本性能が向上されたうえ、長時間記録のためのオプション機能も今秋までに充実させ、自動車、メトロニクス、パワーエレクトロニクス製品の開発効率向上を支援する。
製品概要
『DL950』は、2010年に発売したスコープコーダ『DL850』シリーズの後継機種。基本性能や操作性を向上させたことに加え、同時発売する2つの入力モジュール、200メガサンプル/秒でデータを取り込む「720212」と、4つの入力チャネルから10メガサンプル/秒でデータを取り込む「720256」で多様な測定ニーズに応える。また、2021年秋までに、内蔵不揮発性メモリーに高速サンプルレートで長時間記録可能なオプション機能「フラッシュアクイジション」も発売される。
『DL950』は、ポータブルモデルの『DL350』、システム向けに特化した『SL1000』を含むスコープコーダシリーズの最上位モデルに位置し、自動車、メカトロニクス、エレクトロニクス業界で製品開発に取り組むユーザーの開発効率向上を支援する。同社は、『DL950』をオシロスコープやパワーアナライザなどの製品とともにトータルソリューションとして提供し、ユーザーの省電力化や電力変換の高効率化の開発を支援する。
開発の背景
同社のスコープコーダシリーズは、オシロスコープの操作性とデータレコーダーのデータ記録機能をミックスした高精度データアクイジションシステムとして、2000年代初めからメカトロニクス業界のユーザーを中心に、製品開発や機器メンテナンスの際に用いる計測器として広く長く採用されてきた。
近年は、持続可能な社会の実現に向け、電気自動車や再生可能エネルギー市場でのモーター、インバータ、および太陽光発電装置などで、さらなる省電力化と電力変換の高効率化が求められている。例えば、電気自動車開発においては制御信号や通信データ、NVH(※1)信号などを同時に多点で長時間測定する必要がある。
『DL950』は最大5台の複数台同期計測に対応しており、同時に多様な物理量(荷重、圧力、変位、振動、トルクなど)を計測することが可能で、測定データを並べて表示もできるため、それらの相関関係の分析を支援する。また、これらの信号の高速化も進んでおり、2つの新入力モジュールによって高速化と多入力化の測定要求に応える。
※1 Noise(騒音)、Vibration(振動)、 Harshness(ハーシュネス)の頭文字で自動車の乗り心地の基準の一つ。ハーシュネスは路面の継ぎ目や段差を乗り越える時に発生する振動。
製品の特長
1. 高速サンプルと高速データ転送で製品品質の向上と長時間計測を支援
『DL950』と同時に発売する入力モジュール「720212」はオプションの8ギガポイントメモリーと組み合わせると200メガサンプル/秒で20秒間データを取り込む。これまで提供してきた入力モジュールでは取り切れていなかった、近年のメカトロニクス業界で高速化する信号などの過渡的な変化やノイズを捕捉できるため、製品品質の向上に役立つ。
長時間データを収集、表示、記録する用途では、オプションの10ギガビットイーサネットと、統合計測ソフトウェアプラットフォーム「IS8000」を組み合わせることで、最高10メガサンプル/秒でデータをPCへダイレクトに記録できる。また、フラッシュアクイジション機能を使うことで、『DL950』の内蔵不揮発メモリーに最高20メガサンプル/秒でデータを長時間取り込むことができ、スペースやセキュリティの都合などでPCを持ち込めない自動車や電車などの車載計測、発電所などにおける高速サンプル計測や長時間計測を支援する。
2. 多種多様な機器の同時計測で製品設計・評価の業務効率向上を支援
メカトロニクス業界では、電気信号のみならずNVH信号を同時に測定するニーズが高まっており、その測定点数も増加傾向が見られる。『DL950』にはモジュールを装着するスロットが8つあり、今回発売する入力モジュール「720256」には入力チャネルが4つある。そのため、『DL950』の8つのスロットすべてに「720256」を装着することで最大32チャネルの同時測定が可能な環境を構築できる。この環境においても各チャネル10メガサンプル/秒でデータ収集と記録ができる。さらに光ファイバーケーブルで接続することで最大5台の『DL950』の測定タイミングを同期させることも可能。ネットワークに接続された機器間での高精度な時刻同期のプロトコル「IEEE1588」のマスター機能により、他の測定器との正確な同期計測を実現する。これらによって多種多様なメカニカルパラメータの同時計測を実現し、ユーザーの製品設計・評価の業務効率向上を支援する。
3. 大画面、タッチパネル、ウィザード形式のメニューで使いやすさの向上に貢献
波形をより詳細に観測するため大画面と、直観的でストレスフリーな操作に貢献するタッチパネルを搭載している。従来機種と同等のメカニカルキーやロータリノブなどの操作盤も残されており、状況に応じてタッチパネルとの使い分けが可能。
また、電力解析、ひずみ計測などのよく使われるアプリケーションを、ウィザード形式(※2)の設定画面でより簡単に設定できる「アプリケーションメニュー」が用意される。今後はユーザーの要望に合わせたウィザード形式の設定画面の拡張を計画するとのこと。
同社のスコープコーダシリーズは入力モジュールを共通化している。『DL950』でも多くの既存モジュールを使うことができ、すでに保有の資産を有効活用することが可能。
※2 複数の設定画面を1つずつ表示させ、設定が終わるたびに次の設定画面に移動を繰り返すことで複雑な設定を比較的簡単に完了させる仕組み
主な市場
- 電気自動車などのカーエレクトロニクス市場
- 電力、エネルギー、インバータ、パワーデバイスなどパワーエレクトロニクス市場
- 産業用ロボット、産業用モーターなどのメカトロニクス市場
用途
- 電気、電子回路の設計・評価
- カーエレクトロニクスにおける、CASE開発でのCAN、CAN FDなど車載バスを流れる情報の変化トレンドとバッテリー消費電力などの各種アナログ信号の同時測定
- パワーエレクトロニクスにおける、電力解析、制御信号評価
- メカトロニクスにおける、制御などの高速信号と比較的変化の遅い温度・振動などのメカニカル信号の同時測定・評価