試行錯誤

試行錯誤

試行錯誤を促していますか?

1.あらゆる仕事が仕組み化されていますか?

「株を守る」と言う言葉があります。

切り株にぶつかって死んだウサギを手に入れた農夫が、その後、働くことをやめ、またウサギを手に入れようと切り株を見張って暮らしたということから、昔通りの習慣にこだわって融通がきかないことをたとえた表現です。

韓非子の故事によります。

 

従来の仕事のやり方(株を守る)の延長線上に、生き残りの道はないことを現場へ伝え、一方で、将来へ向けた仕組みづくりに着手して、変わることを促さなければなりません。

あらゆる仕事が仕組み化されていなければならないゆえんです。

 

仕組み化されていなければ、フォローと評価ができません。

ビフォーとアフターを現場へ示せないからです。

仕事のやり方に問題があっても相対化されず、その状態が放置され、いきおい、「仕事ができる人」にどんどん仕事がついてきます。

仕組み化に欠ける現場で多能工化が進まないのは、仕事のやり方に問題があっても相対化、比較化できないからです。

多能工化の必要性を感じる機会がありません。

 

一方で、「仕事ができる人」にも問題が生じます。

人に仕事を割り当てている限り、その人は、変わろうとしなくなるからです。

変わるためには新たなことに挑戦しなければならない、すると新たな仕事が生じ、それも自分に降りかかってくるのではないか・・・・・・。

フォローや評価されることなく、業務量だけ増える状況では、現場で自分の身を守る発想が自然と身についてしまうのは明白です。

 

仕事の流れが不明確で、役割分担がはっきりしていない現場からは「株を守る方がいい」という言葉をしばしば耳にします。

現場へ業務を丸投げした状況です。

  

皆さんの現場はいかがでしょうか?

あらゆる仕事が仕組み化されていますか?

2.継続的な変化に絶対、必要なもの

顧客が求める要望は、複雑化、高度化しており、それと共にモノづくりも、どんどん複雑化、高度化していきます。

だから、現場でも継続的な変化が求められます。

仕組みの作りっぱなしはダメです。

豊かに成長したかったら、仕組みを積極的に変えて、自分たちも変わらなければなりません。

  

そして、変わり続けるのに、絶対、必要なことがあります。

それは・・・。

 

チームでの試行錯誤です。

チームでのトライ アンド エラー。

 

伊藤が大手メーカーで勤務していたとき、開発業務の管理者を担ったことがあります。

新製品開発、新技術開発は一筋縄ではいきません。

当時、すでにシミュレーション技術が活用されていて、開発の方向性は、そうした道具で探ったりしていましたが、最後の仕上げは試行錯誤でした。

 

開発チームのメンバーとワイワイやりながら、(今では疑問視されるかもしれません)徹夜も厭わず、イイモノを造ろうという一心で頑張っていました。

新たなこと、あるいは新たなやり方を見つけるのには、チームでの試行錯誤が欠かせませんでした。

 

望ましい仕事のやり方に、唯一絶対の答えがあるわけではありません。

望ましい仕事のやり方は、現場自身が、あーでもない、こーでもな、侃々諤々、チームで自由に意見を言い合うなかで見つけるものです。

こうした仕組みがあってはじめて、人は安心して仕事に打ち込めます。

そして、その安心感が、チームで仕事をしようという発想に繋がります。

自分を守る必要はありません。

 

経営者の方々には、チームで試行錯誤ができる環境を整備して欲しいのです。

試行錯誤が継続的な変化の原動力。

 

ウサギを待って「株を守る」だけでは豊かな成長はできません。

現場の豊かな成長には、チームでの試行錯誤が必要であることを現場へ伝えて下さい。

小さなPDCA(試行錯誤)を回し続けて大きな夢を実現させます。

3.Jpキュービック

試行錯誤しながら、ノウハウの蓄積をしたのだろうなと思わずにはいられない中小製造企業が日経モノづくり2019年8月号に掲載されていました。

樹脂加工で他の企業ができないような高度な加工を得意としているJpキュービック。

アクリル樹脂で表面粗さがシングルナノ(6nm)レベルの鏡面加工を切削加工で実現させる高い技術力で付加価値の高い仕事をこなしています。

 

社長の伊藤雅彦氏は、起業して5年間、樹脂製品の販売と測定業務だけを手がけていたとのこと。

その後、製造部を立ち上げました。ただ、立ち上げた製造部のメンバー構成が興味深いです。

 

社長とパートを含めて8名だったようですが、そのうち製造経験者はなんと1名。

伊藤氏自身も前職は営業技術部であったため、実際に工作機械をオペレーションした経験はありません。

現場の職人とやり取りするために理論は猛勉強したとのことですが、実務が未経験という状況には変わりません。

 

伊藤氏自身、10年前は「素人集団」だったと語っています。

その「素人集団」が、今ではお客さんに技術者集団と呼ばれているそうです。

「素人集団」が10年で、技術者集団へ変わりました。

積極的な試行錯誤があったはずです。

 

伊藤氏は次のように語っています。

「難しい仕事を受注して機械を使いこなし、ノウハウを蓄積していく。ノウハウの集積でチームとしての会社の力が付いてきました。熟練者に依存しないシステムを構築してきたのです。」

チームでの試行錯誤を繰り返し、ベテランに依存しない現場をつくりあげました。チームで共有するノウハウが同社の強み。

 

また、伊藤氏の口癖は「できないと言わない」。

では、難しいことに直面したとき、どうするのか?

「できないのはなぜか、できない要因を徹底的に調べて、1つひとつ潰していけば、最終的にはできるんです。過去のものづくりの常識や固定概念、一般的なセオリーなどに振り回されていてはいけません。」

こうした思考回路が共有されている現場です。

付加価値額人時生産性を高め続けている現場であることは言うまでもありません。

 

「付加価値額人時生産性を高め続けること」と「現場の豊かな成長」がどう繋がるのか・・・・・・。

弊社の「将来投資型固定費戦略」をご存じの方はお分かりのことと思います。

 

伊藤社長には夢があります。

「もっともっと生産性を上げて社員の1時間の価値を高めたい。だって私の目標は“社員の平均年収2000万円、完全週休3日制”なんですから。5年後をめどに実現できると考えています。」

同社の今の待遇は、勤務3~4年目で平均年収は750万円、2~3年目の社員でも平均年収600万円くらい。

伊藤社長は地方の中小メーカーとしては相当高いと自負しています。従業員が聞いたら、ますます張り切ること間違いない夢です。

見通しを示し、大きな夢を現場と共有すれば、現場のやる気は間違いなく高まります。

 

ところで、なぜ、付加価値額人時生産性を高め続けるのか?

伊藤社長は次のように説明しています。

「それは、仕事のパートナーである社員が幸せになるためです。会社員だったころは、自分の価値を高めて、自分の幸せを考えるしかなかった。でも経営者になると変わります。自分だけじゃない。社員の待遇を考えるようになる。」

思わず膝を打たれた経営者の皆さんもいるのではないでしょうか。

多くの経営者の方々も同じ思いであろうと。

 

10年前の「素人集団」が「技術者集団」に変わったのは、チームによる試行錯誤があってこそです。

試行錯誤です。

試行錯誤を促すチームづくりに知恵を絞って下さい。

4.中小企業製造業の従業員一人当たり付加価値額(2017年)

2018年版中小企業白書に、中小企業製造業の従業員一人当たり付加価値額が掲載されています。

最新の2017年時点データとそれをさかのぼること8年の2009年時点データを大企業製造業と比べる形で見てみましょう。

(2009年、2017年の順 単位:万円/人年)

中小企業製造業 501 556

大企業製造業 999 1403

 

8年間の生産性向上率は、大手が40%であるのに対して中小は11%に留まっています。

その結果、2009年時点で2倍だった付加価値額生産性の大手と中小の差が広がっています。

付加価値額生産性の大手と中小の格差をどう感じますか?

 

規模の経済や請負型ビジネスモデル云々ということを並べて、格差の理由に納得しても始まりません。

改革して伸びる余地があるということナノダと考え、我々、中小製造企業は、ただひたすらに、付加価値額生産性を高める骨太のモノづくり戦略を実践したいです。

大手も生き残りに必死です。

ですから、かってのウサギを待って「株を守る」だけでは豊かな成長はできません。自ら変わろうとする試行錯誤の旅へ出発です。

5.試行錯誤を重ねながら固定費を成長させる

将来投資型固定費戦略に弊社の想いが込められています。

固定費を成長させて・・・・・・とはセミナーや個別相談の中で経営者の方々にお伝えしていることです。

 

これは、伊藤の中小管理者時代の経験から生まれた想いでもあります。

大手から中小の製造企業へ転職し、給与、賞与の水準が現場のモチベーションへどう影響するかを肌感覚で感じたからです。

 

業界の中で、あるいは地域の中で、少しでもイイ水準の賃金としたいと考えている経営者は多いです。

こうした夢を是非実現させて欲しいと弊社は強く願っています。

 

ただ、一方で、外発的動機付けと言われる給与、賞与、お金は動機付けにおいて、キリがないとも言われています。

仕事のそのもの、やりがい、達成感など内発的動機付けこそが、モチベーションの源泉だと。

 

内発的動機付けの重要性は認めつつも、それがしっかり機能するには、前提条件があると伊藤は考えています。

お金が全てではありませんが、最低限の外発的動機付けへの配慮は欠かせないのでは?

 

このあたりは微妙な話です。

経営者と現場とで共有されている思考回路次第とも感じています。

が、少なくとも、付加価値額人時生産性を高め続け、固定費を成長させ、従業員へ・・・・・・、という夢は掲げたいです。

 

我々は、技術で戦っています。

ウサギを待って「株を守る」だけでは豊かな成長はできません。

納期遵守は製造現場の使命ですが、それのみで満足していては、夢は絵に描いた餅に終わります。

付加価値額人時生産性向上が生き残りの絶対策です。

 

だから、試行錯誤です。

試行錯誤を重ねながら固定費を成長させます。

試行錯誤を促すチームづくりに本気で取り組んで下さい。

 

試行錯誤を促す仕組みづくりで、付加価値額人時生産性を高めませんか?

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製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)