人間関係で生産性を高める
生産性へ大きく影響を及ぼす要因はなんでしょうか?
1.ホーソンの実験
ホーソンの実験というのがあります。
今から100年近く前の1924年から1932年にわたり、シカゴ郊外にあるウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場において行われた実験と調査のことです。
機械化による大量生産を実現させた第2次産業革命の時期(20世紀初頭)に開発された科学的管理法は、徐々に産業界へ浸透し、大きな成果を上げていきました。
しかし、第一次世界大戦が終わるころには、生産性の上昇が鈍化し、新たな考え方が求められていたようです。
このころから管理技術も細分化、専門化に拍車がかかり、多岐にわたる分野での検討が進んでいきました。
そのひとつにあげられるのが、このホーソンの実験です。
ホーソンの実験では作業環境問題など、生産性へ影響をおよぼす要因を明らかにすることが目的でした。
下記に示す実験と調査が行われています。
(ウィキペディアより)
●照明実験
工場の照明と作業能率の相関関係を調べました。
●リレー組み立て実験
賃金、休憩時間、軽食、部屋の温度・湿度など条件を変えながら、6名の女性従業員が継電器を組み立てる作業能率がどのように変化するかを調べました。
●面接調査
延べ21126人の労働者に面接して聞き取り調査を行いました。
●バンク配線作業実験
職種の異なる労働者をグループとして、バンク(電話交換機の端子)の配線作業を行い、その協業の成果を計測しようとしました。
例えば、「照明実験」では次のような結果が得られています。
(中略)当時、未解決であった作業環境問題を解こうとして、まず照明や疲労の実験が行われた。
その結果、たとえば「照明を明るくすれば能率が上昇する」という仮説が根底からくつがえされてしまった。
初め、明るくしたら能率が上がった。
もっと明るくしたらさらに上がった。
明るくするにつれてまだ上がるので、念のため、照度を下げてみたところ能率はやはり上がった。
さらに暗くしたが、まだ上がった。
この生産性向上はもはや、照明以外のなにものかの影響であることがわかった。
(出典:新版IEの基礎 藤田彰久)
また、「リレー組み立て実験」では、賃金、賃金、休憩時間、軽食、部屋の温度・湿度などを変えています。
これらの要因を変更したときも、「照明実験」と同様の結果が出ました。
どのように変更を行っても、実験が進むにつれて作業能率は上昇し、さらに、途中でもとの労働条件に戻す形の条件の変更を行った場合にも、作業能率が上昇したというのです。
賃金の増減にかかわらず、作業能率が高まったという事実は興味深いですね。
さらに、「面接調査」の結果、労働者の行為はその感情から切り離すことができないこと、職場での労働者の労働意欲は、その個人的な経歴や個人の職場での人間関係に大きく左右されるもので、客観的な職場環境による影響は比較的少ないことがわかりました。
これら「ホーソンの実験」の結果から、次の仮説が導出されたのです。
「労働者の作業能率は、客観的な職場環境よりも職場における個人の人間関係や目標意識に左右されるのではないか」
ホーソンの実験は、知名度こそ高いものの、研究手法や結果の解釈をめぐって批判や異論も多く、評価は定まっていないようですが、中小現場のモラール(士気)を高めたい私たちにとって、参考になるのではないでしょうか?
2.人間関係
弊社では、活気ある現場づくりで重要なのは「組織の3要素」であると考えています。
この「活気」は、「やる気」とともに、儲かる工場経営の土台となるべき組織文化を作るうえで欠かせません。
しばしば、セミナーやご支援を通じてお話しているところです。
「活気」にしても、「やる気」にしても、これらなくして現場のモラール(士気)は高まりません。
モラール(士気)は上げるものではなく、上がるものであると考えるからです。
弊社では現場からやる気を引き出し、活気ある現場をつくることにもこだわります。
そして、生産性向上の仕組みづくりの主役はあくまで、仕組みそのものではなく、それらを運用する現場であり、リーダーシップを発揮して現場を現場を導くリーダーです。
したがって、生産性向上を達成するには、その仕組みづくりに加えて、その仕組みを回す人づくりが欠かせません。
中小現場での実務やご支援での経験から、これ抜きに現場の生産性は高まらないと断言できます。
「活気」に焦点を当てた時、注目すべきは「組織の3要素」。
共通の目的
貢献意欲
コミュニケーション
これら、3つです。
そして、共通の目的が現場に浸透し、貢献意欲に燃えた現場で、活発なコミュニケーションが交わされるには、現場リーダーのリーダーシップが大切です。
ですから、弊社ではリーダーとの個別面談を重視します。
現場の活気を測るためです。
チームを意識して仕事をしているか否か、つまりリーダーと現場のひとりひとりの関係が良好であることが、仕組みづくりの前提となっています。
良好な「人間関係」の有無と言い換えられるのではないでしょうか。
したがって、ホーソンの実験から導出された仮説は腹落ちします。
「労働者の作業能率は、客観的な職場環境よりも職場における個人の人間関係や目標意識に左右されるのではないか」
生産性は人間関係や現場ひとりひとりの心持ちに影響されるというのです。
100年近く前の実験から導き出された仮説が、今も説得力を持って、私たちに訴えているように感じませんか?
ホーソンの実験が対象にした作業と比べて、現場の作業は、時代も変わり、自動化も進んでいるので、労働集約的な要素は薄まって、人に依存する度合いは低くなったかもしれません。
当時の実験結果を21世紀の今日にそのまま当てはめるのは、どうかとも思えますが、意外と違和感なく、導出された仮説を受け入れられます。
技術イノベーションがあっても、その技術を操るのが「人」であるかぎり、技術進化にかかわらず、問題の本質は「人」に根差していることが多いのではないでしょうか。
3.「良好な人間関係」の構築
「人」の本質は変わるものではなく、毎日一定時間を過ごす場所が職場である以上、職場で快適に過ごしながら、力いっぱい仕事に専念したいと考えるのは、今も昔も変わらないことでしょう。
現場の集団は同好会のような楽しみのための集まりではないので、甘えや馴れ合いは論外です。
ただ、人間関係や心持ちという人間臭い部分で、生産性向上活動が成否が決まるというのも事実であることに留意する必要はあります。
人間関係が最悪の職場でチーム力を生かしたいい仕事ができるわけがないことは、火を見るよりあきらかであり、ここは無視できないということです。
現場の人間関係が悪い状態を放置してはダメだということであり、これを改善するのは経営者の仕事となります。
現場の担当者で解決きる仕事ではないからです。
例えば、今や死語となった「ノミュニケーションケーション」などは、まさに「人間関係」構築のための昔ながらの賢い方法と言えるでしょう。
若手の気質も変わりつつありますが、職場で快適に過ごし、力を発揮したいと現場が考えるのは、古今東西、不変のことですから、時代にあった「人間関係」構築方法を考えたいです。
組織の3要素のひとつである「コミュニケーション」では、特に「非公式のコミュニケーション」が重要な役割を果たすとも言われています。
生産性向上活動の土台作りとしての「良好な人間関係」の構築。
経営者として何ができるか考えてみたいです。
現場の人間関係を良好にする仕掛けを考えませんか?
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