製造現場の顧客視点
現場へ顧客のことを「知らせて」いますか?
1.知らせる
現場を動かす生産管理3本柱を切り口に生産性向上の仕組みをつくるのが弊社の仕事です。
現場から改革の狼煙をあげます。
狼煙はボトムアップです。
製造現場のあらゆる問題の原因は、仕組みの優劣、有無もさることながら、“人”に行き着くことを痛感してきました。
現場を主役に、仕事のやり方を変えます。
ですから、現場の一体化が改革をやり切るカギです。
一体化→見える化→収益化
これが改革の流れです。
弊社がご支援する仕組みづくりの初手は一体化、つまりベクトル合わせです。
方向がバラバラのベクトルを足し合わせても、互いに打ち消し合ってしまいます。
ベクトルの加算では全ベクトルの方向が揃った時に、加算結果が最大化されるのはご存じの通りです。
そして、ベクトル合わせに欠かせないのが経営者の想いであり、5年先、10年先の見通しです。
これが“共通の目標”、“大きな目的”となって、現場で一体感が醸し出されます。
こうした“共通の目標”、“大きな目的”はトップにしか掲げられないものです。
これには強力なトップダウンが欠かせません。
改革の狼煙は現場から上げたいわけですが、想いは強烈なトップダウンです。
ボトムアップとトップダウンの絶妙なバランスの上で、製造現場のあらゆる問題は解決されます。
そして、次の段階が見える化です。
目隠しされてマラソンを走り切るのは辛いのではないでしょうか?
どこまで走ったか、残りの距離はどれだけあるのか、こうした客観的で相対的な指標がないと早晩、息切れします。
見える化は現場のやる気を引き出す原動力です。
こうして初めて、収益化、つまり利益の出る改善活動、お金を生み出す生産性向上活動が可能となるのです。
あらゆることを見える化する必要があります。
したがって、見える化では、経営者は現場にいろいろなことを「知らせる」ことが必要なのです。
経営者が5年先、10年先を見通して考えていること、収益のこと、市場のこと、顧客のこと……。
生産活動の見える化は当然のこと、工場経営の見える化も外せない論点です。
知らされなければ、現場は考えようがありません。
そして、知らされれば無視もできなくなります。
2.顧客視点
現場から改革の狼煙をあげるためには、「知らせる」ことが欠かせません。
「知らせる」ことが現場の覚醒につながる事例をいくつも観てきた伊藤としては、ここを重視しています。
繰り返しますが、目隠しされたマラソンは辛いのです。
見通しを示されれば、現場もそれに向けて知恵を絞りたくなります。
「見える」からです。
目標を示され、期待されると頑張るのが現場です。
そう考えると、経営者の口から現場へ「知らせたい」ことがいろいろ出てきませんか?
その中で、上位にあがる項目は何でしょうか?
いろいろと考えられますが……。
「顧客のこと」。
優先度を上げて、「顧客のこと」を現場へ知らせたいです。
製造業に限らず、小売業でも飲食業でも、顧客あっての商売です。
したがって、多くの経営者は、現場含めて従業員全員が「顧客のこと」を念頭に置いて仕事をして欲しいと考えているのではないでしょうか?
顧客から半製品を受け取り、追加工する形態の事業を展開している中小製造企業での話です。
そこの経営者が次のようなことを話してくれました。
「顧客のことを考えれば、受け取った半製品の扱い方に、もう少し気遣いができるはずだ。ウチの現場はそこが足りない。」
1,000、2,000を超える長尺の半製品も扱っている現場です。
“雑”に扱って、キズ、破損、曲げなどの問題を起こすことが頻発しています。
現場には顧客視点を持って欲しいというのがその経営者の想いです。
そうした視点がハンドリングの質を高めると考えています。
一方、経営者のこうした願いにもかかわらず、なかなか浸透しないのが現場の顧客視点であるとも感じています。
ただ、モノづくりの現場としては、しようがない側面もあるでしょう。
小売りやサービス業と異なり、店頭ならぬ、工場へ顧客が直接に足を運ぶ機会は少ないです。
したがって、現場が“顧客”を実感を持って理解することはなかなかできません。
さらに、現場のいわゆる「2重構造」により、現場はどうしても自工程優先の部分最適化になりがちです。
役割分担上、どうしても顧客への配慮が欠けやすくなってしまいます。
従って、経営者は全体最適化につながる「顧客視点」を現場へ意識して植え付ける必要があるのです。
3.顧客に選ばれない限り儲からない
では、現場へ伝える「顧客視点」とは何か?
経営者にとっては当たり前すぎる次の事実を現場に理解させることです。
「顧客に選ばれない限りは儲からない」
どんなに競合を凌駕する高生産性で自社製品をつくろうが、圧倒的な短納期で自社製品をつくろうが、自社製品を選んでくれなければ売上に寄与しません。
そもそも、顧客が他社ではなく、自社を選んでくれない限りは儲からないのです。
あらゆる生産活動は、顧客に選ばれた瞬間から始まるものであるということを現場に知らせます。
まずは、顧客に振り向いてもらうことに全力投球しなければならないのです。
自工程のことを云々言っている暇があるなら、顧客のことを思い浮かべながら、全員一丸となって顧客の選ばれることを目指さなければなりません。
現場で汗をかいているだけではダメであり、その汗は一にも二にも顧客のためであるべきです。
現場は、顧客に選ばれるために汗をかいている……。
これが顧客視点であり、現場もしっかり持ちたい観点です。
ですから、経営者の想いを実現させるには、下記でなければなりません。
現場で汗かいて、いいモノをつくる→顧客に選ばれる→経営者の想いの実現
この3段論法となります。
決して、下記ではないのです。
現場で汗かいて、いいモノをつくる→経営者の想いの実現
当たり前と言えば、当たり前すぎる程の話ですが、「顧客のこと」を考えるきっかけとして、現場と一緒の考えたい論点です。
顧客企業の担当者と直接に会ってやり取りするうちに、顧客の顔(担当者の顔)が浮かびやすなりますね。
それまでメールや文書でしか情報交換をしてい無い状況から、フェイス ツゥ フェイスの場をきっかけに、供給側の気持ちも変わることはしばしばあります。
ちょっとした機会で「顧客のこと」を知ることは可能です。
「顧客のこと」を知るのは、工場経営の見える化のひとつであると考えています。
優先度は高いです。
現場が「顧客視点」を持てる仕組みをつくりませんか?
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