小さな組織だからこそできることに注目する
小さな組織を最大限に機能させるのために、
- スピード感あふれる事業展開
- 人財育成
この2つの観点から仕事のやり方を変える、という話です。
1.あのトヨタも変わろうとしている
中小モノづくり企業の強みは何でしょうか?柔軟性、小回り性、機動性が挙げられます。
ヒト、モノ、金などの経営資源に、多くの制約条件を抱えている中小の経営者の武器はこれらです。
変化への対応力と言い換えられます。戦艦大和よりも駆逐艦の強みです。
大量消費に対応した大量生産、造れば売れる時代であるなら、規模は圧倒的な強みとなります。
しかし、時代は完全に変わりました。
戦艦大和はスタートダッシュをしようにも、その巨大さ故に、タイムリーに動き出すことは難しいです。
また、方向転換をしようにも、意図した地点で直ぐに向きを変えることもできません。「慣性の法則」です。
組織が巨大になったことに危機感を抱き、この「慣性の法則」を打ち破ろうとしている企業があります。
トヨタ自動車です。
「大きくなりすぎたことが逆にトヨタの足を引っ張っている。」
日経ものづくり2017年1月号に紹介されている豊田章男社長の言葉です。
トヨタ自動車は2016年4月から組織面で大きな変化をしています。
新たにカンパニー制を導入しました。製品群別に7つのカンパニーを新たに発足させています。
開発や生産という従来からの「機能軸」の組織を切り分けます。
そして、各カンパニーは、商品企画から開発、生産までを一貫して担当します。
各カンパニーのトップに責任と権限を集約して、意思決定の迅速化を図るのが狙いです。
各カンパニーのトップは「ちいさくなった」自動車メーカーを経営することになります。
ただし、豊田社長はカンパニー制を導入することだけでは不十分と考えています。
豊田社長の危機感をつのらせる要因があるのです。
それは、自動車業界で存在感を増してきた電気自動車の新興ベンチャー企業の存在です。
巨大トヨタ本体から見れば、各カンパニーは「ちいさくなった」自動車メーカーです。
しかし、新興ベンチャーから見れば、各カンパニーははるかに大きな組織です。
そこで、豊田社長は2016年12月に電気自動車の社内ベンチャーを発足させました。
構成メンバーは、……たったの4人。
社長直轄の組織で、電気自動車で競合するベンチャー企業に開発スピードで負けない体制を構築しました。
電気自動車の開発ではスピード感が成功のカギを握っているようです。
2.人財育成とスピード感がキーワード
自動車部品の工場に勤務し、新しい製造プロセスを開発する責任者を担っていた頃の話です。
全くの白紙から開発を進め、1年程度の期間を経て、なんとか開発の方向性が見えてきました。
その時点で、部門長から次のように声を掛けられました。
「いよいよ、これからが事業化への本番だ。全てお前に任せるから、必要な体制を作ってドンドン進めてくれ。」
それまでは、現場メンバーも含めて2〜3人の体制でシコシコと開発業務を進めていました。
そこから、今度は、具体的な新製品の開発に繋げ、上市するまでの一連の取り組みを期待されたわけです。
当時、大いに戸惑い、試行錯誤しながら、製造設備の整備、製造体制の構築、新製品の開発、量産の立ち上げ、上梓……と進めました。
当時、多くの仲間の協力を受けることができたのはとても心強かったと共に、とても勉強になったことを覚えています。
経理的な業務については、全くの門外漢でしたが、管理会計の知識もこうした経験を通じて習得しました。
小さな組織で大きな仕事をしようとすれば、ひとりで全てをやろうというのは絶対にムリです。
多くのメンバーの協力が必要です。
そして、ここで必要なのは、誰に、何を、どのように頼むか?ということ。
そのためには、関連する知識や情報を使いこなす必要があります。
知らなければ、そもそも、外部へ協力を依頼することができないということです。
小さな組織は人を育てるのです。小さい組織で仕事を進めることが、人財育成にもつながります。
トヨタ自動車は2016年4月に、カンパニー制をスタートさせるにあたって、次のようなコメントをHPに掲載しています。
……(中略)現在の仕事の進め方は、従来の延長線上にあり、従業員や関係者の頑張りに頼っている部分も多く、また機能間の調整に時間を費やすという問題も顕在化してきていた。
今回の体制変更のポイントは、「機能」軸ではなく、「製品」軸で仕事をしていくことによって、機能の壁を壊して調整を減らし、すべての仕事を「もっといいクルマづくり」とそれを支える「人材育成」につなげていくことである。
「もっといいクルマづくり」は、豊田章男社長がことあるごとに口にしているトヨタのコンセプトです。
それと並列で「人材育成」が挙げられています。
トヨタ自動車は、小さな組織を活用して、今までにもまして一層、人財の育成に力を入れようとしています。
モノづくりは人づくりとは言いつくされてきた言葉です。
こうした当たり前のことを愚直に、しつこく、あきらめないで続けるトヨタはすごいです。
小さな組織の特徴のもう一つはスピード感。
トヨタ自動車は電気自動車を4名のメンバーで開発しようとしています。
大会議室に関係者が集まって、打ち合わせをしながら仕事を進めていたのでは間に合わない……。
現場で、その場で、即断即決して仕事を進めねばベンチャーに負ける。
トヨタ自動車もスピード感では、規模の小さいところに負けるということを感じていたのでしょう。
製造プロセスの開発責任者を担って、上梓へ向けて試行錯誤していた時を思い出してみると納得です。
実務の目の前にして、あれこれ悩んでいる人物と決断する人物が同一ですから話は早い。
話がドンドン進みます。失敗すれば、すぐに戻って、やり直せばイイわけです。
机に向かってウンウン唸っている暇があるなら、まずやってみる。小さな組織なら、これが直ぐにできます。
3.中小ものづくり企業も仕事のやり方を変える
中小モノづくり企業は柔軟性、小回り性、機動性を生かしてスピード感あふれる事業展開ができる体制です。
経営資源に制約がある分は、外部からヒト、モノ、金、情報を獲得すればイイのです。
その意味で、トヨタ自動車の組織上の大きな変革は参考になります。
さらに、昨今、何かと話題に上がることが増えている電気自動車のベンチャー企業の仕事の進め方などにも学ぶところがありそうです。
足りない資源を外部から獲得することを通じて、若手人財の育成も進みます。
やる気のある若手人財のモチベーションを大いに刺激するからです。
- スピード感あふれる事業展開
- 人財育成
この2つの観点から現在の「小さな組」織を最大限に機能させるのです。
そのために仕事のやり方を変えます。「小さいから」こそできるのです。
多くの中小モノづくり経営者にチャンスが訪れています。
必ずできます!!
経営資源が不足していることを嘆いていませんか?
小さい組織を最大限に生かす、これを考えたことはありますか?
まとめ。
「小さな」組織を最大限に機能させるために、
- スピード感あふれる事業展開
- 人財育成
この2つの観点から仕事のやり方を変える。
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