生産技術者に求められるもの|元トヨタマンの目

生産技術者に求められるもの|元トヨタマンの目

トヨタでの技術系の配属は、次の3つだ。

1.車両の設計者

ただカッコイイ車をつくるだけでなく、それをつくるにあたっても安くつくれるように設計する。

VEを生産技術者や工場技術員といっしょに行なって意見を聞く。

 

2.生産設備の設計者

工場技術員から工場現場の要望を聞く。

機械メーカーから最新の技術を聞く。

車両設計者にラインにうまく載る様な細部設計をしてもらうように要望を出す。

新型ラインの設計・発注・設置指示をすべて行なう。

 

<問題点>
トヨタの憲法……市販の機械を買ってきて、トヨタ社内でその機械にあんどんなどを設置してトヨタ式に改造する。

しかし実際は、豊田工機などは関連メーカーはトヨタ式をすべて理解しているので、それに沿った機械を特注でつくって納入してくるので、非常にコストの高い機械をトヨタは購入することになる。

憲法にもどって、自分で機能をつけて安い機械にしなければならない。

 

3.工場製造部の技術員

現場での改善活動への技術的後押しを実施する。

毎月の生産変動で端数工数がでないように、セルライン等の移動を速やかに行なう。

新型ラインはすべて生産技術者がつくってくれるので、工場技術者はユーザーの立場である。

工場技術者は現場要望をしっかり生産技術者に伝えておかないと、現場の意に沿わないものを納入されかねないので連絡は密にしている。

工場技術員と生産技術者との異動は結構行なわれる。

現場が分からないと、設備の設計がうまくできないからだ。

 

トヨタ生産方式の進化順序

1.機種別配置

2.工程別配置

3.1個流し

4.自主点検・順次点検の実施

5.ポカヨケのラインへの設置

6.シングル段取化

7.機械が自ら異常を感知して、自ら停止するとともに、あんどんを点灯して人を呼ぶ(人偏のついた自働化)

8.平準化仕掛け

9.トヨタ式の能率管理によって毎月の生産変動での自工程の必要要員数を知り、1人工を追求できるように調整する(目のない少人化)

※8までの改善をどんなに行なおうと、9まで到達して工数のムダを排除できなければ、実際に儲からない。

※工数のムダを排除して儲けるのだから、作業者にとってみれば、労働強化は一切ない。

 

生産技術者と工場技術員は、このトヨタ式のすべてを理解しあった上で、いろいろな協議を行なう。

私のみたところ、TPS(TOYOTA PRODUCTION SYSTEM)はすでにGPS(GROBAL PRODUCTION SYSTEM)といっていい位置にあると確信するに至った。

どの企業の生産技術者も、まずTPSを徹底的に学習していただきたいと思う。

そして所属する企業が、TPSのいったいどの位置にあるのかを把握することから始めることが必要だと思う。

トヨタは成るべくして世界一の製造企業になったと思う。

日本の他の一流企業も悔しいかも知れないが、一度徹底的にTPSを研究してみてほしい。

そうしないと中国や韓国企業にかならずやられてしまう。


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。