電鋳金型のKTX株式会社に儲かる仕組みを学ぶ
独自技術の地道な研究開発とフェイス・ツゥ・フェイスのアナログ的な営業活動の両輪を回し続けて成長する、という話です。
1.KTX株式会社の技術力
KTX株式会社は自動車の内装品に使う金型で世界トップシェアを誇っています。
金型と言っても一般的な切削加工や放電加工で製作する方法とは異なります。
同社は電気鋳造による金型製作で独自のノウハウを持ち、樹脂を材料にして本革のような模様や質感を再現できます。
本社は愛知県江南市にあり、資本金9,390万円、従業員約180名、売上高は約50億円の企業です。
1965年に設立、仏壇の金具製作からのスタートでした。
1967年に銅・ニッケル電鋳槽を設置して研究を開始しています。
同社は、技術の柱である電気鋳造を、50年にわたる研究開発を通じて磨き続けてきました。
研究開発型企業と言えます。
電気鋳造は電気メッキの原理を活用しています。
マスターに厚いメッキ被膜つけ、電気鋳造部分を剥離します。
そして、剥離した電気鋳造部分を金型のキャビティーとして使用する。
一般的な金型で成形する場合と比べて、形状や表面の細かく、複雑な凹凸を精巧に表現させられます。
同社の主力製品は、表裏に無数の穴が開いた「ポーラス電鋳金型」。
この金型で本革の質感を忠実に再現した樹脂製シートを製造できます。
野田太一社長は次のように語っています。
「何十年ものノウハウが必要。他社にはまねできない。」
(出典:日本経済新聞2016年10月24日)
2.KTX株式会社の営業力
金型業界では、国内事業の苦戦が伝えられて久しいです。
価格競争、ノウハウの流出、顧客の海外進出などの影響を受けて、国内金型メーカーは大手も含め事業再編の流れにさらされています。
ノウハウの塊である金型を商売のネタする事業形態は、いろいろと浮かんできます。
浮かんできますが、大きな成功を収めている事例は少ないように思われます。
そうした金型業界の中で、同社の取り組みは参考になります。
現在は海外売上高が全体の半分以上を占めています。
海外取引が広まるきっかけとなったのは米フォード・モーターによる採用でした。
1990年代後半、同社がグローバルに調達を見直した時のこと。
世界中の乗用車のインパネを調査したところ、同社の金型を使った製品の品質が優れていたようです。
そこで、同社の「ポーラス電鋳金型」が知られるようになりシェアを拡大していきました。
売り込まずに、新規顧客が開拓できたということです。
優れた製品自体が一流の営業マンと言われる所以です。
同社は独自技術を売れる技術にすることが上手であると感じます。
技術開発にお金をかけて成功すれば、必ず事業が成功するかと言うと、残念ながら事情はそれほど単純ではありません。
結局はお客様に選ばれなければなりません。
その点、同社では海外の取引先を含め、原則、商社を通さず全て自社社員が対応する直接取引としています。
野田社長は次のように語っています。
「顧客の要望をきちんと把握し、当社としてどこまで受け入れられるかなど正確にやりとりする狙いがある」
(出典:日本経済新聞2016年10月24日)
代理店などを通じた間接的なやりとりでは生きた情報は入ってこないということでしょう。(出典:日本経済新聞2016年10月24日)
3.儲かる仕組み
フェイス・ツゥ・フェイスの昔ながらのアナログ的な営業活動。
これが地道な研究開発の成果を稼ぐ力に変えるポイントのひとつであるようです。
また、放電加工の高度化もあり、電気鋳造で技術的な優位性を確立することは必ずしも容易なことではないと推測されます。
しかし、コア技術に焦点を当てて地道に継続することで、独自のノウハウを築くことができるのも事実です。
自社工場の強みを製造部隊のみならず、営業部隊も理解していることは重要なことです。
同社では営業職としての新卒採用は行っていません。従業員全員が工場勤務の経験者です。
つまり、営業担当者は全員、技術面の要望や質問に即答できるということです。
こうした営業体制も同社独自の強みです。
- コア技術を地道に磨き続ける
- 直接、顧客と対面し「売れるモノ」を肌で知る
- 自社の強みを理解したうえで顧客とやり取りする
同社のコア技術は、上記の3つによって儲かる力とつながっているようです。
自社のコア技術の強みを全員で共有できていますか?
コア技術で儲かる仕組みができていますか?
まとめ。
独自技術の地道な研究開発とフェイス・ツゥ・フェイスのアナログ的な営業活動の両輪を回し続けて成長する。
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