トヨタの研修|元トヨタマンの目

トヨタの研修|元トヨタマンの目

工場では不具合が発生すれば、その対策が完了するまで関係者は帰宅できない。

規模の大きな不具合になれば、それこそ徹夜対応になる。

そのような異常事態にも、果敢に対応することができるような人材を育てるために、トヨタの社内研修は非常にシビアだ。

 

例えば工場技術員へTPS研修がある。

これは指定された現場へ研修生がチームで入り込み、問題点を見つけ出して、その問題解決を行なうもので、1泊2日で行なわれる。

1日目にいろいろ汗をかいて対応策を考え実行する。

そして2日目の朝に、その現場の製造課長に成果の発表を行なわなければならない。

1日目の夕食にどういう風の吹き回しか、豪華な弁当が支給される。

ドケチのトヨタが豪華な弁当を支給するなど考えられないであろう。

これには恐ろしい意味があるのだ。

「こんなに豪華な弁当を食わしたのだから、今夜は思う存分発表資料を作れるよなあ」

ということで、

「徹夜してでも発表資料を完成させて、明日の朝の発表に間に合わせろよ」

という真意なのだ。

私もこの研修の際の夕ご飯の弁当は、切ない気持ちで食べた記憶がある。

その他のいろいろな研修も大体そんなパターンで発表が設定されているため、「あああ、あの研修でほとんど徹夜だったよ」といった言葉をよく聞いた。

 

ところで、韓国企業の研修は結構アットホームな感じだ。

お菓子やジュースが研修室の入口に置いてあり、研修生が自由にそれを持ち込んで飲食をしながら、講義を聞くといった感じだ。

韓国企業の人が、名古屋に来て、トヨタなどを見学して、さらにセミナーを受講して帰ることがよくあるが、日本では研修中の飲食は禁止される。

そのことが不満で、通訳者が文句を言われることがよくあるそうだ。

その際、通訳者は「日本での研修はこれが常識なんだ」と一生懸命説明しなければならないそうだ。

どうせ研修を受けるなら、気合を入れた方が効果が上がるのではないか。

 

実は、今日と明日、韓国の某電子メーカーへの研修を東京で行なっている。

みんな、日本人同じように、きちっと受講してくれている。


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。