作業を分解してみる|元トヨタマンの目
<作業を分解すると>
1.主作業……有用作業の中で、正規的に毎回繰り返される作業
①主体作業……工程で製品を作り上げていく作業
●加工……切削・成形・溶接等を直接行なう作業
●検査……標準と現物との比較を行なう作業(現物をゲージで測定する作業)
●運搬……品物の位置を動かす作業
●停滞……停滞する品物の整頓作業
②付随作業……品物の取付け、取外し、スイッチ操作
2.余裕……不正規に発生する
<「①主体作業」の加工、検査、運搬、停滞にていての考え方>
●加工……付加価値を高める
●検査……付加価値は高めない→原価のみを高める→ムダである→排除しなければならない
●運搬……付加価値は高めない→原価のみを高める→ムダである→排除しなければならない
●停滞……付加価値は高めない→原価のみを高める→ムダである→排除しなければならない
「停滞」を排除しなければならないということは万人が理解できると思う。
しかし「検査」や「運搬」はそれ自体が立派な存在意義のある作業であると誰もが思いがちである。
トヨタはこの「検査」や「運搬」についてもムダであり最終的には排除すべきものであるという明確な指針を示した。
これにより「検査」は、従来の「不良を見つけ出す検査」から「不良を作らせない検査」へ進化させられていった。
このために「ポカヨケ」が活用された。
「ポカヨケ」により従来工数的に抜取検査しかできなかったものを、圧倒的に少ない工数によって「不良=0」を目指す全数検査が可能になった。
これにより「不良を発生させる条件そのものを改善する」ことが可能になって、不良を発生させないようにできるようになった。
工程の中にいろいろな工夫を施せば、例え不良が発生しても工程内で発見され、それはすぐ作業員のしるところとなり対策が施される。
こうなれば「検査」自体がいらなくなる。
次に「運搬」は、1個流し・ライン化の進展により機械を工程順に近接させて並べることにより、そこを1個ずつ加工されながら移動していくようにした。
これにより「運搬」排除されることとなった。
しかし工場間運搬や企業間運搬は現実的に必要でゼロにすることはできない。
だがこの際に「運搬は本来はないにこしたことはない」という基本的考え方が頭の中に確固としてあれば、「それでは1つの工場で全部作ってしまおうか」というような発想が生まれてくるのである。
トヨタはトヨタ生産方式として、ものづくりについての考え方をすべて「憲法」化した。
具体的にいえば「このことはやってもいいことです。このことはやってはいけないことです」ということが、誰にでもいつでも分かるということだ。
トヨタの工場で長年仕事をして非常に大変だったが、トヨタ生産方式に則ってすべてが動いていたため、上司によって言うことが違うということが一切なかった。
その点でのフラストレーションはなかったのでよかった。
(実はこのフラストレーションが従業員を一番苦しめるのだ、ということがトヨタを辞めていろいろな会社をみて分かった)