喬君(キョウクン)からの教訓(キョウクン)|元トヨタマンの目
喬君は大連の大学の日本語科を出た秀才だ。
大学を卒業してから、ある大手日系企業の中国工場に就職した。
その時はまだその工場は操業を開始しておらず、立ち上がり準備を行っていた。
主に作業標準や品質チェック標準などを中国語に訳して教育を行っていた。
そのことに2年ほどもかけていたそうだ。
しかし現在の会社は中小の日系企業だ。
その会社は、日本では優秀な職人がすべてうまくやってしまっていたので効率が追求できた。
中国進出に際して、中国人の職人を養成することにした。
しかしやはりそれは無理な話で、やはり不良なども多く出てしまうし、増産もきかない。
不良が発生してしまった場合、徹底的に原因を追究して、その原因が特定できたら二度とそれが発生しないように、品質チェック標準に記入しておくのだ。
こうすれば再発防止が図れる。
結局、この会社もこれから作業標準や品質チェック標準を整備していって、「脱職人」を目指すことになった。
私が一生懸命に幹部を説得したのだが、喬君も自分の経験として語ってくれた。
喬君はその実施責任者になってもらった。
彼なら前の会社の知識も十分に発揮して、いい仕事をしてくれると思う。
具体的な方法としては、中国人の班長クラスからヒアリングをして、彼らが新人に教える場合のすべての言葉を紙に落とすようにする。
彼らの頭の中にあるものを全部吐き出させるということだ。
しかしヒアリングする日本人も機械加工の専門家でないとできない。
この専門家が極めて少ないのが問題だ。
したがって、雛形をつくって、それをベースに中国人の班長に自分で書いてもらうようにお願いした。
一応引き受けてくれた。やはりそれは彼らにとっても、これなら新人教育に使えると思ったからではないだろうか。
その上で、その詳細な手順項目の所要時間を計る。そうすれば現場はもっと有効にこれを活用できる。
この時間計測作業を喬君にお願いする。
そしてこれが出来上がった上で、加工の仕掛け順序を、生産管理係が事務所で大きな紙に書いて検討する。
このような詳細なデータがあって初めてこれができるのだ。
今まではすべて現場任せだった。
現場任せだとさぼられても分からない。
そして、さらに生産管理係はラインバランスがとれる部品郡を見つけて、1個流しをトライするのだ。
ラインバランスさえとれれば、1個流しが可能になる。
このように、原単位さえきちっと整備すれば、改善がどんどん進む。
しかしこの原単位をおろそかにしたまま、仕事だけをどんどん進めてしまっている会社が実に多い。