中小現場では組織的にイノベーションを起こす
中小現場ではイノベーションを起こせないと思い込んでいませんか?
1.イノベーションを組織的に起こす
イノベーションは自然発生的に起きるものではありません。
イノベーションは起こすものです。
ですから、イノベーションを起こせる人材が必要となります。
イノベーションを生み出すにはイノベーターがきちんと「得」をする仕組みも必要です。
自律性と有能性に注目した仕掛けづくりも欠かせません。
技術で戦う世界で存続・成長するためにはイノベーションが必要だと、多くの経営者は理解しています。
その一方、現場でイノベーションを実現できない悩みに直面している経営者も多いです。
中小現場では経営資源上の制約条件が少なくありません。
「ウチのような現場でイノベーションが起きることを期待しても無理だ……」
大手企業と比較してヒト、モノ、カネの面で不利な状況にあることを踏まえるとそうなります。
もし、イノベーションに次のような要因が不可欠であるならそうかもしれません。
- カリスマ性を持った特定の優秀な企業家としてのリーダーシップ
- 天才的な科学者による画期的な発明
多くの人材を抱えている大手の方が確率的にもイノベーションを起こすには有利です。
確かにイノベーションが特定の人物の登場をきっかけに起きることはあります。
ただし、そうしたケースのみではありません。
特定の人物に依存せず、組織的にイノベーションを起こすことは可能です。
イノベーションを起こすためにもやり方があります。
大手で生み出される多くの成果は組織やチームで獲得されているのです。
「組織」や「チーム」に注目です。
中小現場でも、大手と同様に、「組織」や「チーム」でイノベーションを狙えます。
中小には、大手にはない機動力や柔軟性があるのです。
これらを生かし、組織力をもって、計画的にイノベーションを起こします。
2.どのように組織力を生かすか?
組織力の生かし方がポイントです。
自ら現場へ出て試行錯誤の研究開発を進める経営者がいます。
先頭に立って次世代を背負う新製品や新技術を開発したい。
経営者としての「熱い」想いです。
この経営者のモノづくりへのこだわりや想いを組織的な活動とリンクさせます。
「継続性」を重視した研究開発活動が鍵です。
コア技術を徹底的に見極め、コア中のコアを地道に深耕するのです。
留意点が2つあります。
ひとつはコア技術を見誤らないこと。
もうひとつは、見極めたコア技術をしつこく、継続的に技術を掘り下げること。
後者では、地道な研究開発活動が求められます。
こうした地道で継続的な研究開発がイノベーション成功のカギとなるのです。
一橋大学准教授の清水洋氏は次のように説明しています。
米スタンフォード大学のポール・ローマー教授らはイノベーションがイノベーションを呼ぶプロセスを明らかにしました。
通常財なら、そこへの投資を進めると、得られるものは徐々に減っていきます。
しかし研究開発は次々と新しい機会を見出し、研究開発への投資のリターンは減少しないと捉えました。
これは、研究開発で生み出された知識は後続の研究開発の重要なヒントになるからです。
知識は、多くの人が同時に使っても目減りしないという非競合性があり、多くの企業がその知識で新しい研究開発ができるのです。
(中略)
一度、新しい知識が生み出されれば、それを多重利用するのにほとんどコストはかかりません。
知識の蓄積が増えれば増えるほど、加速度的にイノベーションが生み出されていくのです。
(出典:日本経済新聞 2016年2月3日)
深掘りすれば、深掘りする程に知識どうしがネットワーク化して有用性が高まります。
そして、その知識は共有されると、さらに深耕される機会を得るのです。
深耕された知識から技術革新の芽が生まれます。
コア中のコアに焦点を当て、計画的に、地道に、継続的に研究開発を進めるのです。
25年間に渡る工場勤務を通じて、この「継続的な研究開発」の重要性は強く感じています。
会社の大きい、小さいは関係ないです。
大手企業ばかりではなく、小規模の現場でも実践できたからです。
中小現場の管理者をやっていた頃の話です。
2年に渡り地道に継続したテーマがありました。
鉄鋼製品への防錆方法です。
錆発生を予測する方法の確立に目途をつけ、新たな防錆手段を標準化しました。
「錆」を科学的、工学的にとらえて、じっくり取り組んだ成果です。
現場リーダーと二人三脚で地道に取り組みました。
8名程度の小さな職場です。
科学的な目と継続する地道な姿勢さえあれば、必ず答えが見えてきます。
モノづくりは工学であり科学だから当然のことです。
また、大手のエンジニア時代も加工技術や材料技術で成果を出すことができました。
やはり、特定のテーマを継続して取り組んだ結果です。
そもそも、研究開発チームの多くは、数人で構成されているにすぎません。
研究開発初期でのチームの規模は会社の規模にかかわらず同じようなものです。
- 開発チームが焦点を絞って、継続的、計画的に研究開発を進める。
- コア技術の深耕を図る。
- そこで得られた知見を現場で共有して、さらなる深耕への手がかかりを得る。
ここに至るまでの組織体制には大手も中小も大きな違いはない場合が多いのです。
これは注目に値します。
現場の掌握度や機動性を踏まえると、かえって中小現場の方が動きやすいくらいです。
実際、そう感じました。
ですから、中小現場でも、イノベーションを目指した技術開発や製品開発に取り組むのです。
現場リーダーを中心に地道に継続します。
試行錯誤を継続することで、モノづくりの勘所やキモが見えてくるはずです。
そうして得られた情報を現場の全員で共有していきます。
先の中小現場では取り組みの結果を、朝礼時に都度、他の現場メンバーへ伝えました。
共有されることで他メンバーからのアイデアも引き出しやすくなります。
知識のネットワーク化が強化されるのです。
組織的な取り組みのキーポイントは「情報の共有化」です。
逆に言うと、情報が共有されていないと、現場は自発的に「考える」機会を失います。
ウチの現場は……という経営者に限って、現場へ情報をオープンにしていないケースが多いです。
知識や情報を与えずして何を考えろと言っているのでしょうか。
イノベーションには必ずしも大規模な研究開発体制が必要である、というわけではありません。
- コア技術を見極めて、深耕強化の取り組みを地道に継続すること
- 得られた知識や情報を現場全体で共有化し新たなアイデアが引き出す機会を増やすこと
この2つです。
少数精鋭の筋肉質という強みを生かし、組織的にイノベーションを狙います。
モノづくりの醍醐味を味わえます。
現場発のイノベーションを目指したいです。
イノベーションは組織的に起こす仕組みをつくりませんか?
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