付加価値額と人件費との相関関係
モノづくりの価値連鎖の構造を理解していますか?
1.モノづくりは価値の連鎖
現場には価値を生み出す2つの機会があります。
- 付加価値額を生み出す機会
- 工程間の擦り合わせで化学反応を生み出す機会
製造業では他の業種よりも、価値を生み、拡大させる機会が多いと考えています。
現場には「価値の連鎖」があるからです。
生産ラインでは前工程の価値が次工程に組み込まれます。
そして次の工程は、その前工程の価値に自工程の価値を組み込みます。
各工程で工程独自の価値を生み出し、ライン全体でそれらの価値を累積していくのです。
つまり各工程内には価値を生み出す連鎖があり、それが隣の連鎖と繋がります。
モノづくりとは「工程毎の価値連鎖の連鎖」という、大きな価値を生み出すシステムです。
上流から下流へモノが移動するに従って、価値が累積されていきます。
ですから累積された価値がいっぺんに水泡に帰すというリスクには留意しなければなりません。
下流工程で発生させる不良には注意を要します。
また上流で発生した不良品を下流へ流すと、無駄なコストが加わります。
不良品は可能な限り発生した工程で検出し除去しなければなりません。
価値が連鎖しているシステムでは、不良品を下流工程へ流さないことです。
不良対策の目的は様々ですが、不良品発生による損金低減を最優先に取り組みます。
モノづくりは「工程毎の価値連鎖の連鎖」という、大きな価値を生み出すシステムです。
価値が累積されて大きな価値を生み出すことができます。
その一方で、負の価値も累積するリスクがあるのです。
したがって、部分最適の視点のみでは不十分であり、全体最適の視点が欠かせません。
自社工場の生産ラインで価値を拡大させるメカニズムを整理し理解してください。
「工程毎の価値連鎖」の連鎖という大きな価値を生み出すシステムが見えてきます。
2.なぜ価値拡大に基づく成長路線を描くのか
現場では常に全体最適の視点を持って価値の最大化を図ります。
日々の生産活動で付加価値の最大化を図る一方、長期的な視野では、価値拡大の成長路線を描くのです。
これは企業の健全な存続と成長には必要なことであると考えています。
なぜなら、成長路線を描くことが、現場から「持続するやる気」を引き出すことにつながるからです。
成長路線は現場に働きがいを感じさせます。
ところで、現場に無理をさせたくない、ノルマを課して負荷をかけたくない、と考える経営者もいます。
現場のことを「思いやる」という点では素晴らしいですが……。
こうした想いは、必ずしも現場へプラスに働くとは限りません。
経営者がこう考えると、事業は原則、現状維持、身の程に合った事業の継続が事業方針となります。
現状維持で現場のやる気を引き出し、動機づけを図ることができるでしょうか?
現状維持では、イノベーションを引き起こす土壌は醸成されにくいです。
現場は指示された業務を、納期どおり滞りなくこなすことにのみ注力します。
そもそも全社目標自体が「現状維持」です。
改善活動が形骸化する恐れも高くなります。
知恵を絞り、試行錯誤を重ね、仲間と連携して頭に汗をかきたくなる雰囲気は生まれません。
組織的に挑戦する経験を積むことなく時間ばかりが経過する現場となってしまいます。
こうした現場で幅を利かせるのは、所属している時間の長さだけです。
外部からの新鮮な活力が生かされることはありません。
当然のことですが、従業員の豊かな成長を願わない経営者はいません。
経営者は皆さん、可能ならば、地域や業界の平均を少しでも上回る給料を実現させたいと考えます。
その一方で、工場は存続させないとならない。
こうした狭間で経営者の方は苦労しています。
ですから、現場の豊かな成長を実現させたいのです。
そこで、現状維持ではなく価値拡大の成長路線を掲げます。
価値拡大の成長路線では仕事が未来志向となります。
その結果、現場では働きがいを感じる機会が増えることでしょう。
5年先、10年先の見通しに沿って、全社目標が設定され、個人目標も決まります。
自分の仕事の成果が全体の利益へどのように貢献するか実感できるようになるのです。
仕事そのものに面白さを感じ、達成感を味わうこともできるでしょう。
動機づけが図られます。
その延長で、いわゆる外発的動機付けと言われる給料など報酬面での期待感も高まります。
内発動機付けの延長で外発的動機付けも高まることで引き出されるやる気は強力です。
3.付加価値額と人件費・労務費の相関関係
価値拡大路線を描けば、動機付けを2段階で強化することが可能です。
1)仕事そのものにやりがいを感じ、動機づけが図られる
2)豊かな成長を実現させ給料の面でも評価される可能性を感じ、動機づけが強まる
一般的には1)項の動機づけでも十分な成果を生むことが可能とされています。
が、そこへ2)項が加われば、仕事が加速されることにも配慮したいです。
ただし、労務費・人件費の原資確保と会社経営との両立に必要なものがあります。
付加価値額の拡大です。
無い袖は振れません。
下記は1人当たり付加価値額と1人当たり労務費・人件費の相関を表した散布図です。
製造業、小売業、宿泊業・飲食サービス業の3つの業種を対象にしています。
(出典:中小企業の財務指標 中小企業診断士協会編から作成)
ここでの付加価値額は「中小企業の財務指標」(中小企業庁)の定義によっています。
付加価値=労務費+減価償却費(以上、売上原価)+人件費+地代家賃+減価償却費+従業員教育費+租税公課(以上、販管費)+支払利息・割引料+経常利益
各業種で企業規模毎に分類し4点プロットしています。
企業規模は5人以下、6~20人、21~50人、51人以上の4点です。
緑色楕円内が製造業の分布、青色楕円内が小売業、赤色楕円内が宿泊・飲食サービス業。
従業員数には正社員に加えてパート、アルバイト、派遣社員も含んでいます。
1人当たりの付加価値額の規模に応じて、1人当たりの労務費・人件費が決定されています。
なお、グラフの傾きは付加価値に占める労務費・人件費の割合、つまり労働分配率です。
3つの業種では、ほぼ一定となっています。
労働分配率おおよそ70%台です。
国内中小企業では、利益と人件費・労務費はこのあたりでバランスしていると考えられます。
したがって、現場へ少しでも多くの給料を支給したいと考えるなら、やるべきことが見えてきます。
付加価値額の拡大です。
製造業は、1人当たりの付加価値額と人件費・労務費の相関が上位に分布しています。
モノづくり業界の特性を踏まえて、さらに上位へ位置づけされるよう付加価値額の拡大を図りたいところです。
モノづくりとは「工程毎の価値連鎖の連鎖」という、大きな価値を生み出すシステムです。
成長する機会を創出しやすいと言えるのではないでしょうか?
小売業やサービス業にはない製造業ならではシステムなのです。
現場では未来志向の価値拡大成長路線を掲げてやる気を引き出します。
全体最適化の視点で価値拡大を図る仕組みをつくりませんか?
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