警告書が来たらどうする!(4)

警告書が来たらどうする!(4)

4.「警告書」の内容を検討しよう!(その2)

警告書

前回の説明の続き「(ⅳ)「求められている行動」はなんと書いてありますか?」の詳細を説明をします。

 

求められている行動(権利者側からすれば求めている行動)に応じて、対応すべき緊急度、重大度が変わります。

求められている行動には、警告書を受け取った側にしてみれば、素直にその求めに応じることはできないという内容も当然に含まれることもあるでしょう。

更には、正当な権利主張(言いがかりではない要求)であったとしても、権利(特許権など)に見合わない過大な要求であることも考えられます。

この判断は特に高度なスキル・知識が必要です。

何度も書きますが、迷った場合は、速やかに専門家に相談されることをお奨めします。

 

さて、この警告書で「求められている行動」ですが、大きく分類すると、以下の4つの場合にわけられるかと思います。

A.回答(話し合いの機会)

B.侵害の事実の確認

C.権利(特許など)の許諾契約

D.製造中止、販売中止、〇〇の使用の中止

 

A.「回答(話し合いの機会)」を求めている場合

例えば「〇月〇日までに回答なき場合は、法的手段に訴える場合があります。…」等の文面の場合には、何かしらの回答を求めています。

⇒警告書を受け取った側の対応は、回答書を作成する、もしくは、回答のための話し合いの機会を持つ準備がある旨を相手に伝えることがまずはとるべき対応です。

 

B.「侵害の事実の確認」を求めている場合

例えば「貴社の販売している〇〇〇という製品は、弊社保有の特許第*******号に係る権利を侵害していると思われます。本書は、記者に対して権利侵害の事実の確認を求めるものです。」等の文面の場合には、侵害の事実の確認を求めているます。

⇒警告書を受け取った側は、侵害の事実の有無を確認することが求められていることとなります。実態として侵害しているか、していないか、によって対応は異なりますが、いずれにしても調査報告書や侵害の事実に関する回答書という形で対応する事となります。

 

C.「権利の許諾契約」を求めている場合

例えば「当方には特許第*******号に関する特許の実施許諾の準備があります。」等の文面がある場合には、特許などのライセンス契約(許諾契約)を結ぶことが真の目的となります。譲歩案が提示されているとみることもできます。

⇒この場合は、権利侵害の事実を前提に「ライセンス契約(許諾契約)」を行うことで「争わない」という提案がされていることになります。この手のメッセージが添えられている場合は、特許などの知的財産を盾に争うつもりはなく、ある意味において友好的にライセンス交渉を始めるきっかけとして、警告書という形をとったと捉えてもよいのかもしれません。

 

D.「製造中止」、「販売中止」、「〇〇の使用の中止」など権利侵害行為の中止を求めている場合

例えば「貴社の販売している〇〇〇という製品は、当社の特許第*******号に抵触していると思われます。当社は、当該特許権に基づいて貴社の〇〇〇の製造・販売の即時停止を求めるものです。」等の文面の場合、警告書の送り主は、「製造・販売の中止」を要求しています。

⇒既に販売している製品について、製造・販売の中止を要求していますので、かなり強気です。この手のメッセージの場合は、本来の意味での「警告書」であると言えるでしょう。慎重に且つ迅速な対応をせねばなりません。

 

ここでは、A~Dにの4分類に分けて説明をしましたが、一般的にはそれぞれの内容を組み合わせて「警告書」が構成されます。

警告書を受け取った後は、多くの場合、様々な手段による交渉が行われます。

交渉事というものは1回のやり取りで全てを終わらせる必要はなく、相手とのやり取りを重ねて、少しずつ折り合いをつけていくものです。

ゆえに、1度受けた警告書の内容の全てに応える必要はありません。

具体的には、分類Aの文面が添えられているのであれば、少なくとも、1回目の応答は、「相手側からの警告を受け取った旨を伝えること」と、「今後、誠意ある対応を取る準備があること」を伝えるという求めに応えてあげてください。

これにより、相手からの要求に少なくとも1つは誠意ある対応をしたこととなり、警告状の送り主もまずは安心することでしょう。

それから、「次回以降の話し合いでお互いの今後について話し合いを進めていこう」という相互の努力についてメッセージを添えれば、さらなる交渉に繋げていくことができます。

 

次回は、「1回目の回答書(応答)」の書き方について説明いたします。

出典:『警告書が来たらどうする!(4)』(発明plus〔旧:開発NEXT〕)


弁理士。コスモス国際特許商標事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。知的財産権の取得業務だけでなく知的財産権を活用した製品作りの商品開発コンサルタントを行う。知財マッチングを展開し、ものづくり企業の地方創世の救世主として活躍している。著書に『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)、『理系のための特許法』(中央経済社)等がある。 特許・商標の活用を応援するWEBマガジン「発明plus Web」( https://hatsumei-plus.jp/ )を運営している。