カイゼンとの連携で品質管理・改善の仕事を進める

カイゼンとの連携で品質管理・改善の仕事を進める

改善活動と品質管理を連携させる

貴社では品質管理の業務が組織的にやられていますか?属人的になっていませんか?

1.TQCの基本は、人に質を作りこむ込むこと

「カイゼン」の著者である今井正明氏は、TQCにおいて人間の質こそが、第一の関心事であると語っています。

 

TQCの基本は、人に質を作りこむ込むことであり、それができる会社は、すでに、高品質の製品を作る道の半ばまで来たようなものです。

さらに、人に質をつくり込むことを、具体的に説明しています。

 

人に品質をつくり込むということは、カイゼン意識を持てるよう手助けをすることである。

会社には、ファンクショナルナル(機能別)な問題が満ち満ちており、社員がこれを見つけ出せるように手を貸さなければならない。

ついで、見つけた問題を自分で対処できるように、問題解決の手法について、訓練を施さなくてはならない。

いったん問題が解決されると、再発防止のために標準化をはかることが必要になる。

この終わりのないカイゼンのサイクルを繰り返すことにより、人はカイゼン意識を持ち、自分の仕事の上でカイゼンを実施するノウハウを身につけるようになる。

経営者は社員に質をつくり込むことにより、自社の体質改善をはかることができるが、これは訓練と確固たるリーダーシップがあってはじめて可能となる。

(出典:KAIZEN 今井正明)

・人に質をつくり込むこととはカイゼンマインドを植えつけること。

・そうするためには訓練と明らかな意図が必要であること。

人は自然には育たないということです。

2.品質管理・改善と「カイゼン」は表裏一体

品質活動の目的を、不良品を流出させないことから、お金を残すことへ拡大させたとき、TQCのイメージが浮かびます。

そしてTQCの本質は、カイゼンを自主的に廻せる人づくり(人質管理)にあるのです。

このように考えると、現場での品質管理と「カイゼン」は表裏一体です。

 

品質管理業務を、「クレーム対策」としか考えてはいないでしょうか?

その現場の品質に関する活動は、概ね”事後処理”に留まっている可能性があります。

さらに、その現場には、改善活動を定常的に進める仕組みが存在していないと考えられます。

形式的な品質保証部門、品質管理部門が存在しているだけ。

その実態は、トラブル処理班になっているのです。

 

工場、現場としては、そうした部門を形式的にでも作っておけば、ひとまず安心です。

しかし、発生したトラブルを、なんでもかんでも廻される担当者は、たまったものではありません。

日常的に、「なんで、俺(私)が・・。」という気持ちになってしまうことでしょう。

これは担当者が悪いのではなく、そのような気持ちへ至らせる仕事のやり方(やらせ方)が悪いのです。

仕事の仕方が組織的ではなく、属人的になっています。

 

このように、品質管理や品質保証の業務が、定着しない、仕組みがない、という問題を抱えている中小現場は多いと感じています。

 

そこで、品質管理や品質保証の業務と改善活動を一体化するのです。

例えばクレーム処理なども、改善活動の一部と捉えます。

改善活動のチームが中心に進めるのです。

 

属人的な要因を極力排除し、仕組みで組織的に対応します。

そして、改善活動の成果を、標準化によって定着させるのです。

一人一人の仕事のやり方に依存していたら、外部環境の変化へついていけません。

それ以上に、担当者が疲弊します。

 

世の中は複雑化している上に、高度化しています。

スピードも求められます。

品質管理業務でも、チーム力、総合力が問われる時代になっています。

そもそも、担当者一人の頑張りで乗り切れる業務でもありません。

3.仕組みを構築し難い品質管理・改善の業務

とは言え、こうした事情を頭で理解していても、日常の生産活動で手が一杯、

大手企業と異なって、経営資源に制約のある中小の現場で品質管理を組織的に推進する体制を構築することがなかなかできない・・・・・。

 

限られた経営資源で、現場を廻す経営者はたいへんです。

しかし、だからこそ、仕組みが必要であると考えます。

経営資源に制約があるからこそ、仕組みで効率よく仕事を廻せるようにするのです。

 

制約があるから、仕組みをつくれない、ではありません。

制約があるからこそ、仕組みをつくり、楽に事業を展開できる状況を目指すのです。

鶏と卵の話のようですが、まずは、仕組みをつくるところから取り組んで下さい。

 

そこで、現場での品質管理業務と改善活動をリンクさせます。

具体的には、過去に発生した社内クレーム、社外クレームを対象に改善活動を展開するのです。

発生当時は、歯止めを考えたが、いつのまにか忘れられているテーマも見えてきます。

過去のクレーム案件とその対応実績から、品質クレームを未然に防ぐ改善活動が可能です。

同一職場で発生するクレームの発生原因は、さまざまですが、流出原因は、見逃しか、そもそも観ていなかったことです。

したがって、同一職場でのクレームには必ず共通点を見出せます。

 

新規のトラグルでも、過去の案件から学べることは多いのです。

ですから、品質担当者がひとりで走り回る必要もありません。

改善活動との連携で品質管理の仕事を進めるのがキモです。

 

あえて、改善テーマとして先行して取り上げるイメージです。

社外クレームや社内クレームをきっかけとするのではありません。

日常的に取り上げることで、トラブルへの対応力も高まります。

4.どのような業務でも最後は人に品質をつくり込むことが課題

そこでは、改善意識を持てるよう手助けをすること、人に品質をつくり込むことも課題となります。

改善活動と品質管理を連携させる仕組みを、構築したくても、それを実践できる人財がいなければ画餅に帰します。

儲かる工場経営は人財次第です。

意図をもって、計画的に、人財育成を進めるのは経営者の最重要課題です。

 

会社組織で人財を採用し、事業を運営しているということは、そもそも、組織力を活用する意図があるということです。

それならば、その組織力を最大化する施策は絶対に欠かせません。

人財は自然に育つとわけではありません。

品質管理は人質管理という言葉からも、改めて人財育成の重要性を感じます。

 

品質管理と改善活動を連携させる仕組みをつくりませんか?

 

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出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)