補助金を活用できた企業・できない企業。儲けの為ではなく生産性UPに活用すべき!
現在、経済産業省などから様々な「ものづくり補助金」などの補助金がだされております。仕事柄、それらの補助金を利用して産業用ロボットを導入された色々な企業と携わってきました。
補助金は大事な血税
当たり前の話ですが、補助金は大事な血税です。国や自治体も補助金を出す目的は、決して「ばらまき」ではなく「生産性の向上」や「過酷作業・熟練技能の代替・支援」などを目的としています。よって、補助金を頂いた企業もしくは関連企業は、自分の会社がその補助金を懐にいれる為ではなく、その目的達成の為にフル活用しなくてはいけません。活用できた会社と活用できなかった会社の違いを比較したいと思います。
補助金でロボットを導入する際の体制
比較の前に、補助金を使ってロボットを導入する際によくある体制をご説明します。まず導入をする企業が親しくしている商社が監督役となり、その商社が適切な「SI(システムインテグレータ)」と「ソフト会社」を選定します。SIがハード、つまりロボットや周辺機器の構築を行います。そして、ソフト会社がそのハードを効率よく動かすためのソフトを提供します。
企業によっては、この商社やSIの役目を自社で行う場合もあります。ただし、電気的・機械的なノウハウが無いと難しいので、自社で行う企業は多くはないです。
補助金を活用できた企業とそうでない企業
私が携わった多くの企業の中から、補助金を活用できた企業A社とそうでない企業B社を比較します。この2社は体制・システムが酷似し、比較にはとても適しています。
商社が全体を監督。そして「熟練技能者の代替」と「生産性の向上」が目的である為、ハードを実績ある優秀なSIに依頼。ロボットは6軸多関節。さらに「少量多品種」「製品の面全体を加工」を行うのでティーチングが大変な為、ソフトではオフラインティーチングソフトを導入しましたが、導入後、この2社には生産性の大きな差が生じました。
両社の経済産業省への報告書を見ると、まず『人数がどれだけ削減されたか』に関してA社は「2名⇒0.2名」に対しB社は「2名⇒2名」。『1日の生産量』に関してA社は「3個⇒51個」に対しB社は「1個⇒1個」。したがって、A社はロボットの導入により生産性は「100倍以上」の成果を出せた事に対して、B社は「ほぼ変わらず」となりロボット導入の効果が出せなかった事になります。
なぜ生産性の大きな差が生じたか?
では、なぜ酷似している2社にこれだけの差が生じたのでしょうか?それはソフトの差です。A社は弊社のオフラインティーチングソフトを導入されたのに対し、B社は別のオフラインティーチングソフトを導入しました。すると、1製品あたりのティーチング時間に大きな差が生じたのです。通常、半日から1日かかる難しいティーチングをA社は10分とかからずティーチングする事ができたのに対し、B社はそれほど削減できませんでした。
なぜその差が生じたかというと、弊社ソフトは補正機能などで再調整(再ティーチング)がほとんど必要ないのに対し、もう一つのソフトは現場でのズレを直すために再調整が必要となる為、ティーチングにかなりの時間を要してしまうからです。
したがってA社は人の労働時間が大幅に削減されただけでなく、少量多品種にもかかわらずほとんどどロボットが止まらずに大量の製品を加工する事ができました。
なぜ生産性の向上を優先できないのか?
B社が使ったオフラインティーチングソフトは高額商品なのに対し、弊社ソフトはオプションや保守・教育込みでもその半額に満ちません。なぜB社を監督した商社は別のオフラインティーチングソフトを選択したのでしょうか?
日本の商流をご存じの方は、もうお分かりになるかと思います。商社が同じ割合のマージンを貰えるのであれば、高価な商品にした方が商社は儲かるという訳です。
ロボット導入企業は、そのような商社を避けるべきでは?と思われるかもしれません。私もその企業に説明いたしましたが「いつも御世話になっている商社に全て任せている」の一点張りで道理を受け入れてもらえませんでした。この『しがらみ』が海外と比べて日本企業が生産性向上を遅らせる理由のひとつと言えるでしょう。
前述した通り、補助金は大事な血税です。また、経済産業省などの「日本を世界一のロボット利活用社会に!」との切実な思いが込められています。決して、自社の儲けではなく、生産性の向上を優先して頂きたいと願っております。