運搬作業者に運搬以外の仕事を与える|元トヨタマンの目
自動車のシートは大物部品の代表格であり、運搬効率が極めて悪い。種類もめちゃくちゃ多い。
結局、シートメーカーはトヨタ工場に近接して工場を建て、そこで造って供給するようにしている。
これにより運搬の問題は解決できる。
次に多種類の問題については、必要な物だけを造りようにした。
トヨタの組立ラインへ投入される車種の順番は、その前工程である塗装ラインが終了した時点で決定される。
シートメーカーは、この決定された投入順番の情報をトヨタから受信し、組立ラインでシートを装着する工程までの間に、それぞれの車種に合うシートを造ってトラックで運んでくる。
この時間たるや数時間だ。
その間にシートを造ってしまうのだから、シートメーカーはひょっとしたらトヨタ以上のノウハウを持っているのかも知れない。
そしてトラック便がひっきりなしにトヨタへ向かって出発していく。
その際、空のトラックを運転してきた運転手が、次の実入りのトラックを運転していくまでに、少し手待ち時間が発生していた。
驚いたことに、その手待ち時間にも運転手にやらせる軽作業を与えていた。運転手がその軽作業をやっていると、出発の指示のランプが点灯する。
しかしランプだけでは作業に没頭している運転手が気づかない場合があるので、チャイムという音でも知らせるようにしていた。
あるクライアントの組付ラインをつくっている。
そこで組付作業者が組付作業以外のことをやらなければならないことに気がついた。
機械加工部品同士をドッキングさせるのに、気持ちよく合致しないことがある。そんな場合、組付作業者がテーパーがけして調整して合わせるようなことをしていた。
このようなことこそ、部品を準備する作業者が、手待ちの時間を見つけてやっておけばいい。
この段階なら多くの部品があるので、合致するのを選び出すことができるので、テーパーがけまで必要になる場合は少なくなる。
このように組付ラインをつくる時は、スムーズな組付作業を妨げている「カン・コツ」の部分を、前工程や運搬作業者へ移行させる。
そしてその上で改善を加えていく。必要に応じ、設計まで遡ることが重要である。