トヨタトップは常に組織を引き締める|元トヨタマンの目
創立記念日や新年にトヨタトップから全社員に向けてメッセージが送られる。
その際、トヨタトップからは「トヨタはこんなにすごいんだ」などという趣旨の言葉を聞いたことがない。
常に「厳しい」「苦しい」「大変だ」といった内容ばかりだ。
たとえばアメリカの消費者意見を集約し品質のランキングをつけるJ.D.パワー社の評価結果が毎年発表されるが、当然毎年トヨタ車は上位を独占する。
その際のトヨタトップの挨拶は、トヨタが今年も1位になったといった内容には少ししか触れず、「韓国車などの品質向上は目覚しい。そのうち抜かれるぞ。気合を入れろ」だ。
このように言われ続けると、本当に「うかうかしておれないな、こいつはやばいぞ」という気持ちになってくるから不思議だ。
それだけトップの思いや気持ちが、大きく社員を左右するのだと思う。
そのせいか、トヨタやトヨタマンのことを世間ではすごいすごいともてはやしてくれるが、当のトヨタマン自身はそれほど会社や自分たちのことをすごいとは思っていないような気がする。
当の私も、トヨタを出て他の会社に所属し、客観的にトヨタを眺める立場に立って初めて「トヨタのすごさ」を実感することができた。
トヨタの現場にしても、在庫というものが一切無い。この恐怖がお分かりだろうか。
どこかの設備がトラブルを起こしただけで、ラインはすぐに止まってしまう。
それが長引けば、車両メインラインにまで影響を及ぼしてしまう。
そうなれば何千人という人の作業を止めてしまい、無駄な労務費を何千万円と払わなければならなくなってしまう。
その恐怖から、トラブルが絶対に発生しないように設備の予防点検をこまめにやるようになったり、設備の斬粉の除去なども毎日やるようになる。
現場にピーンと緊張の糸が張るわけだ。現場にはこの緊張の糸がどうしても必要なのだ。
作業者が緊張して活動していれば災害も発生しにくくなる。作業者にゆるみが出た時、災害が起こりやすくなる。