「改善活動」「変動予算管理制度」「創意工夫制度」は三位一体|元トヨタマンの目
作業者の活動①
「改善活動」をして「変動予算管理」によりその成果を確認する。
<その結果>
- 成果が出ている場合・・・横展する
- 成果が出ていない場合・・もう一度改善活動をやり直す
- 狙った費目に成果は出たがそれ以外の費目が赤字が出た場合・・今度は赤字の費目に改善を加える
改善はこのように試行錯誤の連続である。
一生懸命勉強して実力がついたかどうかテストをして結果を見てみるのとおなじことで、どうしてもテスト(変動予算管理制度)は必要不可欠。
作業者の活動②
「改善内容」を「創意工夫提案用紙」に書いて提出する。
<その結果>
- 賞金をもらえる(30年前から最低でも500円くれた)
- 管理者から感謝される(理由は下の通り)
- せっかく無理して書いて提出したものを上司が有効に使ってくれるため、出し甲斐もあり、更に出す気になる
※効果額(賞金額)の真の評価は上記の通り非常に難しい。従って現状で考えられる理論で算出するだけで、評価制度による裏付けまではしない
管理者(係長クラスが原価の担当)の活動
「変動予算管理」の結果、各費目で黒字や赤字が出る。
それぞれの理由を調べ、黒字は他へ横展しなければならないし、赤字は問題解決手法で改善を加える。
そして黒字の理由の特定には、各作業者から提出された「創意工夫提案用紙」の内容を1つ1つ確認して、該当するであろう改善内容を見つける。
そしてそのすべてを製造部の原価会議で部長に報告する。
従って管理者はどんな些細な改善でもいいから創意工夫を出してもらいたいため、どんなレベルの低い提案でも一切文句はいわず500円は点数をつけてあげる。
提案が多ければ多いほど職場が活性化するし、都合がいいからだ。
以上が三位一体の意味だ。
トヨタは「変動予算管理制度」についても間違いなく世界一だといえる。
労務費についても変動予算管理を行なっているからだ。
会社「生産量の増減に応じて要員を増減せよ」
現場「生産量が動いてしまいどのくらいに要員にしたらいいのかわかりません」
会社「それもそうだな。それではそれが分かる指標をつくろう」
ということで、トヨタ生産方式のメインの1つとして労務費の管理指標(能率管理)をつくってしまった。
さらに、労務費以外の生産変動により使用量が変動する費目(補助材料費、電力料、エネルギー費、軍手などの雑品等)について変動予算管理制度として確立させた。
まさにこのような鉄壁な制度があるからこそ、創意工夫提案制度が生きるわけだ。
このような変動予算管理制度のない会社が創意工夫提案制度を導入したとする。
作業者「いくら提案しても上司は見てもくれない。まあ金にはなるから、チェックも弱いし、適当に書いて出しておこう」
会社「賞金ばかり出ているが、本当に会社のためになっているのか分からないなあ」
筆者……こんな調子ならやめといた方がいいですよ。