汎用旋盤(MS-850)ハーフナット部の修理(3)

汎用旋盤(MS-850)ハーフナット部の修理(3)

三本の竿がはずれ、私が工夫している起動レバーの話までしました。

次は、エプロンをシレーから降ろします。

ワイヤーをかけるため左側だけちょっとした物を作りました。

切り粉などが入らないように、カバーがM6のボルト二本で付いてましたので、そのタップ穴を利用し、アイボルトを付けました。

 

下が右側の画像です。

ここは、ねじ切りインジケーターが付いていたタップ穴をそのまま利用しました。

下の画像が吊り上げるまでの準備です。

重量的にそんなに重くはありませんが、バランスが取れていませんので、取り付け面に傷をつけないように、慎重にします。

下から木などでこじて支え、ワイヤーは補助位に吊っておいたほうが無難です。

まず二本のテーパーノックピンを抜き、その後五本のキャップボルトをはずします。

 

この場合いろいろな方法が考えられますが、私は真中のボルトを最初に軽くゆるめ、次に残りの外周の四本を対角線状に軽くゆるめ、その後真中を残して外周の四本を抜いてしまい、最後に真中を抜きました。

最後の一本を抜く時、エプロンのねじ山を壊さないように、木をこじてしっかりシレーに押し当てておきます。

対角線状の二本を抜いたあたりから木に力を入れておいたほうが無難ですね。シレーを動かすハンドルを抜かなかったのもここを持ちバランスを取るためです。

吊り上げたエプロンをあらかじめ確保した場所に置きました。

ワイヤーをまっすぐに架けたかったので、このような吊り方となりました。

その辺にあったもので作りましたので、見た目は勘弁してください。安全上は大丈夫と自分では判断し吊りました(笑

ここからはこの作業台の上で作業を進めていきます。

 

下の画像二枚が、降ろしたエプロンとシレーの取り付け面です。

取り付け面は、お互い当たりを取ってあります。きさげで摺り合わせしてますが、摺動面とは違った方法で行われていることがわかります。

摺動面は、小さな当たりを沢山作りますが、取り付け面はその必要はなく、大きなあたりで良いので、シカラップの砥ぎ方も摺動面とは違います。

歯車が見えますが、端面を削る時に送りをかけるためのものです。

 

ラックの手前に二箇所裏板があります。汎用旋盤にはここと、反対側(作業者の向こう側)に裏板がありますが、ここの効かし方が難しいです。

向こう側はカミソリが入ってますが、ここ(画像側)は板に段差を付けて調整します。

ほとんどの汎用旋盤は、裏板全て遊ばせてると思います(効かせていない)。

 

ベットの裏を覗き懐中電灯などを当てて見ると、研磨面がそのまま残っていると思います。

通常の加工では、シレーに下向きの力が掛かりますので、裏板はなくても良い位なのですが、私の場合は、仕上げ用にしている汎用旋盤は遊ばしてますが、荒引き用の汎用旋盤は微妙に効かせてます。

特にここと反対側のカミソリ部は細工がしてあります。中古の機械を今まで何台も見て来ましたが、カミソリ部に私のような細工をした機械は見たことがありません。

 

ちょっとした工夫ですがすごく安定します。すみませんが、その工夫は公開不可です。

この文面と画像で気づかれた方はどうぞまねして頂いて結構です。

中古の機械を見ましても、年々工夫した箇所が少なくなってます。うちにある機械は全て自分なりに工夫が加えてあります。

 

その工夫の中には機械メーカーがまねして良いですかと言ったものもありますし、セーパーのバイトは親父がバイトメーカーに別注で注文していた形状を今は他のメーカーも真似して自社商品として販売してます。

写真では見づらいですが、油穴があいてます。エプロンからポンプで各部に給油する穴です。

 

次回はいよいよねじ山がほんの少しずれる原因の追究です。

汎用旋盤(MS-850)ハーフナット部の修理(4)につづく。

 

~基本を大切にした技術伝承~汎用旋盤職人養成


1963年大阪生まれ。西尾鉄工所代表。旋盤師、伝統技術継承者◎祖父の代から80年続く大阪八尾市の町工場の三代目。「職人道」を極めた先代のもとで、13才から弟子入りし、昔ながらの職人技を叩き込まれ、家業を一人前にこなした。工業高校卒業後、中堅工作機械メーカーに就職。工作機械(機械部品を産み出す母なる機械。マザーマシンとも呼ばれる)の構造を隈なく学び、23才で独立。最先端コンピュータで制御された「NC旋盤」に対し、職人の「技」と「勘」が頼りの「汎用旋盤」(職人の手で動かす旋盤)をこよなく愛し、現在に至るまで、その加工にこだわり続けてきた。数少ない伝統技術継承者の一人。◎若い世代の人材不足、技術伝承に危機感を持ち、2016年「汎用旋盤職人養成講座」をスタート。教材用に独自開発した「汎用フライス盤」は、設計、加工、組立・調整をすべてひとりでやり遂げ、自身の総合技術力の賜物となった。最近、営業下手な職人の殻を破り、SNSを駆使して「基礎の手技」の重要性を次世代へと訴える。また、異業種の職人を対象に、「いぶし銀の会」を立ち上げ、オリジナル製品の企画、開発など「未来の職人像」を探っている。コンピューター依存が加速する製造業の未来を受け入れつつも、「機械の前に人間ありき」と、代々受け継がれてきた職人の技と精神性の伝承に力を注いでいる。◎2014年「八尾市ものづくり達人懸賞」受賞、2015年日刊工業新聞「マイスターに聞く」掲載、「なにわの名工」受賞◎西尾鉄工所ホームページhttps://nishio-tekkousho.jimdo.com/ 西尾鉄工所技術伝承 https://nishio-tekkousyo.jimdo.com/