汎用旋盤(MS-850)ハーフナット部の修理(1)

汎用旋盤(MS-850)ハーフナット部の修理(1)

汎用旋盤でねじを切っていてちょっとおかしかったので、修理することにしました。

おそらくハーフナットを開閉している辺りだと思います。以前より気づいてはいましたが、徐々に悪化が進み、この辺が修理時と判断しました。

急ぎの仕事を終えた後のタイミングを見計らって修理に取り掛かりました。

 

もしねじ切りの特急仕事が入っても、うちには汎用旋盤があと二台ありますので、対応できます。

今回の症状としては、ねじ山が微妙に合いません。

ねじを切ってると、たまになんですがほんの少しですがずれます。原因はハーフナットを開閉している辺りだと思います。

 

エプロンの裏側になりますので、シレーからエプロンを降ろしての作業となります。

下の画像がいつもの状態です。

うちは狭いので、まず、エプロンを置く場所を確保しました。

次に、三本の竿を抜かなければなりませんので、その準備です。

三本の竿とは、一番上が親ねじ、真中が送りをかける動力源のシャフト、一番下が主軸の回転を指示するリミットスイッチにつながっているシャフトです。

まず、竿の左側の送りのギヤーボックスとの接続をはずします。

上二本はテーパーノックピンが入っていて、一番下はホーローセットで固定です。

テーパーノックピンは、細い側をそれより細いシャフトのようなもをあてがい、ハンマーで叩くと取れます(当たり前ですね)。

しかし慎重にしないと画像のようになってしまい厄介なことになりますので、気をつけて作業します。ちなみにこの傷は私ではなく、中古で買う前の方が付けたものです。名誉のために(笑

 

反対の右側です。

位置決めのテーパーノックピンと四本のキャップボルトを外せば、三軸受けの部品自体はベットから外れますが、一番下の竿に注意が必要です。

 

カバーをはずすします。

アップすると下の画像です。三本の竿の受けの部分です。

一番上の竿(親ねじ)の砲金メタルが見えます。ここは入れてあるだけですので、そのまま抜けます。

真中の竿の受けは隠れて見えませんが、ここは画像の裏側にベアリングが入っていて、ここも同じく入れてあるだけなので、そのまま抜けます。

注意が必要なのは一番下です。

 

ばねを飛ばさないように抜き、その下の矢(ばねによって上下する部品)の裏表が解る様にしるしを付けておきます。

うっかり画像を撮り忘れ、慌てて仮組みして撮ったのを後で確認すると、裏表逆になっていました。したがって付けたしるしは写っていません。

私はヤスリで切り欠きを付けています。

 

「あたりを変えない」 と言ってますが、このようなところにはあたり加減(なじみ)がありますので、反対にはしない方が良いと思います。ささいなことですが、機械ものは、この「あたり」が意外と重要で、機械を長く使う上でポイントとなると思います。

この竿に付いている、三箇所V溝が付いている位置決め用のドッグは、テーパーノックピンで固定されていますので、先ほどと同じく慎重に抜きます。

ここまでで、三本の竿が抜ける状態になりました。

 

汎用旋盤(MS-850)ハーフナット部の修理(2)につづく

 

~基本を大切にした技術伝承~汎用旋盤職人養成


1963年大阪生まれ。西尾鉄工所代表。旋盤師、伝統技術継承者◎祖父の代から80年続く大阪八尾市の町工場の三代目。「職人道」を極めた先代のもとで、13才から弟子入りし、昔ながらの職人技を叩き込まれ、家業を一人前にこなした。工業高校卒業後、中堅工作機械メーカーに就職。工作機械(機械部品を産み出す母なる機械。マザーマシンとも呼ばれる)の構造を隈なく学び、23才で独立。最先端コンピュータで制御された「NC旋盤」に対し、職人の「技」と「勘」が頼りの「汎用旋盤」(職人の手で動かす旋盤)をこよなく愛し、現在に至るまで、その加工にこだわり続けてきた。数少ない伝統技術継承者の一人。◎若い世代の人材不足、技術伝承に危機感を持ち、2016年「汎用旋盤職人養成講座」をスタート。教材用に独自開発した「汎用フライス盤」は、設計、加工、組立・調整をすべてひとりでやり遂げ、自身の総合技術力の賜物となった。最近、営業下手な職人の殻を破り、SNSを駆使して「基礎の手技」の重要性を次世代へと訴える。また、異業種の職人を対象に、「いぶし銀の会」を立ち上げ、オリジナル製品の企画、開発など「未来の職人像」を探っている。コンピューター依存が加速する製造業の未来を受け入れつつも、「機械の前に人間ありき」と、代々受け継がれてきた職人の技と精神性の伝承に力を注いでいる。◎2014年「八尾市ものづくり達人懸賞」受賞、2015年日刊工業新聞「マイスターに聞く」掲載、「なにわの名工」受賞◎西尾鉄工所ホームページhttps://nishio-tekkousho.jimdo.com/ 西尾鉄工所技術伝承 https://nishio-tekkousyo.jimdo.com/