これからの「鉄職人、温故知新のものづくり」

これからの「鉄職人、温故知新のものづくり」

ここ「鉄職人、温故知新のものづくり」では、おもに技術伝承のことについて書いてきました。

今後はそれに加えて、

  • 機械の整備や調整やメインテナンス。
  • 加工の技術的なこと(おもに昔の技術)

などもこのブログで書いていこうと思います。

 

これらも技術伝承の一部だと思います。

機械を使って加工する上で、機械の構造や調整の仕方を覚えるのは、かつては当たり前でした。それが崩れてしまってます。

「いいのではないか」との意見の方は、それでいいと思います。

 

他の意見の方に対して、どうのこうのは一切ありません。

私は、自分が使っている機械の構造を勉強し、少しくらいの修理や調整やメンテナンスなどは、自分でした方が良いと言う考え方です。

例をあげると、レーシングドライバーです。ドライバーのメインの仕事は、運転です。

しかし、それだけではなく、車の構造を理解し、調整ができるドライバーは、車のセッティングを進める上で、より適切な方法が取れると思います(メカニック任せのドライバーより)。

 

この違いが、機械を使っての加工に影響してくると思います。

また、技量が上がってくるに従い、機械の構造を頭に入れた加工方法が取れるようになります。

そうなると、今までと違った面白さの世界ができてきます。

 

少し長くなってしまいますが、よく機械メーカーの比較に使われた例です。

森精機(当時名)と大日の、共に9尺の汎用旋盤の比較です。

機種名は伏せておきます。共に台数がよく出た機械ですので、お解かりだと思います。

 

「大日は見るからに肉付きが良くて、剛性が高い」

これに対して、

「ギヤーの端面のヌスミは、大日はビビるが森精機はビビらない」

 

この会話は、本当によく聴きました。機械商社さんでも有名な話です。

何を言ってるかといいますと、機械各部のバランスなんです。

 

大日さんの特徴は、肉付きがいいので、振れた物を加工するときは、回転のバランスが少しくらい狂っても、大丈夫。

バリバリ荒引きをしても、機械がねじれたりしない。

 

森精機さんの特徴は、肉付きは薄いが、機械各部のバランスが良いので、ビビリや精度出しに強いということです。

どちらの機械が良い悪いではなく、それぞれの特徴です。

このように、各機械の構造を理解して加工できるようになると、また、面白さが違ってきます。どのようなベアリング配置になっているかでも、その機械の特徴が解ったりします。

 

機械の「剛性」については、またの機会に書きたいと思います。

~基本を大切にした技術伝承~汎用旋盤職人養成


1963年大阪生まれ。西尾鉄工所代表。旋盤師、伝統技術継承者◎祖父の代から80年続く大阪八尾市の町工場の三代目。「職人道」を極めた先代のもとで、13才から弟子入りし、昔ながらの職人技を叩き込まれ、家業を一人前にこなした。工業高校卒業後、中堅工作機械メーカーに就職。工作機械(機械部品を産み出す母なる機械。マザーマシンとも呼ばれる)の構造を隈なく学び、23才で独立。最先端コンピュータで制御された「NC旋盤」に対し、職人の「技」と「勘」が頼りの「汎用旋盤」(職人の手で動かす旋盤)をこよなく愛し、現在に至るまで、その加工にこだわり続けてきた。数少ない伝統技術継承者の一人。◎若い世代の人材不足、技術伝承に危機感を持ち、2016年「汎用旋盤職人養成講座」をスタート。教材用に独自開発した「汎用フライス盤」は、設計、加工、組立・調整をすべてひとりでやり遂げ、自身の総合技術力の賜物となった。最近、営業下手な職人の殻を破り、SNSを駆使して「基礎の手技」の重要性を次世代へと訴える。また、異業種の職人を対象に、「いぶし銀の会」を立ち上げ、オリジナル製品の企画、開発など「未来の職人像」を探っている。コンピューター依存が加速する製造業の未来を受け入れつつも、「機械の前に人間ありき」と、代々受け継がれてきた職人の技と精神性の伝承に力を注いでいる。◎2014年「八尾市ものづくり達人懸賞」受賞、2015年日刊工業新聞「マイスターに聞く」掲載、「なにわの名工」受賞◎西尾鉄工所ホームページhttps://nishio-tekkousho.jimdo.com/ 西尾鉄工所技術伝承 https://nishio-tekkousyo.jimdo.com/