トヨタの熟練工に対する考え方|元トヨタマンの目
トヨタは技能五輪ではいつも優秀な成績を修めているし、社内の技能教育体制も完璧に整っている。技能員のスキルアップにはことのほか熱心である。
普通ならその延長線上に、究極の熟練工に栄誉を与える「マイスター制度」などを設けて、最終のゴールにしている場合が多いであろう。
しかしトヨタの場合は、その考え方は少し違い、「熟達した熟練工のカンコツ、調整ノウハウなどは徹底的に分析して、必ず誰もが簡単にできるように標準化せよ」ということが社訓になっている。
この考え方のルーツは、第二次大戦時にベテラン技能員がどんどん徴兵されていき、残された素人でも作業を引き継げるようにせよ、というところにある。
また生産変動の増減で、頻繁に作業員が入れ代わったりするため、すべての作業を誰でもできるように標準化していおかなければならない、という生産制度上の必要によるところもある。
さらに、作業者数もべらぼうに多いため、いちいちマンツーマンで教えている時間も工数もない。標準化しなければ、にっちもさっちもいかないわけだ。
したがって、工場での作業において、「この作業は、あの熟練工でなければできない」などというものはない。
このようなことも、トヨタを出て、外からトヨタを見つめなおすことで気づいた。