振動解析と診断 vol.9 振動解析診断システムの紹介(4)
前回のドラッグ&ドロップ機能、グラフ表示切替タブ機能、タイル表示、複数パラメータの重ね描き等の説明に続き、今回もinfiSYS RV-200におけるその他の操作性と描画機能に関して説明したいと思います。
ユーザーフレンドリーな操作性と描画機能(つづき)
ドラッグ&ドロップによるグラフ表示操作や、タブ選択によるグラフエリアのページ切り替えなど、直感的に操作可能
infiSYS RV-200は、各グラフに共通した分かりやすい操作性、選択したグラフのCSV形式によるデータエクスポートや画像データとしてクリップボードへの抽出など、多くの特長を有しています。
これら全ての特長的な操作性や描画機能を紹介することはできませんが、前回に引き続き今回もいくつか具体例を挙げて「ユーザフレンドリーな操作性と描画機能」に関して説明します。
グラフのレンジと表示範囲の拡大縮小機能
各グラフの縦軸のレンジと横軸の時間や回転数範囲の拡大、縮小はグラフウインドウ上のツールバーの上下矢印または左右矢印をクリックして、メニューの「拡大」「縮小」「自動」「手動」を選択することで変更できます。
また、次で述べる「右クリックメニュー」から「プロパティ」を選択することでレンジを設定したり、「任意日時」で呼び出しデータの開始時刻と終了時刻を指定することができます。
更に、横軸の拡大、縮小をもっと簡単に感覚的に行う方法を図31に示します。
図31の(a)に示すように、グラフ上の任意の点から左クリックをしたままの状態でマウスを右にスライドさせます。
そうすると、スライドした範囲に赤い線が現れ、左クリックを解除すると同時に、(b)に示すように赤い線の範囲を拡大して表示します。
次に、(c)に示すように、左クリックしたままの状態でマウスを左にスライドすると青い線が現れ、適当なところで左クリックを解除すると、再び(a)のように元の表示範囲に戻ります。
なお、(c)の左へのスライドする範囲(青い線の長さ)には関係なく元の表示範囲に戻ります。
図31. マウスのスライド範囲の拡大
右クリックメニュー
グラフ上でマウスの右側をクリックすると、図32に示すようなメニューが現れますが、これを右クリックメニューと呼びます。
<時間選択>
図32で示すように右クリックメニューの「時間選択」を選択すると、更に「トランジェント履歴」「警報履歴」「任意日時」というメニューが現れ、それぞれに対応したデータを呼び出してグラフに表示することができます。
図32. 右クリックメニュー
<プロパティ>
右クリックメニューの「プロパティ」を選択すると、図33に示すようなレンジ範囲や破線数を設定するためのプロパティ画面が現れます。
これにより各パラメータのレンジ設定や、横軸(X軸)、縦軸(Y軸)の破線(目盛線)の本数を設定することができます。
プロパティ画面はグラフの種類によって変わります。
図33. トレンドグラフのプロパティ
<クリップボードにコピー>
右クリックメニューの「クリップボードにコピー」を選択すると、そのグラフの画像をクリップボードにコピーしますので、「ペイント」等の画像ソフトで呼び出して、名前を付けて保存したり、WORDやEXCEL等のソフトに貼り付けたりすることができます。
これにより、報告書に解析グラフを貼り付けたり、関係者にE-mailの添付ファイルとして画像を送ることができます。
<CSV出力>
上記の「クリップボードにコピー」機能で、必要な解析グラフの画像を関係者に送ることができますが、画像だけでなく数値データもほしいという場合、右クリックメニューの「CSV出力」を選択することで、CSV形式のデータファイルとして名前を付けて保存することができます。
このファイルも上記の画像データと同様にE-mailに添付して関係者に送ることができますので、受け取ったファイルはEXCELで展開して、必要に応じて表やグラフにすることができます。
図34の「STrend_ロータキット起動停止テスト(CSV出力)」とい名前を付けたCSVファイルは、図32で示すトレンドグラフの「CSV出力」機能で抽出したファイルです。図35には、その「CSV出力」ファイルをEXCELに展開したものです。
図34. 「エクスポート」と「CSV出力」のデータファイル
図35. 「CSV出力」ファイルをExcelに展開
このデータは、右クリックメニューの「CSV出力」を選択する時にグラフ上に表示されているパラメータのみ抽出したものですので、画像ファイルでは煩雑になるので表示データを絞って「クリップボードにコピー」したとしても、グラフ(画像)に非表示だが数値データとしては抽出しておきたいパラメータがある場合、「CSV出力」実行の前にそのパラメータも選択して表示しておくことが必要です。
例えば、画像データでは振動振幅だけに注目して見てもらえるように、回転数とOA振幅と1X振幅のみ表示するが、数値データとしては、1X位相と0.5Xと2X振幅も抽出しておきたいという場合、ボタンを押した状態にしてから「クリップボードにコピー」の操作を実施、その後さらに、ボタンも押した状態にしてから「CSV出力」の操作を行う必要があります。
さて、上記の「クリップボードにコピー」機能と「CSV出力」機能を使って、例えば出張先の現場でKenjinにより収集した振動解析データを、画像とCSVファイルにして本社の専門家や機械メーカに送って、意見を聞いたり、ある程度の診断をしてもらうことができそうです。
しかし、これらの解析データを受け取った専門家は、「ここのレンジを変えてみたいのに」「このエリアの時間軸を拡大したいのに」「この時の別のパラメータもチェックしたいのに」「この時の他の種類の解析グラフも見てみたいのに」「EXCELに展開できても、グラフにするのが面倒だなあ」「EXCELでポーラ線図を描かせるのは……どうするの? 難しそう……」などとつぶやくかもしれません。
そこで次回は、そのつぶやきに応えてくれそうな「エクスポート」機能と「インポート」機能について解説する予定です。
出典:『技術コラム 回転機械の状態監視や解析診断』新川電機株式会社