動作研究は動作に加え○○○にも注目して分析する
動作研究では、現場作業者の動作だけでなく、モーションマインドのような心にも注目すべきである、という話です。
1.作業者レベルの「要素動作」と「動作」
「人」視点のIEでは、現状分析のためにカイゼン対象を鳥の目でとらえ生産工程全体を最初のカイゼン対象とします。
そこから各工程の付加価値作業へカイゼン対象の深堀をします。そして現状分析のために、工程分析や連合作業分析を行います。
ここからさらにカイゼン対象を深掘りしていくと作業者に至ります。
付加価値作業を構成する「要素作業」、そして、その要素作業を構成する「動作」。
作業者レベルの「要素作業」と「動作」がカイゼン対象です。動作研究で現状分析します。
2.両手作業分析と微動作分析の2つの分析
動作研究は動作レベルで分析する「両手作業分析」と微動作レベルで分析する「微動作分析」の2つがあります。
(出典:『IE7つ道具』実践経営研究会編集)
どちらの分析も対象は作業者ひとりひとりの動きです。まずは客観的に動きを整理します。
この分析では動画が最も効果的なツールです。ただし動画データのみではカイゼンの論点を明確にしにくいです。
動画を用いれば、一目で問題点が“違和感”として伝わってくることがあります。ただし、何が問題でそれが“違和感”として捉えられたのかは意外と説明できない。
そこで、一定のルールによって図表で表現された分析が役に立ちます。
両手作業分析では動作を4種類に、微動作分析では動作を18種類に分類しています。
現状分析のためには、まず作業者の動きを動画撮影して、分類にしたがって動作を整理します。
動作分析の狙いは付加価値を生み出さない動作を抽出することです。
両手作業分析で分類された4種類の動作とは、作業、移動、保持、手持ちです。このうち、付加価値を生み出す動作は作業のみです。
また微動作分析で分類された18種類の動作のうち付加価値を生み出す動作は、組み合わせ、分解する、使用するの3つです。
ところで、自分の動きは、自分自身ではわからないものです。
ですから、動画と図表で整理された分析結果を、作業者へ提示すると当事者のカイゼン魂が頭をもたげます。
工場経営上の目標が与えられている環境下、自分の仕事ぶりに若干の修正の余地があると判断され、その状況を見える化されれば、誰でも自然にカイゼンしたいと行動をおこすものです。
誰でも、いい仕事をして自分が所属する職場や仲間、会社へ貢献したいと願っています。
ですから、現状を見える化した動画と分析結果を提示した後は、目指すべき状態を具体的に示し、残りは当人に任せてイイです。
現場の作業者は、自ら工夫を加え仕事ぶりをカイゼンする。職場が、工場が、会社全体に一体感があれば、自然とそうなります。
自分が関わっている組織が良い方向へ進むことを願っているからです
現状分析の後、カイゼンの切り口を検討するのにカイゼンのネタを探る4つの視点を活用してもイイし(現状をベースにしてカイゼンのネタを探る4つの視点)、動作研究では動作経済の原則があるのでそれに従うのもイイです。
ただ、それ以上に作業者自身の自律性に任せてカイゼンを進めるのがベストな方法です。
3.動作研究は作業者の心持によって成果が決まる
動作研究はスキルより心構えの方が大事です。
常によりよい作業が実践できるよう日ごろから作業に小さな工夫を加える自立的な現場が理想です。
動作研究のカイゼン対象は動作のレベルであり、作業者個人のレベルです。カイゼン策を現場の作業者の自立性に任せれば、その成果は間違いなく現場に定着します。
一方的に押し付けられたカイゼン策ではなく、自ら知恵を絞って考えた策です。
自ら実践して成果を味わいたくなります。
モーションマインドという言葉があります。常に作業の動作を良くしようと考える心持ちのことです。
動作分析では現状分析まではスキルを使いますが、カイゼン策を考える段階では、現場の自発的なモーションマインドを大切にしたい。
カイゼン策を現場に定着させるための手段としてこれ以上優れているのはないです。
モーションマインドを喚起するために、やる気を引き出すことは欠かせません。経営者は現場へ想いを浸透させる努力を続ける必要があります。
付加価値を生み出す生産活動を深掘り、深掘りすると、最後は現場作業者の動作に行き着きます。
このレベルでイイ仕事ができる現場は足腰が強い。人に働きかける工場運営や工場経営が上手くいっています。
動作研究は人間の動作だけではなく、心にも注目です。
まとめ
動作研究では、現場作業者の動作だけでなく、モーションマインドのような心にも注目すべきである。