多能工化と付加価値拡大を連携させた人財力強化
人財力を強化する切り口は多能工化であり、取り組みを進めるには経営者の想いを反映させた将来の姿をまず描く、という話です。
工場の強みはモノづくり力と人財力の2つに代表され、強みの両輪を構成しています。
そして、多能工化を進める際のポイントは目的を明確にすることです。
付加価値拡大の業務を加えるために多能工化を推進させる戦略を立てます。
現場の納得感が高まります。
1.工場の強み
工場の強みはモノづくり力と人財力の2つに代表されると思います。
強みの両輪を構成しています。
どちらも創業以来の地道な工場経営を通じて蓄積された経営資源です。
一朝一夕に獲得できた経営資源ではないはずです。
現在のモノづくり力と人財力は過去の努力が結実して獲得された資源です。
ですから、今後の努力は未来のモノづくり力と人財力につながります。
現在、それなりに事業で成果が出ているならば、過去の努力が正しかったことを証明しています。
また、逆に苦戦しているというならば、それは過去の努力が間違っていたことを証明しています。
現在の状況は、過去の努力の結果を反映させたものです。
ですから、今ガンバルのは、未来の収益のためです。
そこで、現状から過去の取り組みを振り返ります。
そして、現状を把握し、今取り組むべき項目を整理します。
そうして、未来で成果を刈り取れるよう計画的に取り組みを進めます。
さて、人財力を強化するための具体的な視点として、多能工化があります。
中小製造業の工場ではその多くが機能別のレイアウトです。
各設備を長年使いこなしているベテラン作業者を中心にして各設備を担当するチームが構成されているのが大部分です。
チームが担当している技能を高めることから始めて、他の設備の技能も習得し高めていくのが多能工化です。
その多能工化を進める際のポイントは目的を明確にすることです。
作業者へ目的を明確に提示して納得感を高めます。
納得感が高まった取り組みは成功する確度が高まります。
2.人財力を強化するための考え方
人財力を強化する時の切り口は多能工化です。
作業者の納得感を高めるためには目的を明確にします。
そのためには工場の将来目指すべき姿を描く必要があります。
多能工化に取り組む際の注意点は、闇雲に取り組みを進めないということです。
自社工場の存在する設備のリストを眺めながらとりあえず全員に全ての技能を身に着けてもらおうと考え、絨毯爆撃式に全員に全ての技能を習得させる計画を立てるケースがあります。
工場の将来目指すべき姿を描いた結果、どうしても全員に全ての技能を習得してもらわねばならんということが明確になっているなら、習得する必然性がありますが、そうでなく、単にまずは習得しよう、ということではやる気も出にくいです。
全員が全ての技能を習得することで、将来の目指すべき姿を実現できるという明確な目的があれば、取り組みへの動機付けが図られ、納得感が高まります。
全ての技能を習得することは作業者にとってたいへんかもしれませんが、達成することで手にできる成果が魅力的であるならば頑張ることができます。
人財力もモノづくり力も強化するには戦略的な意思決定が必要です。
人財力やモノづくり力の強化は、経営者の想いが反映する取り組みだからです。
逆に言うと経営者の事業に対する想いを実現させるために、モノづくり力や人財力を強化するわけです。
ですから、経営者の想いを描かないまま、人財力を強化する目的で多能工化を図るというのは変な話であり、仕事のための仕事となってしまいます。
作業者の納得感は高まりません。
ですから、人財力を強化するためには、まず、経営者の想いを反映させた将来目指すべき姿を描きます。
ここでは経営者自身の想いを思いっきり描きます。
そして、どのような将来像を描くにしても、絶対に忘れてはならないことがあります。
それは、付加価値を拡大させる視点です。
自社製品の付加価値を高度化する取り組みを、将来像に必ず組み込むことです。
中小製造業は大手企業に比べるとブランド面や処遇の面でどうしても劣ります。
こうした制約条件のために必ずしも優秀な人財を採用できるわけでなく、イノベーションを生む人財や工場を引っ張る人財は計画的に育てていく姿勢が必要です。
さらに、中小製造業は基本的にモノづくりそのものに全員が忙しく、長期的な視野で付加価値を高度化する業務に専念できる人的余力もない場合がほとんどです。
モノづくりにひたすら額に汗していれば、それなりに収益を確保できる時代ならば、それでもそこそこ事業を継続していくことは可能でした。
しかしながら、今は、売れているモノを造っても事業が安泰となる保証がない時代です。
自ら付加価値を高め、市場を創出する姿勢のみが存続と成長を可能にします。
会社の規模に関わらず、こうした努力が求められます。
そうした努力を惜しむなら、下請け型のビジネスでカスカスの収益に甘んじねばならず、生殺与奪の権利を親会社に与えている他力本願的な経営にならざるを得ません。
従業員を採用して事業を展開している経営者であるならば、自らの想いで事業を展開したいと考えている方が多いはず。
自ら付加価値を高めるアイデアを考えましょう。
そして、この時には、経営者がひとりで知恵をしぼるのではなく、現場の人財にも一緒に脳みそに汗をかいてもらう体制を構築するのです。
ワクワクする将来において目指すべき工場の姿を一緒に描き、具体的なアイデアを考える業務を現場に加えます。
つまり現場の業務に付加価値を拡大させるための業務が加わります。
それを担当する現場の人財が生産活動から抜ける分、誰かが作業を補わねばねりません。
このために多能工化を目指すわけです。
現場の人財を付加価値拡大に生かすため、人財の追加をすることなく多能工化で生産性を上げて進める戦略を立てます。
付加価値拡大を担当する人財も、それを支える多能工化を目指す人財も、それぞれに使命を持って業務に取り組むことができるわけで、やりがいを感じることができます。
3.具体的な多能工化の進め方
具体的に多能工化を推進する際には見える化を図るのが効果的です。
自分の目標が明確化されると人間はなぜかガンバッテしまいます。
人間は自分の成長を願う生き物ですから。
多能工化を進めるにあたって見える化すべきは2つあります。
1)人財配置図(人財レイアウト)
2)人財力量評価表(人財スキルマップ)
多能工化を計画的に進めるならば2)項のみで十分とも考えられますが、1)項の人財レイアウトを見える化することで、人財配置のバランスも把握できるようになります。
突発的な休みのために欠員となる工程をどこの工程の人財で補填すべきかが目で見て分かります。
また、人財レイアウトを日々眺め、人財配置管理を継続することで、各工程間の生産能力や生産リードタイムのアンバランスや仕掛品発生の原因なども見えることが期待できます。
機能別レイアウトの工場ならば是非とも実践したい手法です。
まとめ。
工場の強みはモノづくり力と人財力の2つに代表され強みの両輪を構成している。
多能工化を進める際のポイントは目的を明確にする。
付加価値拡大の業務を加えるために多能工化を推進させる戦略を立てる。
現場の納得感が高まる。
人財力を強化する切り口は多能工化であり、取り組みを進めるには経営者の想いを反映させた将来の姿をまず描く。