『領域を超える経営学』で若手研究者の心意気を感じる
最近、力作とも言える書籍を何冊か読んだ。
これまでのように、すぐにブログで紹介、という訳にもいかず、読み返すのは気合が必要、という事態に陥っている。
その一冊がこれである。
著者は、私の娘と同年代の30代半ば。
それでありながら、起業家、マッキンゼーのコンサルタント、オックスフォード大学でPh.Dを取り、現在は経営学者として国際経営論を研究し、立命館大学の准教授を務める。
私が驚いたのは、その経歴よりも、学問に対する地に足の付いた取組姿勢である。
この本とは、『領域を超える経営学 —グローバル経営の本質を「知の系譜」で読み解く−』(琴坂将広、ダイヤモンド社)である。
著者の経歴は、「はじめに」で示されている。
さらに、本書の目的が、「多国籍企業と国際経営戦略を軸に、グローバル経営の本質を探る」であることも明示されている。
私自身は、グローバル人材の育成をひとつのテーマとして調査をしていたことから、グローバル人材と経営戦略の関連について関心はあった。
しかし、きちんと「グローバル化」「多国籍企業」「国際経営戦略」などについて書かれた本を読んだこともなく、真面目に勉強したこともない。
従って、本書を最後まで読んだが、どれほど理解できたかは正直なところ分からない。
国際経営戦略の本質について私が何かを言うことはできないが、学問に対する姿勢については感じたことを述べることはできそうである。
私は50歳を過ぎてから博士の学位を取ることを決意し、仕事とは直接関係のないテーマで研究を始め、57歳で工学博士になった。
博士の末席に存在する者として、学問とは何かについて真剣に考えてきたつもりである。
私が感心したのは、過去の研究業績をきちんと調べ、それらの上に新たなものを積み重ねて行こうとする姿勢である。
かつては当たり前のことのように行われてきて、最近忘れがちなことを、30代の若手学者がきちんとやっている。
地に足が付いている。
その意味でも、本書は流し読みなどできない。
著者の琴坂氏の今後の研究成果を楽しみにしたい。
※2014年5月に書かれた記事です。