段取り時間短縮で工場スペース確保が大切な理由
マスカスタマイゼーションで「1品1仕様の個別生産の連続ライン」のために段取り作業短縮に取り組む、という話です。
段取り時間短縮は次の2つの順番に考えます。
1.内段取りを外段取りにできないか考える。
2.内段取り時間を短縮できないか考える。
さらに、
・ワンタッチ化
・治工具類、段取り作業場の確保
が考えるポイントです。
工場スペースの確保で経営者の判断も重要になることがあります。
1.工場運営のIoTでは段取り作業にも注目する
インダストリー4.0で今のドイツが目指しているスマート工場の姿は2つあるようです。
「人とロボットの協業」
「生産設備のモジュール化」
この2つが達成しようとしているのは、マスカスタマイゼーションです。
マスカスタマイゼーションでは、カスタマイズ化に対応しつつ、コストは大量生産並みを維持することが目標です。
したがって、あらゆる種類の製品が生産ラインに流れ始めたら、いかに短時間で出荷できる状態に至るかが注目点です。
したがって、スマート工場化を進めるにあたっては、現場の段取り作業に焦点が当たるように思われます。
2.カスタマイズ化と大量生産並みのコストの両立
マスカスタマイゼーションとは、多品種少量化へ対応するための目指すべき生産システムのひとつです。
究極のマスカスタマイゼーションの生産ラインはどんな感じでしょう。
・カスタマイズ化
・大量生産並みのコスト
この2つの要素の究極化をイメージして両者を組み合わせれば浮かびます。
究極のカスタマイズ化は、連続生産ではなく、ロット生産でもなく、1品1仕様の個別生産です。
また、究極の大量生産並みのコストは、ワークがガンガン流れている連続ラインがイメージされます。
つまり、「1品1仕様の個別生産の連続ライン」です。
真逆の概念が結び付いた表現になっています。
そもそも、カスタマイズと大量生産は通常、同居できない概念ですから、当然です。
「明るい夜」みたいな表現を実現させようというのがマスカスタマイゼーションです。
そこで、段取り作業に焦点が当たります。
1品1仕様の個別生産で1個流しだけど、リードタイムは連続生産並みを実現させるには、どうするか?
1品1仕様の製品へ加工する各工程で、各仕様への変更時間を極限まで短くすればイイです。
つまり、下記の式が成立するまでに段取り時間を短縮させる。
段取り時間 < タクトタイム
これが成立すれば、生産能力に影響を与えずに仕様を次々に変更できます。
赤くて丸い製品の次は、青くて四角い製品、そして黒くて三角の製品……。
というように、瞬時に製品仕様が変わっていくのに合わせて、設備の治具類がサクサク変更されるイメージです。
カスタマイズ化と大量生産並みのコストの両立のためには段取り時間短縮が課題です。
3.段取り時間の短縮
生産性の定義は下記でした。
生産性 = 生産量 ÷ 工数(人・時)
= 生産量 ÷ 作業時間
となります。
そして、この式を「正味時間」と「直接作業時間」で分解します。
正味時間とは加工工程において、原材料が実際に加工されている(情報が転写されている)時間です。
すると、3つの項に分解できます。
(1)生産方式効率
(2)作業能率
(3)稼働率
ここで、(2)の作業能率を上げるためにするべきことは、直接作業時間に占める正味時間を長くすることであり、これは、主に段取り時間の短縮、そのものずばりです。
(でもやっぱり重要な生産性を決めるの3つの要因とは)
ここで、段取り時間がゼロであれば、直接作業時間=正味時間となります。
製品が流動している時にこれが成立すれば、一貫連続ラインが構成されます。
通常は、仕様の変更に対応するための段取り時間をゼロ(正確には、段取り時間<タクトタイム)にはできないので、同一製品をまとめて流す、ロット生産方式を採用します。
段取り時間は価値の生まない時間です。
ですから、直接作業時間=正味時間を目指して、段取り時間を極限までゼロに近づける工夫を継続的に行います。
中小製造業では、生産ラインが機能別レイアウトになっている場合がほとんどで、その場合、段取り時間をゼロにする必要性は連続ライン程には高くないわけですが、段取り時間を短くする知恵を絞っておくことは大切です。
新たな製造設備を導入の際に、段取り作業短縮を桁違いに短縮させるアイデア反映させることができるかもしれません。
段取り作業は、アイデアを温めておく価値のある項目です。
トヨタ自動車はとにかくこの段取り時間の短縮に熱心に取り組みました。
シングル段取りという言葉も生まれました。
トヨタのこだわりです。
4.段取り時間短縮の検討方法
段取り時間を短縮させるための手順があります。
2段階で考えます。
(1)内段取りを外段取りにできないか考える。
(2)内段取り時間を短縮できないか考える。
一般的にはこのように言われていますが、(2)は設備の仕様であらかた決まってしまう場合が多いです。
設備が自家製で自社で改造を加えられる可能性があるなら、段取り短縮の工夫を後付することが可能かもしれません。
しかし、市販されている設備・装置では原則不可能です。
したがって、多くの現場では(2)はやりつくしている場合が多いです。
そうした場合、改めて(1)から段取り時間短縮の突破口を探ります。
考えるべきことは2つあります。
・ワンタッチ化
・治工具類、段取り作業場の確保
とにかく内段取りでバラバラに取り付ける治工具類をワンタッチで取り付けられないか考えます。
仕様変更で新たに取り付ける必要がある治工具類を、段取り時に、少しでも取り付けやすくするための事前準備、と考えて工夫します。
また、段取り時間短縮を継続的に地道に続けるための環境づくりも欠かせません。
そのためには、治工具類、段取り作業場の確保です。
・治工具類を整理する棚の設置スペース確保
・外段取り作業場のスペース確保
この2つを意識することが必要です。
段取り作業短縮が大切である、と言いながら上記の2つのスペースが確保されていない現場が意外と多いです。
以前、トヨタ自動車のグループ会社の工場見学をしました。
その工場では段取り整備のためのスペースがかなり広く確保されていました。
それだけ段取り時間短縮が大切であるとのコンセプトが工場レイアウトに表れていたということです。
工場スペースに関することでもあり、経営者の判断が必要かもしれません。
こうしたスペースを広く確保することで、何を重要視するか意思表示にもなります。
仕掛品を削減する狙いや目的を、段取り作業のスペースの確保にしても効果的です。
仕掛品はいくら現場においても、何も生みません。
貴重なスペースが減るだけです。
まとめ。
(1)内段取りを外段取りにできないか考える。
(2)内段取り時間を短縮できないか考える。
さらに、
・ワンタッチ化
・治工具類、段取り作業場の確保
が考えるポイントである。
工場スペースの確保で経営者の判断も重要になることがある。
マスカスタマイゼーションで「1品1仕様の個別生産の連続ライン」のために段取り作業短縮に取り組む。