本田選手の話からコア技術と夢の大切さを感じた
モノづくり工場でコア技術と夢はとても大切である、という話です。
モノづくり工場における大切なものについて考えます。
1.経営者の顔も持つサッカー日本代表本田圭佑選手
サッカー日本代表のエース本田圭佑選手は、イタリアの名門・ACミランで背番号10を背負う知名度抜群の選手です。
本田選手はサッカー選手であるとともに経営者としての顔も持っています。
ソルティーロ・ファミリア・サッカースクールを関西、関東、九州に開校しています。
また、2015年には、自身のマネジメント事務所HONDA ESTILOがオーストリア3部リーグのSVホルンの経営に参入しています。
現役のプロスポーツ選手が、一流のプレーを維持しながらビジネスを手掛けた例は少ないのではないでしょうか?
その本田選手は、さらに米国でのサッカースクール事業に進出しました。
そのバイタリティーには驚かされます。
自身は現役のプロスポーツ選手です。
世界を相手に一流プレーを維持するだけでもたいへんなはず(あたりまえですが)。
それと並行してスポーツビジネスを展開して実績を上げようとしているわけです。
(スゴイ!)
自分が思い描いている想いを、どのようにビジネスへ反映させているのでしょう。
経営の本質は“他人を通じて、自分の想いを実現すること”です。
本田選手が今のビジネスで成功しようとすると、経営の本質を極めたスタイルを取らざるを得ません。
「俺についてこい!」式や「俺の指示した通りにやれ!」式では、本田選手の場合、そもそも、ビジネスが成立しません。
おそらく1年の半分以上はサッカー選手としての活動に時間を費やしているのでしょうから。
本田選手は、おそらく経営のパートナーや現場へ自分の想いをいかに上手く伝えるか、その想いをいかに浸透させるか、腐心しているはずです。
2.本田選手への取材記事
経営者としての本田選手の考え方に興味が沸きます。
本田選手が取材に応じて発したコメントと取材者による解説文の中に、思いっきり共感できるものがありました。
(出典:『日経ビジネス ONLINE』2016年3月14日)
モノづくり工場の経営に欠かせない下記2つの考え方にピッタリでした。
・モノづくり事業を展開する上で、自社工場の強み(コア技術)を認識することは欠かせない。
・トップは大きな夢を語って現場のやる気を引き出す。
本田が武器にできるものとは、一体何なのか。
選手としてではなくビジネスマンとしての本田の売りが、ここからは問われてくる。
日本や欧州では通用する“本田圭佑”という看板以外の何かが、必要となってくる。
「それは僕自身の人間性です。
抽象的な言い方になってしまうかもしれないですけど、僕という人間を深く知ってもらうことが全てです。
まずはビジョン。
僕は(現役選手が経営者としてサッカービジネスを展開していくという)オンリーワンのビジョンを持っている。
その自分だけにしかないビジネススタイルがあって、それを成し遂げるだけの努力が絶対にできる自信が、僕のストレングス(強み)でしょうね。
目標が決まってからのそこに対する努力の仕方は、いろんなプロの選手を見てきたけど、自分の右に出る人はいなかった。
だから目標さえ決まってしまえば、実現の可能性を高めてみせる」
(出典:『日経ビジネス ONLINE』2016年3月14日)
現役のプロスポーツ選手が、
・一流のプレーを維持すること
・ビジネスを手掛けること
この2つを両立させること、それ自体が強みになると考えているようです。
自分にしかできないビジネスモデル。
それは、現役選手であることの強みをビジネスに生かすことです。
強みを理解したら、あとはそれを最大限に生かし邁進するのみ。
最後のコメントはかなり説得力があります。
モノづくり製造業で付加価値を拡大させる原動力はコア技術です。
コア技術 = 固有技術 + 管理技術
要素技術のみではなく、QCDを管理できている一見当たり前と思われる管理技術にも目を向けて、自社工場のコア技術を把握すべきです。
これが、工場経営でぶれない軸を構築する上で最初にしなければならないことです。
経営者の自信、現場の自信につながります。
顧客の声にも耳を傾け「ほんとうのコア技術」を明確にしたいです。
強みについての認識を工場で共有できれば、あとは自信をもって目標を定め、実行あるのみです。
また、一見無理だと思われる目標に挑戦する意義について次のように解説されています。
2014年ブラジルW杯。
サッカー日本代表はその4年前の南アフリカ大会でベスト16に進出した。
その後、徐々にサッカーの本場・欧州でプレーする日本人も増えていく中で、日本代表自身も大きな目標を掲げることになった。
そして、本田のこの発言である。
「誰が何と言おうと、W杯優勝を目指す」
(中略)
本田は、「実際に優勝することがどれだけ難しく、現実的ではないと見られていることは当然分かっていた」と、後に述懐している。
ただ、それを公言することで得られるものの大きさこそ、実は彼が求める本質であるように思える。
一見無理だと思われる目標を立て、そこに邁進する。
結果はその時にならないと分からない。
仮に適わなかったとしても、そこに残るのは悔しさだけではない。
目標に向けて必死に知恵を絞って汗を流したことで手にした成長と充実感。
それこそが、人を強くし、組織を太くしていくエネルギーだと、本田は考える。
(出典:『日経ビジネス ONLINE』2016年3月14日)
「一見無理だと思われる目標」を「夢」と置き換えて解釈しました。
やはり、経営者は現場に夢を語るべきです。
夢を経営者の頭の中に留めておかず、それを表明することで組織に活力を与えます。
夢が現場にいろいろと働きかけてくれます。
人は誰でも自分の成長を期待します。
職場の将来について知ることができず見通しが立たない状況や、反対に経営者自らが職場や工場の成長を否定し現状維持を容認する姿勢を示したため、将来がすっかり見えてしまった状況では、現場で働きがいを感じる機会がありません。
将来の成長を期待できない職場でのモチベーションは下がる一方です。
一方で、経営者が大きな夢を語る職場や工場はやる気で満たされます。
職場や工場の将来のワクワクする夢を耳にすることで、自分も役に立ちたいと自然に考え、行動に移します。
夢は大きいほどイイと思います。
実力以上の目標であっても、そこへたどり着く過程で得られる財産が大きい。
経験値が上がることで、次へつながるスキルを身に着けています。
夢に挑戦する前よりも確実に組織のポテンシャルは上がっている。
さらに、共に挑戦した仲間たちとの一体感が強まります。
今後、より深く複雑な仕事をやらねばならない時も、連携してこなしていくチームワーク力が組織に蓄積されているはずです。
夢を語ることは、組織の力がスキルの面でもメンタルな面でもすべてにわたって向上させる機会を増やします。
逆に、夢が全く語られない現場を想像すれば、夢が語られることによる組織への効果が思い浮かぶはずです。
本田選手は現役のプロプレーヤーであることを考えると、経営者としてビジネスをグローバルに展開していくうえで、「夢を語る」ことをとても大切にしているのではないかと思います。
まとめ。
モノづくり工場でコア技術と夢はとても大切である。