『なぜ危機に気づけなかったのか』で問題発見力醸成について考える
大学のプロジェクト型の教育カリキュラムを調べてみたところ、短期間で結果を出させるためか、提供された問題をチームで解決に導く、というものだった。
ケースを使った研修も、自分で問題を発見させるというより、問題は(後付けで)見えていて、それをどう解決したかが主眼になってしまう。
問題発見からの研修だと、様々な問題の解決策をそろえる必要があり、準備も大変である。
だから、とりあえず、一番可能性のありそうな問題から出発することになってしまう。
でも、今本当に必要なのは、正しく問題を発見することなのである。
なぜなら、問題さえ明確になっていれば、世界中の人の知恵を借りて解決することが可能だからである。
『なぜ危機に気づけなかったのか—組織を救うリーダーの問題発見力』(マイケル・A・ロベルト、英治出版)は、そのような問題意識から読むことにした。
本書はそもそも、リーダーが読むべき本という位置づけだと思う。
私のような読み方は特殊かもしれない。
ここで書かれている「優れた問題の発見者になるためにリーダーが身につけるべき七つのスキル」は、
① 情報のフィルターを避ける
② 人類学者のように観察する
③ パターンを探し、見分ける
④ バラバラの点を線でつなぐ
⑤ 価値ある失敗を奨励する
⑥ 話し方と聴き方を訓練する
⑦ 行動を振り返り、反省のプロになる
である。
いずれも、特別変わった内容ではなく、色々なところで語られているものだと思う。
ただ、私は、自分の問題意識から次の点に注目した。
率直で効果的な話し方
・聞き手のことを知る
・これまでのいきさつを理解する
・支持者を探し同盟を組む
・腹心やゲートキーパーを通じて働きかける
・まず考え方を変えさせることに焦点を絞る
・解決の選択肢を提示する
聴き方についての指南はかなり多く見受けられるが、効果的な話し方については(プレゼンテーション・スキル以外は)あまりお目にかかれない。
これは学ぶべきだと思う。
さらに、問題発見には「知的好奇心」が必要だということ。
疑問を持てばインターネットの力を借りれば知識は得られる。
そもそも関心を抱かなければ何も始まらない。
年を取ると好奇心が失われるという。
知的好奇心を持ち続けることは、リスクマネジメントにも重要である。
※2014年1月に書かれた記事です。