『ジャッジメントコール』で組織の意思決定について考える
会社を定年退職して4か月。
自営業とは言っているものの誰も信じていないようだ。
事業収入は微々たるもの。
いや、まだ仕込みの段階なので、来年になればきっと仕事が入るはず、とひとり呟く。
勤め人だった頃に戻りたいか、と問われたら、Noと答える。
誰かの指示で動くのではなく、自分の意思で行動することの快感は捨てがたい。
もしも、もっと出世していたら自分の意思で仕事ができたのではないのか、と問うてみるが、違うだろう。
ワンマンのオーナー社長でもない限り、組織にいれば必ず誰かの指示で動かざるを得ない。
子会社の社長なら親会社の方針には逆らえないのだ。
そう考えてみると、組織の進むべき道を決断する機会など、誰にとっても殆ど無いのではないか、とすら思えてくる。
『ジャッジメントコール 決断をめぐる12の物語』(トーマス・H・ダベンポート、ブルック・マンビル、日経BP社)を読んで、まずそんなことを感じた。
ダベンポートという名前で思い出すのはBPRである。
マイケル・ハマーという名前も思い浮かぶ。
20年以上前に「リエンジニアリング」のブームを起こした立役者の一人ではないか。
IT業界もBPRに踊らされてそれと組み合わせて「ソリューション」なるものを売り込んでいた。
懐かしい。
でも、あれって何だったんだろう。
本書はBPRとは全く関係ない。
また、何かのプロセスやフレームワークを示したものでもない。
組織としての決断をした事例12件を物語として語ったものである。
物語なので、読み進むのが容易であり、すっと入ってくる。
ひとつひとつに学ぶところはどこか、が示されているが、押し付けがましくはない。
あとは読み手の捉え方次第だということなのだろう。
物語は4つに分けられている。
・参加型の問題解決プロセスをめぐるストーリー
・技術と分析をめぐるストーリー
・文化の力に関するストーリー
・新しいリーダーたちのストーリー
いずれも、強力なリーダーがリーダーシップを発揮して決断する、というものではなく、様々なプロセス、ITのツール、企業文化などを武器として、組織として決断するというものである。
ここに語られた12の事例ほど大きなものはなくとも、何かしらの組織としての決断を迫られた経験はきっとあるはずだし、これからもあるだろう。
大切なのは、目的、目標を共有し、諦めずに知恵を出し合い、最後までやり遂げる意志の強さなのだと思う。
※2013年12月に書かれた記事です。