【回転機械の状態監視】vol.1 大型回転機械の状態監視とAPI規格
各種産業分野で多くの回転機械が使われており、その中でも重要なものに関しては機械の状態、特に振動の定期的な監視や常時監視が行われ、効率的なメンテナンスや異常解析、診断などに利用されています。
今回から数回にわたって、特にタービンや圧縮機などすべり軸受を持った大型回転機械の状態監視について説明します。
大型回転機械の状態監視とAPI規格
蒸気タービンや遠心圧縮機のようなすべり軸受で支持された大型回転機の状態監視や振動診断を行うためには、軸振動の測定が不可欠な項目です。
このような用途では一般的に回転している軸の挙動を測定するために非接触の振動センサが使われています。
非接触振動センサには、光学式のものや静電容量式のものがありますが、これらは機械油の飛散するような環境では正常に計測することができず、原理的に機械油の飛散するような環境でも影響を受けない渦電流式変位センサが使用されています(下記画像参照)。
一般的に軸振動計測用の渦電流センサはAPI 670規格に準拠したセンサを使うことが多く、軸受に取付ブラケットを使って固定され、軸と軸受の相対的な振動を計測するものです。
センサは軸に対して通常1.2mm前後のセンサ設定距離(ギャップ)をもって固定されます。
API 670規格とはアメリカ石油協会(American Petroleum Institute)の規格で、石油精製、石油化学プラントにおける重要な回転機械の監視・保護機器に関する詳細な要求事項が示されたものであり、現在2000年12月発行の4th Editionが最新版として適用されています。
この規格は表1のタイトルが示すように、当初非接触の軸振動と軸位置の監視システムに関するものでしたが、2nd Editionからケーシング振動やベアリング温度なども取り込み、4th Editionでは機械の保護に関する重要なパラメータとして回転数、オーバースピード検知、更に回転機械ではありませんがレシプロコンプレッサのピストンロッドドロップ監視なども取り込みタイトルを「Machinery Protection Systems」と改訂しています。
API 670規格はアメリカの規格ですが、これに相当するような詳細な要求事項を盛り込んだ国際規格が存在しないこともあり、石油関連プラントでは広く世界的に適用されているのが実情です。
また、API 670規格は当然ながら事業用発電タービンを対象としたものではありませんが、これらを対象とするタービン監視計器(TSI = Turbine Supervisory Instruments)においても重要な監視パラメータである軸振動、軸位置監視など詳細に規定されており、やはりAPI 670規格に準拠したセンサや監視モニタがTSI用としても利用されています。
次回は、API670やTSI用として最も多く使われている渦電流式変位センサに関して説明します。
出典:『技術コラム 回転機械の状態監視や解析診断』新川電機株式会社