『ストラテジック・イノベーション 戦略的イノベーターに捧げる10の提言...

『ストラテジック・イノベーション 戦略的イノベーターに捧げる10の提言』って本当?

65歳で最後の会社を退職して1か月以上経った。

インプットばかりでアウトプットは全く無かったような。気持ちを入れ替えて、アウトプットできるように努力しよう。

 

退職間際に、これまでの40年+αのことを若い人たちに話すことがあった。

ずっと同じ会社に勤め続けていたわけではなく、色々な職場を転々としたことなど、最近人に話すことはほとんどなかったし、もう最後なのだからと、つい調子に乗ってしゃべった。

その中で、若い人の反応に「ん?」と思うことがあった。

 

例えば、

「子供を抱えて仕事が無くなりそうだったとき、何とか自立するのによい資格はないものか、と考え抜いて“技術士”にたどりついた。かつて勤めていた会社の名前しか知らない大先輩に手紙を書いて受験の仕方について教えを乞い、さらに、新たな仕事を紹介してもらった」

という話をしたときに、「戦略的にキャリアを積んで来たんですね」と言われたことである。

 

これのどこが「戦略的」なんだろうか。

 

手紙を差し上げた大先輩がここまで親身になってくださるなんて予想もしていなかった。

私のかつての行動は、いずれも「戦略的」からほど遠く、ただ、もがきながら必死でがんばっていただけなのだ。

結果として、それが良い方向に転がることはあったのだが、大抵、想定外の出来事だった。

 

今日の本は、『ストラテジック・イノベーション 戦略的イノベーターに捧げる10の提言(Harvard Business School Press)』(ビジャイ・ゴビンダジャラン、クリス・トリンブル、翔泳社)である。

本のタイトル自体にも惹かれたが、購入のきっかけは著者のビジャイ・ゴビンダジャランの『リバース・イノベーション』が印象深かったので、同じように面白い視点があるのでは、と興味を持ったことである。

 

大企業で新規事業を起こして発展させるというイノベーションを戦略的にどう実現していくか、を新規事業部門と既存事業部門の関係を中心に論じている。

内容的には「そうだろうな」と納得できるのだが、実際に行うのはかなり難しいのではないか、とも思う。

要は、私自身が大企業における新規事業開発、展開からはかなり距離があるので、あまり響かなかったのかもしれない。

 

イノベーションはValue Creationを中心に語られることが多いが、Value Capturingの方がずっと大変である、という主張もされている。

でも、それって、ずいぶん前から言われていることなのではないのか。

やはり、ここでも、「戦略的」にひっかかってしまった。本当に、戦略的なイノベーションってあるのだろうか?

※2013年10月に書かれた記事です。


1948年東京生まれ 石田厚子技術士事務所代表 東京電機大学情報環境学部特別専任教授 技術士(情報工学部門) 工学博士 ◎東京大学理学部数学科卒業後、日立製作所入社。コンパイラ作成のための治工具の開発からキャリアを始める。 5年後に日立を退職し、その後14年間に5回の転職を繰り返しながら、SEなどの経験を通じてITのスキルを身に着ける。その間、33歳で技術士(情報工学部門)取得  ◎1991年、ソフトウエア開発の生産性向上技術の必要性を訴えて日立製作所に経験者採用。生産技術の開発者、コンサルタントとして国内外にサービスを提供  ◎1999年 企画部門に異動し、ビジネス企画、経営品質、人材育成を担当。57歳で「高い顧客満足を得る商品開発への影響要因とその制御」論文で工学博士取得  ◎2007〜13年、日立コンサルティングでコンサルタント育成に従事。「技術者の市場価値を高める」ことを目的とした研修を社外に実施  ◎2013年 65歳で日立コンサルティングを定年退職し、石田厚子技術士事務所を開業。技術者の市場価値を高めるためのコンサルティングと研修を実施  ◎2014年 東京電機大学情報環境学部の特別専任教授に就任