地域問題の解決を高付加価値化の切り口にする
高付加価値化をどのように達成しますか?
材料費や外注費を中心に費用を削減することは思い浮かぶが……。
単価アップや販路拡大の具体的なアイデアがなかなか浮かばないなぁ。
単価アップや販路拡大を考える時、何をキッカケにすればイイだろうか?
地域問題を解決し、社会価値と企業価値の両立を図るビジネスモデルもあります。現場が働きがいを感じる機会も増えそうです。
1.働きがいを感じさせ創造力を発揮できる場を生む
「存続する・成長する工場」とは付加価値を拡大できる工場のこと。その付加価値を拡大させる源泉は従業員の創造力です。創造力を発揮できる場を生むことが経営者の課題です。
そのために重視すべきは、給料を上げることでも労働条件を良くすることでもなく(当然こうした側面も欠かせないですが)、仕事のやりがいを感じさせることです。現場が自らの成長を実感できる機会をドンドン作ることです。
これが、人に動いてもらう事が本質である工場運営や工場経営の要諦です。
2.付加価値を拡大するための2つの方針
さて、付加価値を拡大する方向性は2つあります。付加価値の定義から理解できます。
付加価値=売上高-工場の生産量に比例して出費される費用項目の総額
1)売上高 ↑(増)
2)工場の生産量に比例して出費される費用項目の総額 ↓(減)
1)と2)により付加価値を拡大させることができます。どちらも数値で表現させることが可能です。ですから獲得すべき付加価値を明確にできます。定量的な定義に基づいて、生産現場での取り組みの目標も明確にできます。
目標利益は“積み上げる”という対応になります。「ヨクワカランケド、結果として利益が出た」ではなく「利益を積み上げた」という考え方が可能です。特に、2)の活動では、現場の自発的な創造性を生かせます。
付加価値に着目すると、工場の一体感が生まれやすい。現場での活動が、利益にどう貢献しているか理解しやすいからです。根拠があると人間は頑張れる。
一方、1)の活動で売上高を増やすには、どのような切り口で考えるでしょうか?
売上高 = 単価 × 販売数量
- 高付加価値製品(サービス)を開発し単価を上げる。
- 販路開拓によって販売数量を増やす。
- 市場(顧客)の潜在的なニーズをキャッチすること
- 自社の強みを活かすこと
- 千葉県の名産である落花生に着目し、廃棄される殻を用いた消臭剤を製造・販売するプラン
- 食用瓢箪を活用した苗の販売、イルミネーション製作体験教室、および参加型イルミネーションイベントの開催により、地域振興を図るプラン
- キノコから抽出した植物成長調整物質「AOH」を活用し、製紙廃材と組み合わせた土壌良資材を製造・販売するプラン
モノづくり工場としては高付加価値製品、あるいはサービスの開発という視点を強化したいです。営業力強化による販路開拓も重要です。
ただ、競合も同様な戦略である場合、販路開拓競争は価格競争に陥る懸念があります。
したがって、競合と差別化が可能な高付加価値製品、あるいはサービスによって、価格競争を回避できるポジションに自社を置くことを考えねばなりません。
持続的な競争優位を確立するためです。
1)の活動のためには、こうしたことを経営者は考え続けます。
3.高校生ビジネスプラン・グランプリ
平成28年1月、政府系金融機関である日本政策金融公庫が主催した「高校生ビジネスプラン・グランプリ」最終審査がありました。
平成25年から始まって3回目のイベント。日本は長期的に開業率が低迷しており、活力があり、成長する日本を創っていくためには、次世代を担う若者の創業マインドの向上を図り、開業率を挙げていくことが必要であるとして、日本政策金融公庫が高校生を対象に開催しています。
今年は、下記のビジネスプランが受賞しています。
グランプリ
シックスクール症候群で学校に行けない生徒を通学できるようにするため、国産のスギ材を用いた「ユニットタイプの箱型教室」を開発・販売するプラン
準ブランプリ
四国八十八カ所の各寺に貸出・返却できるレンタルサイクルを設置し、自転車での巡拝をサポートするプラン
審査員特別賞
エントリー総数は264校、2,333件の応募があったそうです。募集対象となったビジネスプランに期待されたことは下記です。
1.若者ならではの新しい発想を生かしたビジネスプラン
2.地域の身近な課題、環境問題など社会的な課題を解決するビジネスプラン
上記に挙げたそれぞれのプランは、各地域ならではのプランであることがわかります。
大人からの指導があったとはいえ、地元に注目してビジネスの芽を探し、実現可能な形に仕上げた高校生の意欲に感心しきりです。
「事業の目的は顧客を創造することにある」とするならば、シーズ志向で市場に先駆けて新たな製品を開発し「新市場」を開拓するという事業戦略が掲げられます。その一方で、地域で困っている問題点や潜在ニーズを取り上げ、それらを解決する事業戦略もあります。
多くの若い人財はこれを学んでいるわけです。頼もしい限りです。
4.CSV「Creating Shared Value」で働きがいも高まる
地域の問題を、自社の事業を通じて解決していくビジネスモデルが注目されています。
CSVと呼ばれています。「Creating Shared Value」の略で、「共有価値の創造」「共通価値の創造」と訳されます。
2014年版中小企業白書では、
「社会価値と企業価値の両立は、中小企業・小規模事業者でも実践し得るし、むしろ古くから地域に根ざして事業を行ってきた中小企業・小規模事業者にとって、直面する地域特有の課題にこそ、新しいビジネスの可能性、生きる道があるのではないか」
と提言しています。地域に密着した中小モノづくり工場ならではの強みが発揮されそうです。
小企業・小規模事業者が地域課題の解決に自らの事業として取り組むことは、課題解決による地域活性化と、それによる企業利益の増大という好循環を生み出すことが期待されています。(出典:2014年版中小企業白書 第3-5-47図)
各地域に根差した中小企業モノづくり工場で、新たな付加価値を考える時の切り口として「地域の問題解決」を検討する価値は大いにあります。
白書でも指摘しているように「地域課題の中に眠っている地域住民の隠れたニーズは、決して大きなビジネスにつながるわけではない」かもしれません。
しかし、モノづくり工場が持つ独自技術やノウハウが地域の問題解決に役に立っているという実績は、社外的には地域での知名度や信頼を高め、社内的には従業員の働きがいを高めることに繋がります。
会社を誇らしく思える従業員が増えます。大手企業が絶対にマネのできない、地域に根差した中小企業モノづくり工場ならではのビジネスモデルになり得ます。
高付加価値化を考える時、自社の強みを活かして地域の問題を解決できないだろうかという視点も加えてください。
まとめ
単価アップや販路拡大を考える時、何をキッカケすればイイだろうか?
地域問題を解決し、社会価値と企業価値の両立を図るビジネスモデルもある。現場が働きがいを感じる機会も増える。自社の強みを活かして地域の問題を解決できないだろうかという視点で高付加価値化を考え、従業員の働きがいを高める。