4つの敗因

4つの敗因

顧客に選ばれる製品を造っていますか?

1.半導体業界

伊藤が学校を卒業して社会人になったのは1990年頃、いわゆる平成バブルが崩壊した前後です。

学生気分が抜けていなかった当時の私は、能天気にも、経済にあまり興味を示さず、当時がそのような時であったと理解したのは、それから数年後のことでした。

(当時の就職戦線は“超”売手市場でした。

その後、就活で苦労している学生の話を耳にするに付けて申し訳ない気分にさせられます。

昨今、また売手市場のような感じですが、当時とはくべられないほど時代が複雑化してますね。)

 

ただ、当時のこととして強く記憶にあるのは国内半導体業界の勢いです。

半導体は「産業の米」と表現され、NEC、東芝、日立、富士通、三菱電機…、そうした大手メーカーが半導体事業に力を入れていました。

 

今では想像もつかないことですが、日本勢の半導体世界シェアは当時で50%程度を占めるに至っていたようです。

それが2017年には7%までに落ち込み、2018年時点で世界半導体上位10社からも日本企業は姿を消しました。(米国ガートナー社調べ)

半導体の重要性が、今後、ますます高まるであろうことは明らかです。

ICTを駆使したIOTとAIとの融合で、これからの商売ではデータを制することが勝つための条件となっています。

こうした超デジタル化社会の技術の中核に位置づけられるのが半導体技術です。

戦略的に重要な業界にも関わらずなぜ国内半導体業界は世界に破れたのか?

日本経済新聞2019年2月18日で「平成日本失速の研究 日の丸半導体4つの敗因」で解説されていました。

 

100年に1度の大変革期にあるとされる国内自動車業界はトヨタ自動車を先頭に国内製造業を引っ張っています。

「Connected:コネクティッド化」「Autonomous:自動運転化」「Shared/Service:シェア/サービス化」「Electric:電動化」の頭文字をならべた「CASE」が今後の自動車業界における技術のうねりです。

外部との連携も模索しながら生き残りを掛けて、こうした変化に対応しながら、グローバルに戦っている自動車業界とは対照的な半導体業界だったようです。

2.4つの敗因

何が敗因の原因だったのか?識者の見解を4つにまとめています。

1)組織と戦略の不適合

2)経営者の質

3)強すぎる自前意識

4)技術偏重、マーケティング軽視

 

1)組織と戦略の不適合
大手半導体メーカーは総合電機メーカーでもあり、いわゆるなんでもありの総合スーパーマーケットでした。

半導体事業は総合電機事業の一部門として産声を上げています。

事業が成長段階にある時期は、”総合スーパーマーケット”の資本力も生かし、事業を育成することに成功しています。

80年代に米国半導体業界に肩を並べる水準にまで至ったのです。

 

しかしながら、ビジネスの規模が大きくなり、迅速な経営判断、思い切った意思決定が求められると、その存在が足かせとなりました。

“総合スーパーマーケット”の他部門と横並びで見られていては、意思決定のスピードを望むべくもありません。

総合電機メーカーの経営者が重電出身であっては、半導体事業で独自の経営判断をするのは難しいでしょう。

総花的は判断しかできないのは火を見るより明らかです。スピードと思いっきりさを求められた競争から弾き飛ばされました。

 

一方、自動車メーカーは“自動車”を造っています。

イイ車を造るという1点でベクトルが揃います。経営者の想いも製品に込められやすく、この点では組織と戦略が一致しやすいです。

 

中小の製造現場はもともと柔軟性、小回り性、機動性という強みがあります。

独自の製品、部品を手がけていることも多いでしょう。

経営者と現場との距離が近いことも有利に働いて、経営者の迅速な意思決定、現場への浸透が可能です。

 

2)経営者の質
元エルピーダメモリ社長の坂本幸雄氏は、グローバルに戦う半導体企業のトップ像を語っています。

トップ自らアンテナを世界に張り巡らし、必要ならば現地に飛んで直接交渉をするだけの人脈と能力が必要だが、「残念ながらそんな人はごくわずかだった」らしいです。

上記の1)とも関連があるかもしれません。

社内の出世競争を勝ち抜き、大手トップに立った経営者は社内に通じていたかもしれませんが、半導体業界で身体を張って戦った経験には乏しかったということでしょうか。

中小の製造企業トップは創業者であれ、継承者であれ、多くの経営者はみずから営業も、現場も手がけている場合も少なくなく、規模こそ違いますが、業界をしっかり把握しています。

 

3)強すぎる自前主義
必要な技術やノウハウを外部から手にいれることが苦手であったため有力なファブレス企業が生まれなかったとの指摘がなされています。

ファブレス企業とは工場をもたなメーカーのことです。

そうした企業は、知的財産が命脈を保つのに絶対であり、知財を拡充するのに買収を活用していました。

時間を買うために、補完したい技術は外部から入手したというわけです。

 

一方、国内半導体企業は自前の技術にこだわりました。

その結果、強みの強化で遅れをとったと考えられます。

時間を買う発想がなかったとも言えるのではないでしょうか?

 

中小の製造現場でも外部の力を借りて、事業のステージを高める、成長と発展を加速させる、こうしたことを実現させている経営者が増えてきました。

弊社も、事業のステージを高めたいと熱望している中小製造現場の経営者からご相談をいただきます。

是非、時間を買っていただきたいです。自前で全てやる必要は全くありません。

大いに外部の力を生かして、欲しいところです。

時は金なりですから。

 

4)技術偏重、マーケティング軽視
「半導体の集積密度は2年で倍増する。」

ムーアの法則です。

 
 
半導体の微細化技術の動向を予測した経験則として有名ですが、どうやら2000年頃から半導体業界の競争ルールが変わったとの指摘があります。

微細化技術でリードすれば勝てる市場ではなくなり、戦略的な顧客と二人三脚で用途開発し、需要を創造する努力が重要になったとのことです。

 

これは、半導体業界に限らず、モノづくり業界全般にも当てはまります。

顧客へ届けたい価値、すなわち付加価値はどこで生み出せるか、という本質的な問いです。

中小のモノづくり現場ではもう、既に感じていることでしょう。

顧客に言われたモノを造っているだけでは儲かかりません。

中小現場が生き残るためには、価格競争を回避する必要があります。

 

いわゆるスマイルカーブです。

付加価値額を積み上げたかったら、モノづくりの入口を出口に注目ということです。

デザインインとサポートサービス。

中小モノづくり現場でも、自社で製造する部品や製品、商品を使う顧客の顔を思い浮かべられるようになることがもとめられます。

 

3.もう一度、4つの敗因

1)組織と戦略の不適合

2)経営者の質

3)強すぎる自前意識

4)技術偏重、マーケティング軽視

 

これら4つは国内半導体業界に限定された話ではなさそうです。

中小製造経営者も、こうした事態に直面していなか、そしてどうすべきかを考える必要があります。

 
 
繰り返し申し上げていますが、儲かる工場経営の要諦は下記です。

「顧客に選ばれる製品を効率よく造ること。」

ここで特に申し上げたいのは前者です。

 

80年代、90年代、世界を席巻していた国内半導体メーカーは、知らす知らず「顧客に選ばれない製品」を造っていたことになります。

皆さんの現場でも、「顧客に選ばれる製品」を生み出すのに、何をどれだけやっているか振り返ってください。

効率よく造ることは、大事なことですが、それと同じか、それ以上に、顧客に選ばれる製品を生み出すのは儲かる工場経営には欠かせません。

 

4つの敗因は、全て「顧客に選ばれる製品」を生み出すことに関わっています。

顧客に言われるモノだけを造っていては、儲からない時代となりました。

価格競争に陥るだけです。

価格競争を回避するモノづくり戦略が中小製造企業に求められます。

 

現場の豊かな成長を目指したいのなら、付加価値額を積み上げる戦略が欠かせません。

では、付加価値額を積み上げるにはどうするか?

儲かる価格設定、儲けの見える化で付加価値額を積み上げる体制をつくりたいです。

 

貴社でも4つの敗因を振り返り、付加価値額を積み上げるモノづくり戦略を構築して下さい。

弊社も独自のプログラムで挑戦する経営者の後押しをして参ります。

顧客に選ばれる製品を生み出す仕組みをつくりませんか?

 

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製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)