2次元シンボルの用途

2次元シンボルの用途

近年、2次元シンボルは広く知られるようになり、特別な自動認識技術ではなくなった。

2次元シンボルの登場からおよそ20年になるが、2次元シンボルの開発競争の時代からアプリケーション毎に2次元シンボルを使い分ける共存の時代へ変わり、そして、2000年以降、ISO/IEC標準化により淘汰と普及の時代を迎えた。

また、イメージセンシング式のバーコードリーダの普及は、バーコードと2次元シンボルを意識せずに読み取れる環境を提供し、2次元シンボルを必要に応じてごく自然に使用できるようになった。

 

そして、今、2次元シンボルは、トレーサビリティ実現のためにRFIDとの共存を探り、また、携帯電話によるe-Barcodeやモバイルバーコードのアプリケーション開発が行われている。

EDIに使用される2次元シンボル

EDI(電子データ交換)による取引では、注文データ、納品データ、および検収データ等々、様々な取引データが通信回線を使用して伝送されるが、通信設備を持たない企業間取引では、それらの電子データを印刷して利用することがある。

これはペーパーEDIと言われ、EDIの底辺を支える重要な技術であり、2次元シンボルがそれを支えている。

また、物流管理においては、バーコードが広く利用されているが、事前にバーコードをキーにした出荷情報を受け取っていない限りそれを利用することはできない。

 

例えば、事前出荷明細ASN(Advanced Shipping Notice)より商品の方が早く到着した時は、バーコードを利用できない。

そこで、出荷ラベルに納品情報の2次元シンボルを印刷し、EDI情報と商品を共に移動させれば、何時でも何処でも確実な受入処理を実現することができる。

この仕組みは、様々な通信インフラやシステムに対し要求されるグローバルなSCM(Supply Chain Management)では特に重要であり、このために国際標準化機構ISOは、国際輸送標準ラベルISO15394(JIS-X-0515)を規格化している。

 

EDI情報を2次元シンボル化するアプリケーションでは、数百バイトのデータをエンコードする必要があるため、ISO15394では、EDIで多くの実績があり大容量データに適したPDF417が選択された。

PDF417は、シンボルの形状が伝票やラベルサイズに合わせてシンボルの縦横サイズ自由に変更できること、イメージスキャナばかりでなく低価格なCCDスキャナやレーザスキャナでも読み取りできることが特長である。

日本では、EDIアプリケーションにQRCodeが広く使用されている。

 

QRCodeは、PDF417と同様に大容量データに適しており、しかも、PDF417より情報化密度が高くシンボルを小さくできることが特長で、日本自動車工業会や日本自動車部品工業会の共通カンバン伝票にいち早く採用された。

そして、日本百貨店協会が2002年に設立した「2次元シンボル分科会」において「2次元シンボルSCMラベル・納品伝票ガイドライン」に基づく、業界全体の導入に向けた利用研究を行った。

百貨店業界は、一部の百貨店と取引先の間でEDI取引とSCM(Shipping Carton Marking)ラベルによるバーコード受入検品が行われているが、取引先は中小、零細企業が多いため商取引情報の伝達の自動化が不十分となっている。

 

そのためQRCodeを表示したSCMラベルおよび納品伝票による納品・検品システムが有効と考えガイドラインの策定に至ったものである。

仕分用に使用される2次元シンボル

物流センターにおける高速仕分は、物流の効率化を実現するために重要なテーマであり、高速読取ができること、読取方向に制限がないこと、シンボルが小さいことから2次元シンボルが注目されてきた。

宅配配送の最大手である米国UPS社は、1987年に仕分用の2次元シンボルMaxiCodeを開発し実用化した。

その実績が評価され、ANSI(米国規格協会)で規格化され、ISOの国際輸送標準ラベルISO15394の仕分シンボルとしても採用されている。

 

MaxiCodeは、読取時間を短くするために情報量は英数字で最大93字と少なく、更にシンボルサイズも約1インチ角と固定になっている。

そのため、情報量が可変で、情報化密度も高く、バイナリーデータまで利用できる近代的な2次元シンボルに比べるとかなり見劣りがするが、仕分用としては逆に優れていると言える。

また、拡張チャンネル解釈を使用すれば漢字やハングル語等の2バイトコードを使用できるようになっているが、住所や配送先名には少々情報量不足である。

 

しかし、そもそも仕分用シンボルは、物流業者が使用するためのシンボルで、物流業者は、国コード、仕分コード、サービスクラスなどの情報があれば充分であり、かな漢字が必ずしも必要でないので大きな問題とは言えない。

全日本トラック協会では、1997年から2000年に共用送り状委員会において共用送り状・共用輸送荷札ガイドラインを策定し、仕分用にMaxiCode、EDI用にQRCodeを使用している。

このガイドラインは、可能な限り国際輸送標準ラベルISO15394に準拠したものとなっている。

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商品識別に使用される2次元シンボル

2次元シンボルは、バーコードがマーキングできない小さな商品に広く利用されている。

特に産業分野では、部品、ユニット、アッセンブリ、製品等、様々なレベルの製品番号に利用され、また、家電製品等では梱包ラベルにも利用されている。

近年、部品やユニットの小型化は顕著であり、また、製品コードの複雑化による情報量の増加は、2次元シンボルに最適なアプリケーションとなっている。

 

また、今後、更なる省スペース化が求められるとラベルマーキングが不可能になり、レーザマーキングに移り変わっていくと考えられる。

レーザマーキングは、省スペースばかりでなくランニングコストの削減にもなるが、レーザマーカ装置が高価であることと、安定した読取が困難であると言う課題がある。

レーザマーカの原理は、レーザで表面を削り乱反射させて濃淡を描く方法、変色させて濃淡を描く方法、表面のコーティングを飛ばして描く方法がある。

 

したがって、マーキングする材質によってCO2やYAGなどレーザの種類を選択すると供に、レーザ光のスポット径やレーザ照射時間を細かく調整しなければならないので、バーコードラベルのように簡単に導入できない。

また、鏡面反射や少ないコントラストでも安定した読取を行うためには特殊な光源が必要となり、当然リーダ価格も高価になる。

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新しい流通用バーコードシンボル

化粧品、医薬品、医療材料、文具、貴金属等の小物商品では、JANコードをマーキングする場所ないために、検品システムやPOSシステムの導入が困難であった。

そこで、2次元シンボルはこれらの問題を一気に解決してくれる救世主と期待されていたが、宝石店や眼鏡店の一部で使用されている以外はそれほど普及していない。

それは、高付加価値商品には独自に商品タグを作成し付けることはできるが、汎用商品ではソースマーキングが不可欠であり、また、そのための2次元シンボルの標準化ができていないことが課題となっている。

 

また、2次元シンボル対応のリーダは、バーコードリーダよりまだまだ高価であり、現状、POSシステムのリーダを全て2次元シンボル対応に交換する投資を誰も望んでないこともある。

この要求に応えて、GS1(EAN.UCC)は、2000年に小物商品の管理を目的とした省スペースのバーコードRSS(Reduce Space Symbology)と合成シンボルを開発し標準化した。

RSSは、14桁のグローバルロケーションナンバーGTINを表すRSS-14ファミリーと、梱包インジケータを0と1に限定することによってシンボルサイズを更に小さくしたRSS-14 Limited、そして、GS1-128のようにアプリケーション識別子を利用してデータの連結ができるRSS Expandedがある。

 

RSS-14ファミリーは、スタンダードの他に、バーの高さを制限したトランケーション型、2段にしたスタック型、また、オムニスキャナでの読取を考慮したオムニスタック型がある。

RSSシンボルは、2007年よりGS1 Databarに改名された。

医薬品や医療材料業界は、いち早くこのシンボルに注目し、日薬連は、このシンボルを2006年9月医薬品標準バーコードのガイドラインに採用した。

 

アンプルやシリンジのような細長い商品にRSS Limitedを推奨し、バイアルなどの正方形の印字スペースがある製品にはRSS-14 Stackedを推奨している。

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流通用の複合シンボル

GS1は、RSSシンボルと共に合成シンボル(Composite Symbology)を開発し2000年に標準化した。

合成シンボルは、ベースとなるバーコードとその上に付加された2次元シンボルで構成されている。

ベースになるバーコードは、EAN/UPC、GS1-128およびRSSで、商品識別のための商品コードまたはグローバルロケーションナンバーGTINを表す。

 

そして、有効期限、数量、ロット番号等の商品補足情報は、MicroPDF417またはPDF417の2次元シンボルで表す。

合成シンボルには、CC-A、CC-B、CC-Cの3種類がある。

CC-Aは、2、3または4列のデータカラムで構成され、3行から12行に制限されたMicroPDF417を使用しており、最大桁数は56桁である。

 

CC-Bは、MicroPDF417をそのまま使用しており、最大桁数は338桁である。

CC-は、PDF417をそのまま使用しており、最大桁数は2,361桁である。

2006年、日薬連は、医薬品標準バーコードのガイドラインでRSSシンボルのCC-Aを採用している。

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携帯電話によるe-Barcodeソリューション

今日までのバーコードは、紙メディアをベースにしてきたが、インターネットとバーコードを融合化したe-Barcodeは、携帯電話等のディスプレイメディアをベースにしているので、バーコードの歴史を大きく変える可能性がある。

従来のバーコードは、簡単に印刷できデータを書き換えることができないことが特徴であったが、ディスプレイバーコードは、表示するデータを簡単に変更できるのでリライタブルなバーコードメディアとなる。

現在、対象となるメディアは携帯電話であるが、ペーパーディスプレイ時代が到来すればその利用範囲は限りなく広い。

 

例えば、作業指示書やメニューシートは、タイムリーに必要なバーコードを表示して何度も利用することができる。

このディスプレイバーコードは、紙を必要としないので、30年のバーコードの歴史にとって新しい道を切り開いていくことになろう携帯電話は、個人が携帯し使用するものであるから、ディスプレイバーコードとしての価値以外に個人認証にも利用されている。

例えば、イベントの入場券の代わりに入場認証用シンボルを表示したり、個人の認証バーコードを表示してポイントカードに利用したりしている。

 

携帯電話の小さな画面に数十バイトの情報を表示できる2次元シンボルは、このアプリケーションに最適であり、現在、情報化密度の高いQRCodeが広く利用されている。

e-Barcodeのもう1つの代表的なアプリケーションは、Webリンクである。

これは、WebページのURLを2次元シンボルにして、カタログ、広告、ポスター等に予め印刷しておく。

 

それを携帯電話に内蔵されたカメラリーダで読み取ることによって、URLをキー入力せずに簡単に目的のWebページに接続できる。

この場合でも、情報化密度の高いQRCodeが広く利用されている。

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トレーサビリティを可能にする2次元シンボル

BSE問題を発端に食品の安全と安心が注目され、そのためにトレーサビリティの確立が急務となっている。

トレーサビリティとは、問題が発生した時に生産、加工、流通のあらゆる段階を通じて、それらをトレース(遡及)できるようにすることであるが、同時にトラッキング(追跡)できるようにすることも重要なテーマである。

この情報の双方向性を実現するためには、固体別またはロット別の情報管理が必要であり、それを確実かつ効率的に行うために自動認識技術は不可欠である。

 

トレーサビリティは、生産から流通まで複雑な経路を辿ることから、商品IDのみで管理することは困難である。

したがって、商品コードの他に、原材料名称、製造日、正味期限、ロット番号、原材料工場コード、原材料工場名などの情報も必要となる。

これらの情報を記録するためには、2次元シンボルまたはRFIDが最適であるが、現状では、コスト負担が比較的少なく優れた読取性能と機器互換性を持っている2次元シンボルの利用が始まっている。

 

RFIDは、スーパーマーケットで実証実験が行われ話題になっているが、コスト負担が大きいこと、使用する周波数帯の業界標準化が行われていないこと、機器互換性が不十分であることから、普及にはまだ多くの時間を要すると思われる。

また、価格的技術的課題が解決されたとしても、目視読取の必要性から2次元シンボルラベルとの併用必要である。

流通システム開発センターは、消費財メーカ履歴情報遡及システム調査研究委員会を発足させ、加工食品を構成する原材料、包装材を対象に、原材料メーカと加工食品メーカ間の入出荷業務および履歴情報遡及のシステム化、標準化を実現するための現品表示の標準データ項目、表示方法、フォーマット等について、表示ガイドラインを策定した。

 

この中で、QRCodeまたはGS1-128を使用することを推奨している。

リーダの新時代を創るイメージャ

2次元シンボルの開発は、イメージ式のバーコードリーダであるイメージャを急速に発展させた。

当初は、特定の2次元シンボルに限定された接触式イメージャであったが、現在では、主なバーコードや2次元シンボルを自動識別読取し、更に、数十センチまでの遠隔読取が可能になっている。

また、デジカメとして画像取得もでき、4206gは、OCR-A/Bまで読取できるようになっている。

 

現在は、レーザスキャナやCCDスキャナに比べ高価であるので、2次元シンボルの読取が想定できる場合にのみ使用されているが、デジカメの価格が急速に低下したようにイメージャの価格も急速に低下すれば、将来は、レーザスキャナやCCDスキャナに代わってリーダの主流になるかもしれない。

イメージャを使用する価値は、バーコード、2次元シンボル、OCR、イメージ取得などの多目的利用の他に、読取方向を意識しない多方向読取と稼動部品がないことによる高耐久性がある。

しかし、現状のイメージャは、画素数が不足しているため大きなバーコードと高密度の2次元シンボルを併読することはできない。

 

したがって、複数の焦点距離のモデルを用意し、シンボルに合わせて使い分けなければならないが、メガピクセルになればレーザスキャナと同程度の読取性能を実現できる。

また、カラーイメージャになればデジカメとしても充分に利用できる。

携帯電話には既にメガピクセルのイメージャが搭載されていることから、このような超イメージャ時代の到来は、それ程遠くないと思われる。

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提供:アイニックス株式会社

 


アペルザニュース編集部です。日本の製造業、ものづくり産業の活性化を目指し、日々がんばっています。