15年前の『7つの習慣—成功には原則があった!』に驚く

15年前の『7つの習慣—成功には原則があった!』に驚く

家にあるビジネス書で、買ってから10年以上経ったのでもう古いなと思われるものを処分することにした。

最近買った本の置き場所がなくなってしまったからである。

その時見つけたのが、1998年(初版36刷)の、『7つの習慣—成功には原則があった!』(スティーブン・R・コヴィー、キングベアー出版)である。

 

記憶では、会社で受講した「7つの習慣」の2日間の研修で配られたものだ。

一緒にバインダ―式の手帳のようなものも貰った記憶がある。

研修の内容で覚えているのは、若い女性とお婆さんの絵と、大きな石ころと砂を容器に詰め込むときには、大きな石ころを先に入れ、後から砂を注ぐとよい、といった話だけで、後は何も残っていない。

 

この本も読んだ形跡が見られない。

最初の方の若い女性とお婆さんの絵を除けば、どのエピソードも記憶にない。

石ころの話は出てこなかったので、講義の中だけなのかもしれない。

 

そんなわけで、初めてのつもりで読み進めることができた。

ところが、読んだ覚えはないのに、書かれていることは常日頃私が考えていることとほとんど同じ(ちょっと言い過ぎ?)なのである。

主体性を発揮する(第1の習慣)は、例えば楠木建さんのパクリではあるが「生き残りのためグローバル化せざるを得ない」というようなアウトサイドインの考え方を改めて、自分で「こうしよう」という意志を持つインサイドアウトの考え方をせよ、ということである。

 

目的を持って始める(第2の習慣)は、志の高い技術者になろう、という私の事務所のモットーにつながるものである。

重要事項を優先する(第3の習慣)だって、「私はいつも優先順位を考えて行動してきた」と先日もあるミーティングで話してきたばかりである。

以降の、第4の習慣(Win-Winを考える)、第5の習慣(理解してから理解される)、第6の習慣(相乗効果を発揮する)、第7の習慣(刃を研ぐ)のいずれも、私がコンサルタントの研修の中で教えてきたことと同じ内容である(ようにしか見えない)。

 

実は、私は「7つの習慣」の研修で得たことをしっかり身に付けて実践してきたのか?

実は、本書をきちんと読み込んで、自分のものにしていたのか?

どちらもありえない。

 

貰った手帳は一行も書かないうちに紛失してしまったし、本書はきれいなままである。

一つ考えられることがある。

「7つの習慣」が日本にもたらされて17年になる。

 

今でも書店に本書が並んでいる。

それを身に付けた人が色々なところで研修したり、講演したり、引用しているうちに、例えばWin-Winのように一般的な概念になってしまったのかもしれない。

だとすれば、これは相当な影響力を持った本なのではないか。

 

先日、明け方に変な夢を見て飛び起きた。

 

誰かが

「お前が偉そうにブログに書いたりしゃべったりしていることは、全部『7つの習慣』のパクリじゃないか。もっとオリジナリティのあることをしゃべらないと馬鹿にされるぞ」

と言っている夢だった。

 

「でも、私だけじゃなくて、他の人たちが話したり書いたりしている『いいこと』はかなり『7つの習慣』とかぶっているぞ」

と必死の抵抗をする私がいた。

※2013年11月に書かれた記事です。


1948年東京生まれ 石田厚子技術士事務所代表 東京電機大学情報環境学部特別専任教授 技術士(情報工学部門) 工学博士 ◎東京大学理学部数学科卒業後、日立製作所入社。コンパイラ作成のための治工具の開発からキャリアを始める。 5年後に日立を退職し、その後14年間に5回の転職を繰り返しながら、SEなどの経験を通じてITのスキルを身に着ける。その間、33歳で技術士(情報工学部門)取得  ◎1991年、ソフトウエア開発の生産性向上技術の必要性を訴えて日立製作所に経験者採用。生産技術の開発者、コンサルタントとして国内外にサービスを提供  ◎1999年 企画部門に異動し、ビジネス企画、経営品質、人材育成を担当。57歳で「高い顧客満足を得る商品開発への影響要因とその制御」論文で工学博士取得  ◎2007〜13年、日立コンサルティングでコンサルタント育成に従事。「技術者の市場価値を高める」ことを目的とした研修を社外に実施  ◎2013年 65歳で日立コンサルティングを定年退職し、石田厚子技術士事務所を開業。技術者の市場価値を高めるためのコンサルティングと研修を実施  ◎2014年 東京電機大学情報環境学部の特別専任教授に就任